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作成日時:2021.09.14
更新日時:2021.09.20

三浦知良と果たした初のベスト16。俺たちを超えて行け!|薫陶対談:小宮山友祐×村上哲哉

PHOTO BY本田好伸、高橋学

第一段階:世界との遭遇/現在地の確認
第二段階:世界への挑戦/サプライズと承認
第三段階:世界との勝負/対等な真剣勝負
第四段階:世界を奪いに/計画的な登頂

それぞれの国にスポーツの歴史があり、国際大会を戦うにはフェーズがある。オリンピックとパラリンピック、それからビーチサッカーワールドカップ。この夏に行われたスポーツの国際大会を見て感じたことだ。

ひるがえって、日本のフットサルとW杯だ。

2004年:初出場/グループリーグ敗退(1分2敗)
2008年:2度目/グループリーグ敗退(2勝2敗)
2012年:3度目/決勝トーナメント1回戦敗退(ベスト16)
2016年:不出場/アジア最終予選敗退
2021年:4度目/?

(※1989年の第1回大会にも出場したが、定期的に活動する「フットサル日本代表」が存在しない時代だったこともあり、このカウントからのぞいている)

「日本フットサルを世界の主役へ」。大会前に日本サッカー協会から発表されたスローガン。少しだけ抽象的な気もするが、だからこそ素晴らしくもあるブルーノ・ジャパンのテーマである。

果たしてフットサル日本代表は、今大会でどのフェーズを迎え、どんな結果を刻むべきだろうか。

9年前、タイで開かれた2012年大会に出場した小宮山友祐(現バルドラール浦安監督)と村上哲哉(現広島エフ・ドゥ監督)に当時の経験談を踏まえつつ、大会展望を語り合ってもらった。

選手時代にはなかった、トップリーグ監督としてのメタ視点、過去の当事者としての熱い想いが交錯する「ユウくんとテツくん」によるエールを、9年前に彼らが刻んだベスト16という歴史に挑む日本代表チームにも読んでもらいたい。

そして読者の方々には、これ以上ない大会プレビューとして楽しんでいただければ幸いである。

インタビュー・文=高田宗太郎


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「アンゴラとの初戦がすべて」(小宮山&村上)

──お2人には、W杯の経験やエピソード、監督としての知見を含めて語り合っていただきたいと思います。まず組み合わせについて、2012年と似た構図になった気がするのですが。

小宮山 組み合わせは似ていますが、対戦する順番が違いますよね。今回はアンゴラとの「初戦がすべて」かなと。僕らのときは最後のリビア戦に勝つ、その前にブラジルとポルトガルからどうやって勝ち点を取るかというところでした。

──ブラジルは負けても得失点差をおさえて、ポルトガルに引き分け以上、もっとも可能性が高いリビアに確実に勝つという狙い。

小宮山 もちろん、リビアに勝てるかわからなかったですが。今回のグループでは、アンゴラには絶対に勝たなければいけない。W杯という独特の場で経験者が数人しかいないなか、どれだけのパフォーマンスを発揮できるか。やはり初戦が大事だと私は思います。

村上 確かに2012年は、ミゲル(・ロドリゴ)監督も僕らも、ポルトガルにある程度照準を合わせたところがありますよね。今回は、スペインとパラグアイのレベルは高いので、やはりアンゴラ戦だと思いますが、個々の能力が高いと聞いているので、カギになるのは2012年を経験した(星)翔太とラファ(逸見勝利ラファエル)だと思います。

──お2人とも同じ見解ですね。グループ内のパワーバランスから「アンゴラ戦で勝ち点3」「W杯経験者の星翔太と逸見がカギ」と。

村上 過去の代表と比べて、レベルも強度も一番いいチームだと思います。でもW杯は別問題ですし、(W杯の出場権も兼ねた)アジア選手権も中止になった。予選を勝ち上がる経験をできなかったチームが、繰り返しになりますが、初戦でどれだけ勢いに乗れるかが重要だと思います。

──初戦の5分、10分が大事と言います。プレッシャーのかかるファーストセットへのアドバイスはありますか?

