更新日時:2022.01.28
【ブラインドサッカー】決勝戦でメッシ級ゴール。ブラサカ日本選手権MVP鳥居健人が見据えるもの
PHOTO BY日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄
4人で守って4人で攻める。
いわゆる「トータルフットボール」が、第19回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権で初優勝を成し遂げたfree bird mejirodaiの戦い方だ。
チームの一体感を武器にここまで勝ち進んできた彼らのなかでも欠かせない存在なのが、決勝で2ゴールを奪い大会MVPを獲得したエースの鳥居健人だ。
チーム創設にも携わり、前回大会では日本一まであと一つに迫りながらも1-7の大敗を喫するなど悔しい思いをしてきた。そんな苦労人の鳥居だからこそ、今大会には強い想いを抱いていた。
「自分が決める」という思いを持っていた
今大会ここまでもエースとしてチームをけん引してきた鳥居がゴールを決めたのは、立ち上がりの4分と5分。リオネル・メッシを彷彿とさせるような細かなタッチのドリブルから、シュートを突き刺した。彼の目が見えていないことを一瞬忘れてしまうほどの驚愕プレーだった。
[※ゴールシーンは31:29〜と34:25〜]
重圧のかかる決勝戦で、チームに勢いをもたらせる重要な連続得点はまさにMVP級の活躍だった。しかし鳥居はあくまで「僕がたまたま点を取っただけ」と話す。チームの全員が「自分が決める」という強い思いを持って臨んだ結果だったと振り返る。
「『得点がほしい』というのは全員が思っていました。4人が4人とも点を取る可能性は十分ありますし、その技術を持っている。他のメンバーも『自分が先に点を取る』と思っていたでしょう。同じように僕自身も『自分が決めるんだ』という思いは持っていました」
実は、準決勝ラウンドのたまハッサーズ戦で決勝点をマークした際にも「狙っていましたが、たまたま自分が得点できただけ。チームとして誰が決めてもおかしくない状況でした」とコメントしていた。それだけチームメイトへの強い信頼が伺える言葉だった。
予選ラウンドから自分たちのサッカーを貫き、日本一の座を勝ち取ったfree bird。「日本一」という同じ目標に向かって全員が目指したからこそ団結が生まれ、全員攻撃・全員守備のサッカーの真価を発揮することができた。
しかしチーム創設から携わる鳥居の優勝へ懸ける想いは、チームの中でも人一倍強かったはずだ。
日本一になった喜びは人一倍大きいはずだが……
鳥居がブラインドサッカーを始めたのは小学5年生のとき。そこから約4年後、14歳という若さでブラインドサッカー日本代表に選出された。
「そのときはただただ楽しみながらがむしゃらにやっていて、そのなかで上達していく手応えを感じていき、代表にも選んでいただけた」と鳥居は当時を振り返っている。だが高校に進学するとゴールボールもプレーするようになり、日本代表にも選出された。そのことで17歳のときに一度はブラインドサッカーから離れた。。
しかし24歳でゴールボールを引退すると「自分の原点はブラインドサッカーだな」という想いから、翌年の2016年にfree birdの監督・山本夏幹氏とチームを立ち上げた。
創設者の一人としてチームに関わり、当時から日本一を目標にトレーニングを重ねてきた。選手という立場ではあるが「free birdは経験の浅い選手が多いですが、経験の長い自分が監督と選手を繋ぐ役割をしながら、選手目線でアドバイスをしてきた」と鳥居の責務は重い。
苦労を重ねた末に掴んだ前回大会の決勝戦。創設4年目にして初の舞台に勝ち進んだfree birdだったが、そこでは6点差をつけられ大敗を喫した。
前回の辛さがあったからこそ、「今年こそ」はと強い思いで臨んだ今大会。「非常に悔しい負け方をしてからさらに気合を入れ直して、チームとして一丸となってこれまで戦ってきました。ようやくその成果を今日の舞台で発揮することができ、純粋にすごく嬉しい気持ちです」と鳥居は初優勝に素直な感情を口にした。
だが、その言葉に反して喜びを爆発させている様子はなく、どこか気を引き締め直しているようだった。
「優勝できましたが、これからがすごく難しくなると思っています。ここをスタートラインとして、次はどこを目指していくのか。今度は追われる立場になるので、厳しい戦いが待っていることには変わりないです。ここで満足してはいけませんし、チームとして強くなっていく必要がある。向上心を持って今後もやっていかなければいけない」
今度は王者として、タイトルを守る立場になった。だからこそ鳥居は浮かれることなく地に足をつけて前を見据えた。
楽しみながらがむしゃらにプレーするという原点は忘れずに、チームとして選手個々がより成長していけるか。選手全員の総合力が問われるfree birdのトータルフットボールの向上には、鳥居のチームをまとめる力が今後より重要になってくる。その成果をまた次回の日本選手権で発揮したい。
▼ 関連リンク ▼
▼ 関連記事 ▼
-
2024.11.22
-
2024.11.21
-
2024.11.21
-
2024.11.20
-
2024.11.20
-
2024.11.19