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作成日時:2024.11.15
更新日時:2024.11.15

テーマは集客。Fリーグに「初めて来た人をどうやって2回目に来てもらえるか、その魅力はある」(アビームコンサルティング株式会社 執行役員 プリンシパル・久保田圭一氏)【特別インタビュー】

PHOTO BY伊藤千梅

Fリーグの表彰企画『ABeam AWARD』は今シーズンで4年目を迎える。この取り組みは、Fリーグを支援する企業「ABeam Consulting」(アビームコンサルティング株式会社/以下、アビーム)が、Fリーグの発展を目的に始めた企画だ。

昨年までの3年間は、「#ThanksRespect」というキーワードを中心に、ファン・サポーターを巻き込んだ参加型企画として、各自が応援するクラブを“1へと押し上げるため、SNSでさまざまなアクションを起こし、大きなムーブメントを生み出してきた。

一方、4年目の今年は、「集客」をテーマにした施策に舵が切られた。

クラブごとに「観客動員目標」を定め、その数字を目安にしながら、それぞれが今シーズンの最多観客動員を目指すものだ。シンプルに、ホームゲームに一人でも多くのお客さんを集めることが狙いとなる。SNSを軸にしたファン・サポーター参加型の企画を遂行してきた過去3年間とは異なり、「集客」に特化したクラブの地上戦の施策を推進している。

創設から17年目を迎えるFリーグは、アリーナスポーツにおいて決して成功しているリーグとは言えない。Bリーグの興行力や集客力を横目に、Vリーグや新しく始まったSVリーグの成功事例に学びつつも、フットサルは独自の魅力を、広く届けるべきではないか──。

課題は多い一方で、ネガティブなことばかりではないはずだ。

アビームの執行役員 プリンシパルであり、一般社団法人日本フットサルトップリーグ副理事長の顔をもつ久保田圭一氏は、Fリーグの未来をどのように捉えているのか。

今シーズンのFリーグが「集客」に焦点を当てる狙いと、未来への想いに迫った。

取材は20241017日に実施しました

インタビュー・文=本田好伸
写真=伊藤千梅

ABeam AWARD 2024-2025
https://www.fleague.jp/abeam_award/



どうやったら“1回目に来てもらえるのか?

──『ABeam AWARD』は4年目を迎えました。過去3年はファン・サポーターを巻き込んだ取り組みでしたが、今回はなぜ「集客」にフォーカスした内容にしたのでしょうか?

3年前に始めた頃は「集客」というよりもまずは既存のファン・サポーターのことをもっと知らないといけないという認識がありました。「#ThanksRespect」の企画によってファン・サポーターのエンゲージメントが高まり、みなさんのことを知る機会となりました。その利点を生かしながら、この3年間は「ファン巻き込み型」の取り組みをしてきました。

しかしながら、それ自体は新規ファンを獲得できるものではありません。

昨年は、ファン・サポーターの方が新しいお客さんを連れて来やすくなるような仕掛けもしましたし、それによって一定の効果はありつつも、集客面で大きなプラスになったわけではありません。そこで、もう一度スポーツビジネスの基本に立ち返ろうと考えました。

つまり、集客が一番大事だよねという部分です。

Fリーグは現状、放映権料を高く売れるような状況ではありません。そうすると、まずはリアルの部分です。各クラブのアリーナの観客数が概ね3,000人というキャパシティは、頑張れば埋まるはずだという思いがあります。地元を回って来ていただくとか、1回目は無料招待でもいいですし、まずは来てもらわなければなにも始まりません。それと同時に、その人たちに2回目に来てもらう魅力を訴求しながらお客さんを増やしていくことがスポーツビジネスにおいて基本となる考え方です。

お客さんが増え、会場に入れない人が増えれば、現在試合を放送しているFリーグTVを観る人も増えます。放映権料の価値は観る人の数は当然重要な要素になりますし、Fリーグにおけるあらゆる価値を高めていくためにも、まずは「集客」にフォーカスすべきと考え、3年間やったことを踏まえつつ、立ち返るような施策をFリーグに提案させていただきました。

──これまでも「頑張れば埋まるはず」「フットサルの魅力は一度見たらわかるはず」と言われ続けてきました。その点では今も、最初に来てもらうことへの課題があります。

まさに、新規のお客さんが足を運べるきっかけをつくって見に来てもらうことについては、クラブの広報の方々とも話をしています。私は2年前に、Xを通して既存のファン・サポーターの方に「なぜ1回目に見に行ったのか?」といったアンケートを取りました。そこで250人ほどの方から回答を得られたのですが、ほとんどの人が「フットサルのコーチや選手に誘ってもらった」というものでした。フットサルコートでクリニックをしている選手がきっかけとなることもすごく多かった。他にも、家族や友人から誘ってもらったケースも多いですが、いずれにせよ、スポーツは基本的に誘ってもらって初めて見る場合がほとんどのようです。