小宮山 アルトゥール、吉川智貴、逸見、清水和也のファーストセットは、親善試合を見る限りブルーノ監督のなかで固まっていると思います。スペイン戦は清水のところが翔太でしたが、このセットのクオリティはどの国にも引けを取らないはず。アンゴラ戦は互角どころか、上回れる時間があると思います。

──高評価ですね。スタートは親善試合のようにやれば心配ない。

小宮山 はい。実際にスペイン戦もピヴォに収まったときはいい攻撃をできていましたし、守備はやはり、アルトゥールが効いていますよね。もちろんチーム全体のプレスの強度も高いですが、フィクソの位置でボールを奪い取れる選手がいるのは大きいと思います。

──次のセットがポイントになる?

小宮山 そうですね。親善試合は3セットでほぼ均等に回していましたが、本番はそうした起用にはしないと思います。ですから、カギはセカンドセット。というか、セットごとに交代するかもわからないですし、先ほど挙げたファーストセットの4、5人にプラス2、3人という戦い方になってくるのではないかと思います。正直、親善試合を見ていてまだ海外での国際試合に慣れていない、Fリーグのほうがいいパフォーマンスだと感じる選手もいるので。

村上 立ち上がりのミスはつきものです。独特の緊張感ですし、W杯経験者も少ないですから。そこで慌てずに5分、10分をしのげるかが一番大事だと思います。ミゲルもそうでしたが、ブルーノもディフェンスに対する意識や強度を求めていますし、スペインとの親善試合で示したように、それが今の日本の強みだと思うので、立ち上がりからプレスを前面に出して流れを引き寄せたいですね。

「長期合宿にストレスを溜めていないか心配」(小宮山)

──選手選考について、監督目線でみるといかがでしょうか?

村上 ベストなメンバーがそろったと思います。ギリギリまで競争して、毛利元亮選手も含めて入るべき選手が入った。個人的には、イゴールやアルトゥールとは大阪で一緒にプレーしていましたし、今でも連絡を取っています。彼らは日本で長い間プレーして、恩返しといった想いを含め覚悟を持って臨んでいるので期待したいです。バランスが取れていますよね?

小宮山 全体的なバランスはいいよね。ブルーノ監督が描いていたプレーモデルを実行できる選手をそろえた印象がありますね。ただ、1点だけ危惧していることもあります。

村上 なんですか?

小宮山 すでに引退を公言している星翔太を含め、このW杯を終えて代表を退く選手がいるなかで、追随する選手として、次のW杯のことを考えると清水くんと毛利くんしか呼ばれていないというのが、日本のフットサルの今後を考えると、少し心配というのが正直なところです。

──ポジションバランスはいいが世代バランスが、という。

小宮山 浦安とのトレーニングマッチでも、ブルーノ監督の選手起用はシビアだと思いましたし、正直、フィールドプレーヤーは8人でしか回さないのかなと思うので、それだったら11、12、13番目の選手は個人的には、立川・府中アスレティックFCの内田隼太や、手前味噌になりますが、石田健太郎を入れても遜色ないと思いました。ただ、2人とも代表候補合宿に何度も呼ばれてきたなかで、そこでのパフォーマンスがブルーノ監督の要望、期待するレベルに届いていないという判断だったのかなと思っています。

──2016年大会に出場できていれば。

小宮山 そうですね。しかし、それはブルーノ監督の責任ではないからね。W杯は育成の場ではないですし絶対に結果を出さないといけないので、本当にブルーノ監督が信頼している16名を選んでいると思います。

──2012年との最大の違いは、カズさん(三浦知良/横浜FC)です。

小宮山 その前の2回も私は出ましたが、2012年は本当に特別でした。新聞に活字として「フットサル日本代表」とたくさん載るのは信じられないことでした。ただし「フットサル日本代表」というよりは「カズさん」に注目が集まったという認識です。なので今回は、ビーチサッカーではないですが、W杯の決勝まで行くこと。結果を出すことでフットサルが競技として注目されることにつながると思うので、達成してほしいです。カズさんに関しては、村上さんが一番仲良かったので(笑)。

