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作成日時:2020.08.13
更新日時:2020.08.13

【フットサルコートは日本の未来!後編】施設、リーグ、選手、ファン、メディア……フットサル業界全体で取り組むべきもの

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【座談会メンバー】
木暮賢一郎
元フットサル日本代表
ピープルスポーツ株式会社 取締役
株式会社ラクシーズ 取締役

金子諭

株式会社エフネットスポーツ 代表
一般社団法人 日本フットサル施設連盟 事務局長

田尻美寧貴
キャプテン翼スタジアム天王寺 総支配人
一般社団法人 日本フットサル施設連盟 常務理事

藤井健太
元フットサル日本代表
デフフットサル日本代表 監督

岩本義弘
REAL SPORTS編集長
Fリーグ実行委員

北健一郎
SAL編集長

※座談会は6月29日に実施

【フットサルコートは日本の未来!前編】を読む

施設とタッグを組んで、いかにFリーグを集客できるか

田尻 Fリーグ実行委員会で、一般人をどう巻き込むかという話は出ますか?

岩本 以前から集客の話題はありましたが、今は出ないです。コロナ禍で、いかにリーグをちゃんと開幕して、運営していくかに注力しているので。それに、日本サッカー協会の取り組みに引っ張られる面もあります。

田尻 これまでも様々な試みはしてきていますよね。

金子 森永製菓のウイダーinゼリーがスポンサーの頃は、inゼリーの招待枠とか、前座試合とかもありましたが、最近は施設連盟と一緒にやろうという提案も聞かないですね。

岩本 今年4月からFリーグCOOを始め、内側の体制が変わった部分はあるので、新しいことが始まりそうな感じはあった中でのコロナでした。現状では、今シーズンはとにかくリーグを開催することにプライオリティを置いています。リーグ運営の難しさをより実感している中で、本当であれば積極的に動きたいけれど、コロナ禍で選手と一般の人が触れ合う機会を作れないという状況が重なっていますね。

木暮 選手とお客さんの接触はクラブにとってもリスクがあるし、簡単ではないですね。

岩本 たとえば、オンラインイベントを施設の主催で開催して、ゲストにFリーガーを呼ぶことはできます。でも、そもそも一般の人にとってはFリーガーがスターではない。もちろん、地域と良い関係性を築けているクラブはありますが、そうであっても、選手がスター的な存在になれているわけではないように感じます。

木暮 フットサルコートでプレーしている人たちのFリーグ認知はどんな印象ですか?

田尻 感覚的には、Fリーグを見にいくような人は5%〜10%いかないくらい。残り95%は蹴る専門ですね。

金子 フットサルが室内でプレーする競技だと知らない人もいまだにいます。うちの施設でFリーグの映像を流していると「なんで体育館でやっているの?」という会話も……。

田尻 もちろん、伸び代があるという捉え方もできますよね。映像や試合を実際に観戦することで、「あのプレーすごい!」ってなりますから。実際に昔は、健太のプレーにあこがれてチームを作った人がいっぱいいました。

藤井 現役選手で集客できたらいいけど、俺たちOBも含めて知名度はない。自分の名前で呼べるわけじゃないから、フットサルを知ってもらいFリーグに引っ張ってくるために、施設とどれだけ協力できるか。コロナ禍の課題としてだけではなく。自分たちの本気度や、フットサルの魅力をどれだけ伝えられるかで変わっていくと思う。まだまだやれていないな。

木暮 95%の人たちは個サルで満足している?

田尻 スポーツクラブに通う感覚に近いかもしれません。ランニングマシーンに乗るより蹴る方がいいとか、個サル運営の施設スタッフのコミュニケーションが上手だとか、そこで一緒に蹴る人たちと親しくなるとか、良くも悪くも、気軽にできるものという感じだと思う。

藤井 パーソナルトレーナーと一緒にトレーニングを始めていくうちにハマって、筋トレマニアになるみたいなことを、俺たちができたらいいよね。木暮のことは知らないけど、プレーを知って、フットサルってこんな面白いんだ、もっと教えてほしいなって。それで、Fリーグに行けばもっと見れるよ、面白いよって促せる。そのきっかけとなる出会いの場所に施設がある。「フットサルをしよう」と思って、蹴ることができる場所があるわけだから、そこから広げて、本物を見せていけたらいいよね。本来はそうだったかもしれないのに、Fリーグができたことで逆に(選手がコートに行かなくなり)、選手と施設が離れてしまったことが今の状況につながってしまっているんだと思います。