──見たことがないスポーツであればより「誘われる」きっかけが大きいですよね。

そう思います。ですから、そういう人たちに来てもらうために、最初は無料でもいいのできっかけとなる施策を考える必要があります。と同時に、その人たちにエモーショナルなインパクトを与えることができれば、2回目が生まれます。逆に言えば、それがないと2回目はない。ですから“2回目のコンテンツも考えるように話しています。当然、ホームタウンに応じて観客の属性なども変わりますから、クラブごとの分析を踏まえた企画が必要ですね。

今回の『ABeam AWARD』は、そうやってクラブが率先して取り組んでもらいつつ、そのインセンティブとしてこのアワードの表彰を使ってもらえたらいいなと考えています。

成功・失敗体験をクラブ間で共有する

──今回はクラブ別に観客動員目標を設定して、想定される集客力に応じたグループ分けもしています。こうした算出はどのように決めたのでしょうか?

昨シーズンの各クラブの平均観客動員数の110%で考えています。グループ分けしたのは、仮に平均800人のクラブは、平均1,300人のクラブに10%増の目標では勝負できないですから、現状の集客の規模感を踏まえて取り組んでもらうためのものです。

──各クラブの合計目標が20万人ですが、その数字をどのように捉えていますか?

これは、頑張ればなんとかなるという感覚です。達成できなくはない数字です。ただし、各クラブが忘れずに努力を続けないと達成できない数字だと思います。

──83日時点では、F1の中断前までで、レギュラーシーズンとファイナルシーズンを合わせて3分の1を終えた時点で、F2はシーズン折り返し時点でした。20万人の目標に対して7779人という数字をどのように評価していましたか?

総試合数で言うと半分弱という時点での数字ですから、厳しいと感じていました。ただし、今回の「集客」を意識した取り組みは初回ですし、目標設定も手探りではありましたから、そこも含めて現状を知る機会だと捉えています。各クラブのホームの試合数の消化状況も異なりますから、リーグ戦の中盤、終盤にかけて盛り返していけるといいですね。

──各クラブからはこの施策についてどんなリアクションがありますか?

基本的に、クラブのみなさんも「集客は一番大事」だという認識をもっていますし、自分たちでやらないといけないことだという理解もあります。ですから、この企画に対して賛同と言いますか、ポジティブに捉えて取り組んでくださっている感覚があります。

それと同時に、各クラブの取り組みを互いに共有しようとする動きが生まれています。

各クラブの人材の入れ替えは当然、いつでも起きることです。新しい担当者へ引き継がれているとは言え、スポーツクラブの運営現場の仕事は簡単ではありません。集客が大事と言いつつも、なにをどうしたらいいか戸惑うケースも多いはずです。うまくいったこともそうですし、逆にうまくいかなかったことを含め、クラブの広報同士が相談しやすい環境をつくっていくことも私たちのできることですから、そうしたサポートもしています。

──女子Fリーグの『ABeam AWARD』はどのように表彰していくのでしょうか?

女子Fリーグについては、各クラブの施策がどれくらい集客に効果を挙げているのか、新規顧客獲得の客観的な数字も大事にしますが、既存のファン・サポーターのエンゲージメントを上げる取り組みについても報告をしてもらって、我々で判断させてもらいます。

女子はセントラル開催の方式を採用していますし、ホームの扱いを男子のように考えることが難しいですからね。それに、男子よりも女子のほうがクラブ内のリソースは多くないですから、あまり複雑なことはできません。今回はクラブごとに取り組みを報告してもらい、その中から素晴らしいものを『ABeam AWARD』として表彰させてもらいます。



競技フットサル「Fリーグ」独自の魅力とは?

──すごく大きなテーマですが、Fリーグはどんなリーグを目指すべきでしょうか?