村上 ちょっと! そんなことないですよ。カズさんが来られたときのことは今でもはっきり覚えています。名古屋の合宿ですよね。僕らも噂レベルでしか聞いていなかったのですが、本当に合流して。最初は戸惑いがありましたけど、やっぱりプレー+αの部分でカズさんから学んだことは大きかったです。チームのために自分ができることを徹底して、2カ月半ぐらいカズさんが日本フットサル界のために力を貸してくれて、フットサルに打ち込んでくれた。ユウくんとグレさん(木暮賢一郎/現日本代表コーチ)がキャプテンをしているところに、カズさんの力が加わってチームが1つになったことで、史上初めての決勝トーナメント進出という結果を残せたと思います。

──当時の壮行試合は、まさにカズさんフィーバーもあり、代々木第一体育館に1万人近く集まりました。今回は壮行試合が中止で国外での強化試合です。

村上 選手のメンタルを考えれば、国内で壮行試合をして、声援を受けて送り出してもらう形がよかったと思います。僕らのときは代々木でブラジルと引き分け、北海道でウクライナに勝って、すごくいい状態で入れました。コロナ禍なのでやむを得ませんが、その分、今回はアルゼンチンやスペインという強豪国との試合が組まれたのはよかったです。映像で見る限り、選手たちはいい感触を持っているのでないかと思います。

──ブルーノ監督としても理想的な相手とできたでしょうね。ただ少し、長過ぎではないかと。

小宮山 長いですよね。2008年、W杯の直前に1カ月近く海外で合宿したことを思い出します。プレーするだけなら問題ないですが、日常生活のストレスが少なからずあると思いますね。いくらチームメイトで仲良いとはいえ、赤の他人。もしテツと同じ部屋なら耐えられない(笑)。

村上 いやいや、こっちこそ。ユウくんとは地獄(笑)。

小宮山 集中できる環境ではあるし、テツの言うようにコンディションもいいと思いますが、まだ本番じゃない。パラグアイ戦の先まで計算すると長いとは思いますけど、コロナ禍なので仕方ないですね。

──2012年のタイでは同部屋?

村上 いえ、その前のアジア選手権は同じでした。いびきがうるさくて(笑)。

小宮山 いやいや、冷房が何度だよってくらい寒かった(笑)。通常、代表チームの合宿は意図的に2人部屋を組むのですが、今回の部屋割りがコロナ対策でシングルなら、(長期合宿という点で考えるなら)そのほうが絶対にいいと思います。

──2人部屋のメリットは?

小宮山 小曽戸(允哉)と同じ部屋だったのですが、“オソド慰めタイム”があって、「オマエよかったよ。たまたま出場時間が短かっただけで」とか(笑)。でも、そういうのは必要だと思いますね。腹を割って話せる機会って、なかなかないじゃないですか。今の代表の雰囲気はわからないですが、写真や選手のSNSを見ているととてもいい雰囲気ではないかなと思っています。

村上 練習とミーティングと食事以外は部屋で、その時間のほうが長いですからね。

──当時、準備期間の親善試合ではスカウティング対策、たとえば秘密兵器的なセットプレーなどもあったのでしょうか?

小宮山 ミゲルのときはなかったかな。けど、結果的にパワープレーがそれになりましたよね。親善試合ではやる場面がなかったので。

村上 そうですね、パワープレーくらい。練習でセットプレーに割く時間は長かったですし、テストマッチでも使っていた。今回のブルーノも駆け引きしているようには見えなかった。

小宮山 私は毎回、対戦相手のDFに対してより効果的なセットプレーを1個は入れるようにしています。サプライズを持っておくというか。これまであまりやっていないものや新しいものを入れたいなと。サプライズを含めて戦っていくことを意識しています。ブルーノ監督は正々堂々、真っ向勝負のイメージですが、対戦相手を分析した結果、より効果的なセットプレーを入れてくることは十分に考えられることだと思います。

村上 今回のテストマッチまで1年以上も実戦がなかったですからね。僕なら、隠すというよりは逆に、使えと。たとえば、セットプレーで「持っているパターンを試していけ」というタスクを与えると思います。

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