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【引退直前インタビュー】「たとえ1秒でも」。45歳、金山友紀が練習でも試合でも、ピッチに立つ限り全力で走り続けた意味

PHOTO BY高橋学

金山友紀のFリーグラストマッチを見逃すな!ABEMAで生配信!

原点は20年前、アジア選手権で味わった「出場時間10秒」

──リリースはプレーオフ争い真っ只中、シビアな2つのホームゲームを前にしてのタイミングでした。多くの方が「ここで最後の勇士を」となったと思います。

そこで自分が長い時間出られるかは、どうでもよくて。とにかくチームの勝利に貢献したい。プレーオフ出場を争えるチームに在籍して、最後のシーズンを送れたというのは自分にとってもうれしいことだし、誇りに思える。そのなかでやめていけるのは本当に幸せなこと。

──今シーズン最終試合に出れば最年長出場記録、そこで得点すれば最年長得点記録です。

全然、意識していない(笑)。今シーズンの途中に「最後の試合に出ればロベカルの記録抜けますね」とサポーターの方に声をかけられて「ん、そうなの?」と。それで引退リリース後にSALの記事を見て「あ、サポーターの方が言ってたやつだ。本当なんだ」と。

──でも現状の最年長出場と得点記録が、1試合スポット参戦のロベルト・カルロスというのは正直、抜いてほしい気持ちもあるでしょうから、周囲のほうが熱くなっているのかもしれないですね。ただ引退リリース直後の今シーズン初得点については、喜びがあったんじゃないですか?

それはまさにそうで、最年長記録よりも、そっちのほうが大きくて。やっぱり、1点でも多く取りたいし、得点はチームへの貢献に直結する部分だからね。その前の立川戦と名古屋戦もそれしか考えていなかった。出場時間が短くなることは当たり前だし、俺がそこでフルで試合に出ているようなら、この年齢でもみんな現役を続けているし、そうではない激しいスポーツを競争に身を置いてやっているわけだからね。そのなかでもフットサルなら特有のワンプレー、たとえ1秒でも点が取れると思っているし、大阪戦でそれを示してチームに貢献できたのはうれしかった。

──その「出場時間がたとえ1秒でも」という考え方は年齢を重ねてから?

いや、20代の頃に、代表でそういう思いをしたことがあってからだね。当時2セットから漏れた木暮(賢一郎/現日本代表監督)と俺が飛び道具的な感じで使われていた時代があって。昔さ、交代ゾーンを使ったクリアランスの戦術があったの覚えてる?

──トリッキーなやつですよね。ゴールクリアランスの時に、交代ゾーンの一番低い位置と高い位置で交代してマークを撹乱して、ベンチから飛び出す選手がフリーで駆け上がるという。

そうそう。アジア選手権の準々決勝かな、その交代戦術で入って裏に抜けたんだけど川原(永光)のスローが長過ぎてゴールラインを割って、ディフェンスをしてマイボールになったらまた交代。で、もうそのまま、その試合はその10秒でおしまい。めちゃくちゃ悔しくて「あんな10秒じゃなにもできねーじゃん」みたいに思って試合後、ロッカールームの隅で号泣して(笑)。

──えぇ、そんなことがあったんですね。

悔しくて、悔しくて。試合は勝ったんだけどね。でも、ちょっと時間が経ってから思い直したことがあって、10秒しか出られなかったけど、10秒はあった。「10秒があったことに対して、なんで自分は目を向けられなかったんだろう」という思いになった。フットサルは10秒あれば1点は絶対入るし、2点だって。そういうことが起こせる競技だと思う。でもあの時は「10秒じゃなにもできない」というマインドになっていたから、そういうことしか起きなかった。それからは「たとえ1秒でも」「セットプレーだけでも」と、考え方を改めてやってきた。

──その10秒は、金山さんのマインドの原点と言えるような出来事だったんですね。

そうだね。監督が(木村)和司さんから原田(理人)さんに代わって1年目の時、2002年の第4回アジア選手権の準々決勝ウズベキスタン戦だったと思う。

──先日の今シーズン初得点は、セットプレーの場面で初めてピッチに立ってワンタッチ目でゴールと、まさにそのマインドを象徴するようなゴールでした。

セットプレーの時にも出て得点するというのは岡山監督時代は結構あって、怪我を抱えていた時期にそれこそセットプレーだけ出て得点した試合もあったから、そういう意味でも自分らしいゴールだったかな。ただやっぱりキッカーとイメージを共有していないと起こせないことではあるよね。

──マインドだけでなく技術面、ワンタッチゴールという点でも“らしかった”です。「間を通すまでが出し手の仕事、そのボールを決めるのは受け手の仕事。どんなボールであれが通って来たら、そこからは受け手の責任」と昔からよく言っていましたね。出し手がこの理屈を振りかざしたら無茶苦茶ですが、これは受け手の矜持というか「受け手としてはそれぐらいの気持ちで」というお話でした。

うんうん、言っていたね。

──お互いに責任と敬意を持ち、要求をぶつけ合ってイメージを共有していく。かつては甲斐さん、怜くん、今はヴィニシウスや、今日の練習ではたまたま同じセットだった遠藤(颯)くんにも、それをずっと続けてきたんですね。

得点の取り方っていくらでもあって、そのなかでああいう取り方もあるよ、というのを感じてもらえたらと思う。練習では同じようなシーンはもっとあるので、そういう景色を繰り返し見ることで、別の選手が入っても同じイメージが持てるようになってほしいよね。

──そうやってチームがベースアップしていく。それもチームへの貢献ですね。

去年、ルイス監督が練習でよく言っていたのは、俺がファーに入って点を取った時に若手に対して「なんで、ユウキにつかないんだ!ユウキの特徴は知ってるだろ!ユウキがなにを狙っているのか、しっかり感じろ!」という話を散々していて。

──なるほど。守備力のアップにも貢献していた(笑)。

まあ、でも逆に、攻撃でファーに入っていない選手がいると「ユウキだったら、ここに入ってただろ!」ともルイス監督は言っていたから。

──あ、どっちもですね。

そうだね(笑)。

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