更新日時:2020.01.22
2019シーズンを席巻した伊藤バサジィを象徴する“3つのカルテット”。最強チームのキーワードは「4人組」だった──。
PHOTO BY軍記ひろし
Mr.ChildrenやGLAY、ウルフルズといえば、今も昔も愛され続けるアーティスト。彼らが人々に受け入れられ、人気を博してきた理由を探ると、ある一つの共通点にたどり着く。それは「4人組」だ。
もしかすると、それこそが最強のキーワードかもしれない。例えば4人組は、フットサルにも当てはまる。
国内フットサル最高峰の「Fリーグ」はまもなく、優勝を決めるプレーオフ決勝を迎える。12チームによるリーグ戦で1位になった名古屋オーシャンズに挑むのは、プレーオフ準決勝でフウガドールすみだを破ったバサジィ大分。彼らは今シーズンのリーグ戦で2位を“独走”した。
その強さを証明するキーワードこそ「4人組」だったのだ。
カルテットが織りなす超強烈プレーがすごい!
フットサルは試合中の交代が自由なスポーツ。ベンチ入りは14人で、多くのチームはゴレイロを2人、残り12人はフィールドプレーヤー(FP)を登録する。ピッチ上はゴレイロを含めて5人。つまりFPの8人はベンチスタートということ。試合の勝敗は、FPをどうフル稼働さるかにかかっていると言える。
今シーズンの大分が強かった要因の一つは、12人を4人ずつ3つのセットに分けたことだ。
利点はいくつもある。2つよりも3つにすることで、選手が休む時間を長く確保できるため、ピッチではよりフルパワーを発揮できる。しかも“3つの個性”を使い分けられるため、試合に変化も作りやすい。加えて、練習から同じセットのメンバーでイメージの共有を図れるため、シーズン終盤にかけてどんどん成熟度が増していく。ほかにもあらゆる点で効果的だが、この構成を突き詰めるのは本来、至難の技でもある。
セット間にはどうしても実力差が生まれ、水準を維持しきれないことが多いからだ。
しかし大分は選手層に秀でているため、3つのセットはいずれもハイレベル。なおかつ、シーズン前から走り込みを強化してフィジカルコンディションを高めたことも好影響を与えた。一定のコンディションを維持しながら戦い続けた彼らは、他チームに比べてケガ人で離脱する選手が極端に少なかったのだ。
そうして完成したのが、大分の「最強カルテット×3セット」だった。
3セットはいずれも、強烈なシュートを持つパワーシューター、前線で起点となれるターゲットマン、守備で強度を出せるダイナモ 、敵陣を突破できるサイドアタッカーを擁している。しかも、レギュラーシーズン最後の第32節、33節は8人がゴールを挙げて両試合ともに9-3で勝利。圧倒的な得点力も兼ね備えているのだ。
1stセット
レイチ(19点)
吉田圭吾(10点)
山田ラファエルユウゴ(5点)
パカット(1点)※途中加入
2ndセット
芝野創太(22点)
仁部屋和弘(23点)
ヴィトン(12点)
白方秀和(7点)
3rdセット
小門勇太(8点)
田村龍太郎(15点)
瀧澤太将(10点)
森洸(20点)
ゴレイロ
岩永汰紀(2点)
リーグ2番目のゴール数をたたき出した破壊力満点のパワーシュート、今シーズン最少失点を記録した力強い守備、それらを生み出す攻守のサイドアタックと、息の合った連係。そして、ゴールを守る守護神の存在。
大分という個性は今シーズン、どのチームよりも強烈なインパクトを残し、メンバーそれぞれがそれぞれの特徴を生かしながら、まさに4人組のメリットを最大限に生かしたプレーを披露していたのだ。
「チームとして、バラバラじゃない。セットを固定することが多いですが、他のメンバーと出たときでも、うまくやれている。(セットごとに)特徴は違っても、チームの狙いは一緒。みんなが同じ方向を向いて進んでいることが一番いいところなのかなと思います」(白方)
一見すると、制御不能な個性派集団。でも実際は、組織のなかの個性が光り輝くことで最高のチームが完成している。パワー、テクニック、アジリティ、戦術、各セットの4人組が織りなすハーモニー。12人を巧みに組み合わせた「3つのカルテット」を要するバサジィ大分は、クラブ史上初の頂点奪取へと爆進中だ──。
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