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6歳から友達、31歳でライバル。宿本諒太と栗本博生、フットボールの神様が見守った最後の対決|俺たちの全日本

PHOTO BY高橋学

夢の舞台・Fリーグで“再会”

大学卒業のタイミングで、2人はまんほーるを退団。共にFリーグを目指すことになった。

 先に夢の舞台に手が掛かったのは栗本だった。一足先にまんほーるを退団し、すみだバッファローズでプレーしていたゴレイロ・冨岡司(後にデウソン神戸などでもプレー)の紹介をきっかけに須賀雄大監督(現フットサル女子日本代表監督)の目に留まり、Fリーグ参入初年度のすみだに加入。1年目の2014年10月22日の第16節、バルドラール浦安戦でなんと先発でFリーグデビューを飾るなど、華々しい舞台に立っていた。

一方、宿本は同じ2014年春、当時の渡邉瞬GMらの熱烈なラブコールに応えるかたちで横浜に加入。この時の所属カテゴリーは、まんほーると同じ神奈川県フットサルリーグ1部だった。強豪・日大藤沢高校サッカー部OBや日本大学経済学部OBをルーツに持つN.U.Fantars/SALL-TRAPというチームが、2013年に横浜の傘下に入る形で体制変更。「数年以内のFリーグ参入を目指す」と掲げたものの、その目標を実現できるかは、当時は全くの未知数だった。

FリーグはJリーグのように毎年参入のチャンスがあるわけではない。仮にFリーグのすぐ下(地域リーグ1部)までカテゴリーを上げ、そこで上位に入り、かつライセンス要件を満たしたとて、その年の新規参入が認められるとは限らない。従って、サッカー以上に不透明な目標を追わなければならない部分があるのも事実だった。

 宿本としても「最初はただの夢物語だった」というその挑戦。だが逆に、チームとしてゼロからFリーグを目指すプロジェクトに魅力を感じ、覚悟を胸に横浜への移籍を決めていた。そしてプレーのみならず、誠実な振る舞いや周囲の規範となるという点でも、その加入は大きかった。前身のファンタースの創設者の一人であり、F1昇格1年目の2020-2021シーズンまでプレーしたクラブのバンディエラ・中野和也氏が過去の取材の際、「彼の加入で、Fリーグ参入に向けクラブが大きく前進した」と回想していたほどである。

 そんな夢物語に挑戦しつつも、宿本は栗本のFリーグでの活躍を見ていた。

 宿本「うらやましいという感情よりも、素直にすごいなと思いましたよね。今でこそライバル視する気持ちもありますが、当時は純粋に応援していました。彼のユニフォームが売れていないということだったので、ホーム用とアウェイ用の2枚を購入して、それを着て試合を観に行ったこともあります。彼のフウガのユニフォームを最初に買ったのは、実は僕です(笑)」

 初めて出会ったあの日から16年。22歳となった2人は、それぞれのフットサル人生を歩む決断をした。栗本は徐々にすみだで出場時間を伸ばし、宿本もピッチ内外で精力的にクラブを引っ張っていった。

 そして2018年、新設されたF2に参加するかたちで、ついに横浜のFリーグ参入が決まった。競技面のみならず、地元・横浜市での活動や自治体との関係性なども認められての参入だった。翌2019-2020シーズンにF2で優勝し、2020-2021シーズンから戦いの舞台をF1に移すことに。6歳で一緒にボールを蹴り始めた2人が、なんとトップリーグで再会することとなったのだ。

 宿本と栗本の直接対決は、F1のピッチで4度実現した。これだけでももう、ストーリーとしては十分過ぎるだろう。2人がその舞台で対戦することに、本人たちはもちろん、家族の感慨もひとしおだったそうだ。

 そして去る2023年3月9日、F1で3シーズン目を送っていた横浜の公式HPにて、宿本の現役引退が発表された。中野の後を継いだ二代目バンディエラが、ついにユニフォームを脱ぐ決断をしたのだ。

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