金子 田尻さんも言っていたけど、昔は隣のコートで練習していたり、大会で知ったり、すごい選手とのファーストコンタクトがフットサル施設だった。そこで対戦して、あこがれて、見にいくきっかけになっていました。一般客へのファーストコンタクトとして、「Fリーグを見にきて」は難しい状況だと思います。個サルに参加したら隣にすごい選手がいて、それが実は元プロ選手なんだよ、っていうのがいいですよね。

藤井 木暮軍団と大学生と戦ったら、今の俺ら勝てるかな(笑)?

木暮 でも、「このおじさんうめーな!」って思わせたいよね。

藤井 もう、できへんかも(苦笑)。

木暮 練習しなきゃね。でも、たまに施設に行くと喜ばれることがありますね。

藤井 そうそう、知っている人たちは喜んでくれるし、それでFリーグに戻ってきてくれたりもする。

木暮 だから、プレーで見せられないとね。あとは健太くんのようなコミュニケーションだね。

藤井 両方があるといいけどな。

木暮 施設連盟もそうだし、横のつながりをうまく活用して、その地域の近くにいる元選手とかと接点を作れたりしたらいいなと。関西担当は健太くんと誰、みたいな感じで。あとは、その選手への出演料や、施設の温度差の問題。固定でも歩合でもそうだけど、集客できるまでどれくらい辛抱できるかということもあるし、施設によって考え方に差があるとも思う。今は全国に600施設くらいあるけど、そうした取り組みに前向きになってくれるところと、そうではないところはある。施設連盟に入っていないところもあるしね。

田尻 地方で頑張って経営している方は、結構、知名度の高いFリーガーを求めていますね。単発ではあるけど、大きなイベントをやりたいと言ってくれたり、相談を受けたりします。

木暮 そこは、かなり狭い部分ですよね。オファーが多いわけじゃないから、条件の良いクリニックがあれば、OB選手も、どうしてもそういうところの取り合いになってしまう。

田尻 そうだね。だから基本的には、売り上げをシェアして継続できるスタイルがいいね。

フットサル業界全体で横のつながりを強めていくこと

岩本 木暮くんや健太くんは、業界の中では圧倒的に知られているけど、フットサル選手のセカンドキャリアを考えた時に、難しさがありますよね。施設に来る人でも5%しか興味がないのに、どう認知させるかを考えると、今のフットサル選手が何かしらフットサルに関わり続けるようになるにはハードルが相当高い。施設との距離が近い時代を過ごしてきたレジェンドと呼ばれる選手たちが、今でも圧倒的に知られていますからね。

金子 利用者層は30歳〜40歳で、レジェンドを近くで見ていた人でもあります。

田尻 うちの施設はまだ5年ですが、平均は30代前半。もっと上の年齢もいますね。エンジョイ層は20代前半が多いと思われがちですけど、意外とそうではないのかも。

岩本 キャプテン翼スタジアム天王寺はもっと若いと思ってた。

田尻 もちろん若い子もいるけど、オーバー30の個サルも集まるんですよね。逆に若い層は、個サルにフラッとはあまり来ない。まだサッカーをやっているのかもしれないですね。

岩本 サッカー人口自体も増えているわけじゃないからね。

木暮 チーム数は確実に減っていますね。Fリーグのような競技チームではなく、週1、2くらいで定期的に蹴っていた人たち。その多くは個サルにシフトしている。それで、若くて、サッカーもしていないけど蹴りたいというレベルの高い人にとっては、実は蹴る場所がないかもしれない。そんなことはないですかね?

