更新日時:2019.09.10
湘南ベルマーレを愛しすぎている男、鍛代元気が長野戦で決めた“特別なゴール”。「実は3日前に子どもが生まれて……」
PHOTO BY軍記ひろし
貴重な3点目のゴールを決める
生粋のゴールハンターは、3日前に生まれてきたばかりの子どもに、人生で初めてのプレゼントを贈った。
Fリーグ第17節、湘南ベルマーレvsボアルース長野。試合を決定づける3点目を決めたのが、鍛代元気だった。
後半10分、ゴール前で相手を背負いながらパスを受けると、左方向にターンしてシュートを放つ。一度はゴレイロに防がれたものの、こぼれ球に誰よりも早く反応して押し込んだ。決して華麗ではないけれども、ゴールへの貪欲な姿勢が表れた、実に鍛代らしいゴールだった。
ゴールネットが揺れたのを確認すると、鍛代はサポーターの待っているスタンドに向かった。そして、チームメートと共にゆりかごダンスを踊った。
試合後の記者会見に出席したキャプテンは、ちょっと照れくさそうに語った。
「個人的になんですけど……、子どもが生まれまして、その子に捧げるゴールじゃないですけど、決められてよかったです」
実は、2点目の後にロドリゴもゆりかごダンスをしてくれてはいた。ただ、ストライカーとして、どうしても自分のゴールで祝いたかった。
ゴールを決めたかったのは、もちろん子どものためだけではない。第10節を最後に勝てていないチームを上向かせるために、勝利が何よりも必要だった。
前日の第16節、立川・府中アスレティックFC戦では2-2で迎えた後半ラストプレーで痛恨の失点。「一生残るような、心に刻まれるような負け方」(奥村敬人監督)。それでも、しっかりと気持ちを切り替えて臨んだ。
長野戦には苦い思いがあった。第11節、そこまで全敗だった長野と2-2で引き分けた。勝てなくなったのは、そこからだ。キャプテンとして、今の状態を脱するために何をすべきか。ピッチ内外でもがいた。
「長野に狂わされてしまった僕らの歯車を、長野に勝つことで戻せるか。未来からした時にターニングポイントになる試合にしなければと思っていた」
高橋広大のFリーグ初得点で均衡を破ると、ジョーカーとして起用されたロドリゴが2点目。2-0で折り返した後半には鍛代、ロドリゴ、刈込真人が追加点を挙げて5-0。タイムアップのブザーが鳴り響くと、小田原アリーナにはたくさんの笑顔がはじけた。試合後にサポーターからは「元気、おめでとう」という祝福が寄せられた。
「サポーターのみなさんも喜んでくれて、察してくれて、(ゆりかごダンスを)やってくれてよかったです。改めて、ベルマーレの仲間を大事にしたいなという気持ちが強くなりました」
記者会見が終わった後、鍛代は子どもの性別が男の子であることを明かした。
「男の子は欲しいなって思っていたんです。サッカー選手とかフットサル選手になってほしいとかではないけど、一緒にボールを蹴りたいなと思っていたので。単純にうれしい。スタジアムにも一緒に行きたいですけど、僕が選手でいるうちはプレーしているところを見てほしい」
愛するクラブのために、そして愛する家族のために--鍛代元気はこれからもゴールを貪欲に狙い続ける。
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