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作成日時:2023.09.01
更新日時:2023.09.02

【インタビュー】「感極まっちゃった」。3500人の大観衆と、6得点のゴールラッシュ。水上玄太が選手・GMの目線から振り返った“神試合”

PHOTO BYエスポラーダ北海道

3573人──。

入場者数のアナウンスが流れると、「きたえーる」にどよめきが起こった。

ここまで最下位のエスポラーダ北海道がホームの雰囲気を味方につけて、優勝争いを演じるペスカドーラ町田に6-1で大勝した。

タイムアップから90分後。4点目を決めた選手兼GMの水上玄太がミックスゾーンにやってきた。

ずっと変わらない人懐っこい笑顔の裏側には、GMとして、エースとしてクラブを背負う責任感を抱えていた。

取材・文/北健一郎

不安だし怖かった

──ちょうど、僕が北海道の実家に帰っていたんです。エスポラーダ北海道の試合があるということで来てみたら、座る席が見つからないぐらい埋まっていてびっくりしました。

ありがとうございます。

実は、今年けっこう集客に苦戦してたんです。というのも、去年ぐらいからちゃんとチケットを購入してもらおうとシフトチェンジしていて、無料招待をほとんどしていなかったんです。

今日はトップパートナーの明日佳グループの15周年を記念するチャリティマッチなので、明日佳グループと関わりのある企業さんを中心に、ぜひチケットを購入してくださいとお願いをして。

ただ、北海道マラソンもかぶっているし、天候もちょっと良くなかったから、僕らの計算でも、「3000人ギリギリ届くか?」っていうぐらいの予想だったのですが、フタを開けてみたら3500人超えるお客さんが来てくれて、本当によかったなあと。

──エスポラーダ史上でも指折りの観客数だったのでは?

そうですね。カズさん(三浦知良)が来た時が5300人で最多だったので、それに次ぐくらいの数ですね。今回は先着でタオルマフラーを配布する企画をしていたのですが、どれくらいの人たちに周知できているかも、SNS上だとわからなくて。チケットの前売りも今までよりは多かったけど、本当に不安だし怖かった。

──選手としてというより、GMとしての不安。

そう。中身を知っているし、明日佳グループの冠試合なのにガラガラっていうのは、申し訳ないというか、やばいよなと思って。結果的に多くの人が入ってくれて、試合も勝つことができました。

──水上選手、GMとしては崖っぷちのような気持ちだった?

僕のなかでは、もうけっこう崖っぷちでした。F2降格もある順位だし、リーグ戦も半分経過したんだから、もっと頑張らなきゃダメだろと。言い方は悪いかもしれないんですけど、若いなっていうか、くだらない失点が多くて。練習の時からそれが出てたりするので、今週は特に厳しい声もあげながら準備してました。

みんなで粘り強く戦えば、こうやって先制して加点することもできるし、(鈴木)裕太郎のゴールで沸いて、(室田)祐希のゴールでさらに会場のテンションが上がったのもわかったし、3、4点目と決まっていくうちに、どんどんホームの雰囲気になっていたなと。それが町田に勝てた要因だったと思います。

──今日来たお客さんの中には、エスポラーダをめちゃくちゃ応援しているかというと、たぶんそうじゃない人もいたと思います。

そうですね。そこは、サッカー少年団の子どもたちや札幌第一高校サッカー部の学生とかが、コアなサポーターとの緩衝材になって、応援に乗っかって声を出してくれたので、全体的に盛り上がったんだと思います。やっていてもありがたかったです。

景色が変わることを信じていた

──試合前は観客席も気になるんじゃないですか?

はい。それは去年ぐらいからもうずっとです。今日もアップの時はまばらだったから裕太郎とは、「大丈夫かな?」って話をしていて。ただ、昔から試合前はガラガラでも入場した時にめっちゃ人が入ってるっていうのを何度も経験してるんですよね。だから景色が変わることを信じようって言いながら、アップを終えました。

そしたら本当に入場した時にびっしり観客席が埋まってたので、それだけでちょっと感極まっちゃって、あとはもう結果だよなって。危ないシーンもありましたけど、(関口)優志を中心に、しっかり我慢して。長く在籍してる裕太郎のゴールから始まって、エースの祐希が追加点を決めて。

──そして、水上GMも自ら決めて、最後にGKの関口選手も決めて。

あれ? 僕のオウンゴールになってないんですか! 

