更新日時:2019.08.29
【メジャー競技“じゃないほう”座談会・前編/ビーチバレー×フットサル】倉坂正人(ビーチ)×藤井桜子(ビーチ)×田口元気(フットサル)
PHOTO BY軍記ひろし
日本国内でメジャースポーツと言われるバレーボールとサッカーがある一方で、主流にはなれない“じゃないほう”の競技。それがビーチバレーボールとフットサルだ。メジャースポーツと同じように国内リーグが開催され、世界大会があるようなトップ競技でありながらも、両者は陽の目を見る機会が少ない。
ただし、「じゃないほう」ではあっても、そこで戦う選手は、メジャースポーツの選手と同じように努力を重ね、アスリートとして競技に打ち込んでいる。彼らは彼らなりに考え、それぞれの競技の発展を願う。
ビーチバレーボールの倉坂正人と藤井桜子と、フットサルの田口元気。20代中盤から後半の年代の彼らはこの先、自分たちの競技を背負っていく存在。日々、どんなことを感じながらプレーして、この先、どんなことを考えてプレーしていくのか。3者の共通点や相違点、未来へのビジョンを、語り合った。
【企画】スマートスポーツエンターテイメント株式会社
【取材】吉田亜衣(ビーチバレースタイル)、本田好伸(SAL)
【写真】軍記ひろし、吉田亜衣
【協力】フウガドールすみだ、ビーチバレースタイル、SAL
浅尾美和を「ギリギリ知っている」というのが現状
──今回の座談会は、ビーチバレーとフットサルの専門媒体によるコラボ企画、名付けて「じゃないほう対談」です。いわゆるメジャーではない競技のトップ選手同士に語り合っていただきます。まずは田口選手から、ビーチバレーボールに対するイメージをお聞かせいただけますか?
田口 まず、お2人の顔を拝見して、すごく焼けているなと(笑)。お恥ずかしい話ですが、思い返したときに、どこでどういったリーグが開かれているのかを知らないというのが率直の印象です……。世界ツアーなどがあることは知っていますが、日本ではどこでやっているのかなぁと。バレーボールは、僕たちが試合をしている墨田区総合体育館を、Vリーグに所属しているFC東京バレーボールチームが使っていて、ハーフタイムに出演するなど、選手交流もするようになりました(編集注:4月1日にエイプリルフールの企画として田口元気がFC東京バレーボールチームに電撃移籍したことも)。ビーチバレーボールは、本当に申し訳ないのですが、これまで交流がなかったのでどういった選手がいるかもわからないです。でも、オリンピックの競技種目なので、プレー人数やなんとなくのルールは知っていますよ。あと、白い砂浜はキレイですが、日本の砂浜はあまり白くはない印象なので、砂まみれになっている選手がすごいなと。
倉坂 見栄えのかっこよさはないですか(笑)?
田口 男性はかっこいいかもしれないですね。女性は少しかわいそうだなと感じることもあって……。
藤井 いや、気にならないですよ(笑)。
田口 あと、オフシーズンに砂浜でトレーニングをすることがあるので、単純にキツそうだなって。お2人はバレーボールからどうしてビーチに転向されて、どういった活動をされているんですか?
藤井 私は小学生からバレーボールをしていて、高校時代にビーチバレーの全国大会に出場したことがきっかけでした。都内の高校だったのですが、バレーでは、インハイ予選の都でベスト8以上くらいの実力のチームで、全国には出られなかったのですが、高校の先生から「ビーチバレーこそ究極のバレーだ。やってみないか?」と言われて出場したんです。毎年、夏に合宿をしていたのですが、2人でプレーする競技なので、自分でトスをしたり、スパイクを打つことがバレーにも生きるかなって。それで3年生の夏に全国で優勝できて、運良くアンダーカテゴリーの世界大会にも出場させてもらって。そこで海外でプレーしたことが楽しかったんです。インドアでは経験できないなと。そこから両方を半々くらいでプレーしていたのですが、大学を卒業してからはプロ転向しました。自分でパスして、トスして、打てる。ボールを触れる機会が多いし、本当に自分次第だなっていうのが大きかったですね。
田口 そこはフットサルと非常に近い感覚かもしれないですね。
倉坂 主役になりやすいですよね。
藤井 そうそう、目立ちたがり屋だから(笑)。
田口 たしかにインドアだと、目立つ選手が偏りやすいですよね。ビーチは2人で守って攻めて、1人が背負う責任や重要度が圧倒的に違いそう。
倉坂 だからこそ「究極のバレー」と言われたのかもしれないですね。ボールに触れないことがない。
田口 トレーニングの一環として始めたんですよね。インドアの現役選手が取り組むこともありますか?
