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作成日時:2023.02.17
更新日時:2023.02.17

【渡邉知晃コラム】パワープレー守備の構築に8カ月。全てを“想定内”で対処したしながわの超準備力|F1・F2入替戦

PHOTO BY高橋学

2月11、12日に、Fリーグ2022-2023 F1・F2入替戦、ボアルース長野vsしながわシティが行われ、2連勝したしながわがF1昇格を果たした。同一カードの昨シーズンの対戦は、1勝1敗、2戦合計4-4となり、F1の長野が残留した。あれから1年。F2で絶対的な強さを見せつけてきたしながわが、悲願を遂げた。しながわ有利と見られた戦いで勝ち切ったポイントとは。元日本代表・渡邉知晃が分析する。

■この試合の無料ハイライトはこちら(ABEMAビデオ)

準備を重ねたパワープレーの守備

しながわは、この日のために全ての準備をしてきた。昨年の入替戦で負けた、あの日から。

今シーズンもしながわの戦力はF2の中では圧倒的で、15勝1分0敗の無敗、得失点差84と他を寄せ付けず頂点に立った。早々にF2優勝を決めたこともそうだが、入替戦に向けて年間を通して準備する余裕すらあったはずだ。それほどまで、抜きん出た存在だった。

この試合の大きなポイントは、しながわのパワープレーのディフェンスだ。昨年の戦いでは、2戦合計で一時は3点をリードしたが、長野の精度の高いパワープレーから3ゴールを奪われてしまったことで昇格を逃してしまった。

岡山孝介監督は第1戦後の記者会見で、パワープレーの守備について「昨年の6月くらいからずっと全員で練習していたので、今は誰でもいけます」と語っていた。つまり、シーズン開幕当初から入替戦を見据えた準備を開始していたのだ。

実際、今回もかなり長い時間、長野のパワープレーを受けることになったのだが、特定のメンバーに絞るパワープレーの守備セットを作るのではなく、通常のセットに入るメンバーがそのままディフェンスに対応してみせ、準備力の高さを証明した。

驚いたのが、そのパワープレーの守備の方法だ。リードしている展開の時も、自陣に引いてゴール前を固めて我慢するのではなく、積極的にボールホルダーにプレスをかけて奪いにいくディフェンスを採用していた。

特に印象的だったのが、第1戦の結果により3点差で迎えた2戦目の序盤、長野にパワープレーから連続ゴールを許した場面だ。2失点目に関してはプレスをかけにいった結果、うまく崩されて数的優位を作られ、失点した。

これで2戦合計スコアで1点差に迫られ、直後にタイムアウトを取ったことから、パワープレーの守備の方法を修正すると思われた。しかし、取りにいかずに守る時間帯も少なからずあった一方で、その後もプレスをかけ続け、パワープレー返しからのゴールを奪うなど、試合を通して守備のコンセプトを大きく変えることはなかったのだ。

例えば、相手陣内の高い位置で得たキックインでは通常、長野がゴレイロをフィールドプレーヤーに替えていた場合は、数的優位を生かして崩されてしまうリスクがあるため自陣に引いて守備を開始することが多いものだが、そうしなかった。しながわはキッカー以外の選手にマンツーマンでついて、高い位置でボールを取りにいくという戦術を採用していたことにも驚かされた。

最後まで攻めの姿勢を崩さず勝ち切ったしながわには、昨年の反省を生かし、チームとして入念に準備してきたこと、そして自信を持ってチーム全員で遂行しきる信念の強さがあった。

想定していたゲームプラン

第1戦を4-1で勝利したしながわ。試合後の記者会見に現れた岡山監督とキャプテンの白方秀和に笑顔はなかった。淡々とコメントする姿には、「まだなにも終わっていない」という気持ちがにじみ出ているようだった。

白方が「昨シーズンのこともありますし、この点差でも優位に立っているとは思っていない」と話したように、昨年の経験があるからこそ、勝利しても慢心はなく、第2戦を見据えていた。

この2試合、しながわは終始落ち着いてゲームを運べていた。第2戦で、長野がパワープレーから2連続得点を奪った際には、試合の流れも、会場の雰囲気も長野に傾きかけていたが、タイムアウトを取り、その後は普段通りのしながわのフットサルができていた。

これは、昨年の経験に加え、自分たちへの自信の現れだろうか。崩れることなく自分たちのやり方を貫いたからこそ、この試合のターニングポイントとなった瀧澤太将の直接フリーキックのゴールが生まれた。

岡山監督は試合後、2日間ともに「想定していた」と話した。全ては想定内だったのだ。しながわの力を考えた時に、リードを奪う展開になること、長野が長時間パワープレーを仕掛けてくる可能性があること。パワープレーで何点かは失点する可能性があること。

全ての可能性に備えて準備してきたことで、どんな局面になっても落ち着いて対処できたのだ。2戦合計スコアが1点差になった際も焦りは感じられなかった。その点が、昨年との大きな違いだった。

さらに岡山監督は「人が瞬時に判断するスポーツなので、一瞬の隙でやられたり、そういう難しさを改めて感じた2日間だった」と語っていたが、この”受け入れる姿勢”こそが、彼らの勝利につながったように思う。

 

完璧な守備と完璧な攻撃で勝利を追求する理想論もあるだろう。しかし、人がプレーするスポーツである以上、フットサルで一つのミスもなく試合を進めることは不可能に近い。

40分近く相手に数的有利に立たれるパワープレーをされ続けた場合、無失点に抑えることはとても難しい。股下を通ってしまったり、ゴレイロのブラインドになるシュートを打たれたり、誰かに当たって入るといった事故的な失点もあり得る。

起こってしまったことに一喜一憂するのではなく、全てを想定内として捉え、その上でどのように勝つか考えることが大事なのだ。監督としてそういった考え方を持ち、それを選手に共有できたことも、この試合に勝利した大きなポイントの一つだろう。

間違いなく言えることは、しながわは強かった。多くのゴールを奪うことができた。昨年の悔しさから1年。しっかりと同じ舞台でリベンジを果たし、「昇格」を勝ち取った。来シーズン、F1の舞台でしながわがどんな成績を残すのか、楽しみにしたい。

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