私自身、Fリーグの立場としてあまり勝手なことは言えないですけど、アビームがFリーグに参画して、私も副理事長として携わってきたなかで感じることはあります。

これは、大きな特徴と言って差し支えないと思いますが、Fリーグのファン・サポーターの振る舞いは本当に素晴らしいものだと思います。どういうことかというと、自分が応援している以外のクラブのことを口撃することがありません。それに、コアなファンの方は、それこそ別のクラブを推している同士が居酒屋で「Fリーグってさ」と話しています。

いわゆる、アウェイを雑に扱うような文化はなく、試合会場ではどちらのチームに対しても声援を送る姿があります。ファン・サポーターのみなさんがSNSで「#ThanksRespect」を扱ってくれたことにも象徴されますけど、日本的な感謝を表せる良さというか、他者に対して敬意を払うことができるというベースが、このスポーツにはあると思っています。

──リスペクトを感じられるリーグですね。

ある意味では、欧米のサッカー文化とは異なりますが、そうした地域対抗、国対抗という、ともすれば過激すぎる熱狂ではなく、観客にも、選手にも、そこに感謝があふれています。

もう一つは、サッカーとフットサルの関係性をもっと強めていけると思います。

今は、松井大輔理事長がいろんなところで発信してくれていますが、サッカーのレジェンド級の選手だった方が、フットサルもプレーして、フットサルについて「自分が子どもの頃からやっておけば良かった」と話しています。松井理事長が言うことの真実味は大きいはずです。

フットサルからサッカーへ、あるいはサッカーからフットサルへという、お互いのプラスを理解しながら連携することはもっとできると信じています。Fリーグは、Jリーグや日本サッカー協会と協力しながら、彼らに対してプラスの役割を果たせるリーグだと思います。

──SVリーグの開幕戦は金曜夜に東京体育館で開催して6500人を集めました。バレーボールも多くのファンを獲得している競技です。プロ化を目指す上で、Bリーグ(バスケ)と同じような集客力があります。シーズンの試合数も競技性もさまざまな違いがありますが、Tリーグ(卓球)やHリーグ(ハンドボール)、Fリーグは伸び悩んでいる印象です。

「競技」という点では、フットサルの認知度は高くないですよね。一方で、エンジョイで楽しむ人にとっての「フットサル」は知られていると思いますから、最高峰のリーグがあることや、競技としてガチでやっているという部分をどう知ってもらえるかだと思います。

フットサルは気軽にできるからこそ、そこに目がいきづらいと言いますか、人工芝でプレーするエンジョイ大会もありますから、そのイメージのほうが強く刷り込まれているように感じるので、「競技フットサル」は同じ土俵の話ではなさそうです。

「バスケットボール」「バレーボール」「ハンドボール」と聞いて多くの人がイメージするものは競技とイコールですからね。「卓球」も少し競技のイメージが遠いかもしれません。

フットサルも競技の印象とエンジョイがかなり離れているため、競技とエンジョイをどうつなぐのか、あるいはつながないのか。その辺をもっと考えないといけないですね。

──今回の『ABeam AWARD』はクラブが主導権をもって取り組むものですが、ファン・サポーターの方ができるアクションなどもあるのではないでしょうか?

そこについてはすでに多くのファン・サポーターの方がやってくれているのですが、やはり「誘ってもらう」とありがたいというのが一番です。本当にみなさん、会場に連れて来てくれていますから。

仮に、そこから先でやってもらえることとしたら、すでにつくられてはいますが、コミュニティの拡大かもしれません。最初に見に来てくださった方が、既存のファン・サポーターの方と触れ合ってもらうことも大きなメリットだと思います。先ほどお話ししたように、Fリーグには気持ちの良い応援がありますし、それを感じて新しいファンになってくれる方もたくさんいると思います。

試合後、いきなり飲みに誘うのは難しいですけど(笑)、クラブとも連携して、「うちのクラブにはこんなファン・サポーターがいますよ」とアピールしてもいいかもしれません。それに、立川アスレティックFCが試合後に会場前でビアガーデンを開催して、ファン・サポーター、そして試合後の選手が集まっている空間なども、すごく価値が高いと思います。

──集客をテーマに、まだまだできることがありそうですね。

そう思います。チケットの仕組み一つとっても改善の余地がありますし、そこはリーグとして改善は必要と感じています。今はクラブによって購入方法がバラバラですし、集客やリピーター率、同伴率などを可視化する上でも、難しさがあります。

ホームゲームの買い方はわかるけどアウェイの買い方がわからないという人もいますから、例えばホームでアウェイのクラブのチケットが購入できたりしてもいいかもしれません。試合会場で、次のホームゲームのチケットを販売する方法なども良さそうです。

いずれにせよ、各クラブのホームにもっと足を運んでもらえるように、クラブには努力を続けてもらい、リーグはその努力をサポートする。私たちもそのサポートを続けていきます。Fリーグの競技的な魅力はもちろんのこと、アリーナに充満する気持ちの良さを多くの人に体感してもらいたいですね。

ABeam AWARD 2024-2025
https://www.fleague.jp/abeam_award/



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