藤井 日本では少ないのですが、海外では逆に、ビーチからインドアに転向するケースが多いです。
倉坂 中から外に行く人が少ないことは、日本で発展しない理由の一つかもしれないですね。
藤井 女性は日焼けを嫌うことも原因の一つかも。
倉坂 ライフスタイルに溶け込んでいないために取り組む人が少ないですが、実際にやってみると、かなりトレーニングとしても有効だと思います。
田口 倉坂さんはどうしてビーチに?
倉坂 僕は大学まではずっとインドアでプレーしていたのですが、就職を機に一線を退いて、週5、6日で働きながら、実業団で週1でプレーするくらいでした。そこで優勝したりして、ビーチから声を掛けてもらいました。24歳くらいのときで「若いうちしか挑戦できない」と思ってトライしました。今は3年目ですね。
田口 そうだったんですね。フットサルの場合は、プロと、セミプロと呼ばれる、クラブのスクールなどをすることで給料を得ながらやる選手、会社などで働きながら給与を得る選手がいます。ビーチバレーの場合はどうでしょうか?
倉坂 カテゴリーとして「プロ」、「セミプロ」とわけることが難しいですね。というのは、ほぼ個人競技のようなものなので、会社に属してサポートを受ける人もいますし、企業に勤めながらプレーする人もいます。企業のサポートの形態も様々ですし、一方ではアルバイトをしながら活動する選手もいます。
藤井 スポンサーからの契約金だけでプレーしている「プロ」もいますね。
田口 リーグはどういった現状ですか?
倉坂 大会がいくつかあるのですが、獲得したポイントに応じてエントリーしていきます。
田口 テニスのようなイメージですか?
藤井 そうです!
倉坂 僕らもツアーという言い方をしていて、できるだけ上のカテゴリーで戦いたいですが、ポイントが足りなければその下のカテゴリーにエントリーして、勝ってポイントを貯めていく。
田口 なるほど。じゃあ、休みとかはどうしているんですか?
藤井 そこは本当に自分次第。スポンサーを獲得するのも、会社で仕事の調節をする、交渉をするのも自分ですね。チームにいれば、マネージャーなどがやってくれますけど、ビーチでは、それこそパートナー選びもそうですし、何から何まで自分でやることになります。そこはやりがいに感じる部分でもあります。
倉坂 マネージメント力は、選手力を問われる部分でもありますね。
藤井 大会に出たいなら、そこに向けたトレーニングの組み方もそうですし、そもそも資金がないと出られないですからね。
田口 今回は「じゃないほう」ということでご一緒させていただきましたが、でも僕からすると、そもそもビーチはオリンピック競技種目ですし、バレーボールの「サブ」みたいな印象はありません。フットサルはサッカーがあって、その「サブ」みたいな見られ方をまだされていると思います。バレーと対比したときに、観客数だったり、いろんな面でマイナーという認識をお持ちですか?
倉坂 そうですね。やはり競技人口も少ないですし、知名度も。オリンピック競技ということを知らない人もけっこういるんです。
田口 浅尾美和さんなど、非常に人気が高い選手もいますよね。
倉坂 彼女を「ギリギリ知っている」というのが日本の現状だと思います(苦笑)。
田口 たしかに、今の国内で有名選手、人気選手がどなたかと聞かれてパッと浮かばないですね……。
倉坂 ビジュアル面は一つの大事な要素でもあります。でも、継続してビーチ全体として結果を出せていないからこそ、今の(知名度が上がらない)状況があるのかなと思っています。
中編に続く。
倉坂正人(くらさか・まさと)
1990年2月7日生まれ、石川県出身。石川県立工業高→早稲田大。三菱オートリース所属。
藤井桜子(ふじい・さくらこ)
10月15日生まれ、東京都出身。都立駒場高→日本体育大。市進ホールディングス所属。
田口元気(たぐち・げんき)
1991年7月3日生まれ、茨城県出身。鹿島学園高校→神奈川大。フウガドールすみだ所属。
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