田尻 そこは、施設の色にもよりますね。うちはコートサイズが小さめなので、エンジョイな感じです。でも、マグフットサルとかは、(屋内でかつ、フットサルコートが敷いてあり、コートサイズも競技向けなので)競技層の参加者が多くレベルが高いと聞く。だから、お客さんもレベルによって行く施設を選んでいるのかもしれませんね。

木暮 たしかに、シュライカー大阪の監督時代に見たけど、個サルのレベルが高かった。

田尻 でも、ビギナーからすると、広すぎて走れないし、ボールを飛ばせない、となる。

木暮 チームが減ってしまうと、ユニフォームなどアパレルへの影響もありそうですよね。

田尻 個サルのメンバーで仲良くなってチームを作るケースはあるのですが、でも大会で頑張って優勝して、景品のプラシャツをユニフォームにするということはよく聞きますね。

岩本 ここまでの話を踏まえると、意識が高く、ノウハウのある施設は今後も生き残れますよね。問題は、そうではないところ。フットサル施設の経営に思い入れがないところはやめてしまう。ビジネスを頑張ればやれることはあったとしても、努力できなくて、その土地を駐車場にしてしまったりする。そう考えると、意識を高く取り組んでいる施設に情報を提供していくこともそうだけど、いかに横の連携を高めながらフットサル施設の運営も、フットサル事業全体の枠組みも大きくしていくことが大事なのかなと思います。

田尻 そういうことで言えば、施設連盟に加盟することで得られるものはすごく大きいですね。僕は最初、一匹狼でいいと思っていました。でも、金子さんに誘われて入ったら、年会費が4万円かかるのですが、それ以上の多大な利潤を得られる組織でした。僕は今、理事を務めていますがそれはボランティアです。でも、横のつながりと情報、得られる様々な機会はものすごく価値があるものです。積極的に関わればそれだけ得られるものも大きいと感じます。金子さんと、宣伝はやめようと話していたけど、純粋にそう思う(笑)。

金子 施設経営を個人でやりたいという人はまだまだいます。でも、コロナ禍で考え直す人も出てくると思いますね。東日本大震災の時もそうでしたが、声を大きくしないと届かないものがある。今回も、屋外コートは支援してもらえるのか政府に問い合わせたら、ゴルフ練習場かテニス施設かというところから話が始まる。弱い立場です。個人では絶対に届かないし、施設連盟も、もっと大きな団体にならないといけないと思います。

木暮 なるほど。みなさん、今日はありがとうございました。具体的な結論が出るわけではないですが、まずは、コロナによる施設の影響や、フットサル全体、フットサル施設全体の現状が見えてきたと思います。そもそも、こうして元選手と施設関係者、メディアの人が横断的に集まること自体が初めてのことです。現状を打破しようとする会話から疎遠だったので、こうした話し合いをきっかけにフットサル業界をよくしていきたいですね。それぞれ立場が違っても、フットサルファミリーとして困難に立ち向かい、一致団結できることを増やしていきたいですし、横のつながりを含めて、行動に移していかないといけないなと。やりますか、健太くん。

藤井 そうやね。

木暮 まずは以前のつながりを戻せるように。そうしないと、次には進めないと思いました。

藤井 選手や元選手にしかできないことがあるからね。それは自分たちだけではなく、施設やいろんな人と協力して考える。こういうコロナの状況で改めて強く思うし、気づかされるよね。僕自身はありがたいことに施設の人とずっと関わっているし、一緒にやれているから、もっと多くの選手や元選手で一緒に協力してくれる人を作りたい。それには、考えて行動している人が、もっと伝えていかないといけない。フットサルをやっていればいいわけではなく、こういうことが競技にもつながっていくからね。

木暮 僕も、施設の予約システムを提供している側としても、いいものを生み出したい。

岩本 システムを使っている施設に、こういう時期なので無償でコンサルしますとかは?

木暮 そういう希望は実際にあるので、提供できるデータの開発も進めていますね。

田尻 システム提供者と、導入している施設と、利用しているお客さんはそれぞれ立場が違うので、システム提供側がユーザー目線ではないこともあるんです。だからこそ、システム側の視点ではなく、現場でシステムを使っている施設の人から見たアドバイスというのもできると思う。

岩本 それはいいよね。それに、金子さんや田尻さんが協力して、他の施設の人にアドバイスすることで、次につながっていくものもできるはず。それこそ、現場目線の開発技術が生まれたりとか。ある意味で、システム、現場、ユーザーのトライアングルだし、新しいタッチポイントから横のつながりも出てくると思います。

木暮 それはアクションにつながっていなかったので、みなさんの協力を得て形にしていきたいです。今日はお忙しい中、本当にありがとうございました!

【フットサルコートは日本の未来!前編】を読む

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