──(公式記録を見ながら)4点目は「水上玄太」になってます。

得点者だけ見たら「若手、大丈夫か?」って感じだけど(笑)。

──確かに。でも、みんなが知っている選手とか決めてほしい選手がちゃんと決めて大差で勝つことができました。何年かに1回の神試合かなと思いますけど。

うん。もちろん若手が取ってくれたらよりいいんですけど、僕たちが理想としてたというか、苦労してきたメンバーがしっかり結果を出してくれました。個人的にもすごくうれしいゲームになりましたね。

俺ら、やればできるよね

──さっき室田選手にも話を聞いたんですけど、室田選手と関口選手が話してたりとか、チームの戦い方や営業的な部分も、チームの選手同士でいろんなことを話をしたんですよね。

そうですね。運営に関しては、あまり他の選手に負荷はかけないように、基本的には僕で処理しようと思ってはいますけど、協力してもらうことはお願いをしたりとか。逆に戦術的なところは、基本的に僕は触れないようにはしていたんですけど、今回はコミュニケーションを取って嵯峨(祐太)監督とも話をしました。僕たちも今までは踏み込みすぎないようにしてきたんですけど、改めてしっかり会話をして、若手や中堅にも伝えてやっていくっていうことが必要だよねって。

──監督が大枠を決定して、選手たちが細かい戦い方をアレンジするみたいなスタイルは、小野寺隆彦さんが監督の時からやってきてましたもんね。

今日はその頃に近かったのかなと思うし、そこにもっともっと若手が入ってもらって、できればよりいいのかなと思いました。

──具体的に戦術的にちょっとやり方変えたみたいなところは?

ディフェンスの距離をもっと詰めなきゃだめだよねということは、チームで共有しました。今日もできてないところはあったんですけど、試合をやりながら、ベンチに戻ってきた時とか、ロッカーでも話したりとかもして修正をしました。最近はセットの編成も少し変わったりもしながら、どれが今のベストなんだろうって試行錯誤しながらやってはいますね。

今日の試合は、僕が思ってるうちの選手たちのすべてというか、「俺ら、やればできるよね」って確信がもてる試合になりました。

結果が出てないと、若手は特に「自分たちはダメなのか」ってなりがちですけど、エスポラーダは、実際は全然下手じゃない。実力はあるけど、ちょっと勇気がなかったりやりきることができなくて、中途半端になるから、弱いチームになってしまうだけなんですよ。絶対こんな順位にいるチームではないし、そこはもっとみんな自覚してほしかったんですよね。祐希や優志がヒーローになりましたけど、全員がしっかり戦えた結果だと思います。

優志がいることで、守備は絶対安定すると思うんですよ。そこで我慢して我慢して、後半の裕太郎のゴールがあって、祐希のゴールがあって、相手が前がかりになってきたところで追加点を取って、これだよなって。とにかくいいきっかけになればいいなと思ってます。

誰もが経験できることじゃない

──数年前までは、お客さんをプレーの内容で魅了して、結果にもつなげていたエスポラーダが、ここ数年は下位が続いてしまっていますけど、水上GMとしてはどんなところに要因があると感じてますか? タレントはいるし、今日の試合を見ていても、こんなに低迷するチームじゃないと思うのですが。

もう本当、キタケンさんが言ったとおり下手な選手がいるわけじゃないし、もっとできる選手が多いと思っています。攻の祐希、守の優志で攻守にはタレントがいるので、そこを自分たちがサポートできるようにしていけば、絶対もっともっと良くなるだろうと。開幕から優志や(木村)優太が怪我をしてしまったり、アクシデントもありますけど、メンバーが揃わなくてもこの試合ができるっていうところは、もっともっと自信を持ってやればいいと思うんですよね。

──ただ、さっき室田選手と話していたのは、夜に練習をして仕事の負荷もあってプレーするのは、ベテランの選手になればなるほどきついと。

フットサルに集中できる環境になっているかといえばなっていないのは事実です。僕自身、ベテランとしても表向きで弱音は吐かないようにしているけど、きついなと思うことはあります。ただ、仮に「仕事もあってきついよね」って年上の選手が話をしたとして、若手も「そうですよね」って同調するじゃなくて、「じゃあ代わりに俺らが頑張ろう」って、できればなってほしい。若い子たちのためにももっと環境をよくしたい、よくしてあげなきゃというのは常に考えています。

──試合が終わったのは15時。今が16時半だから、この約1時間半、ファンサービスもやって、スポンサーさんとかと話して、今まだユニフォームのままで……。

疲弊しましたね(笑)。勝ったからまだよかったです。

──そうやって二足のわらじをして、試合の主催者でもあり、出演者でもある。その経験ってどうですか?

誰もが経験できることじゃないし、限られた人しかできないことを任せてもらえているので、ありがたいです。とりあえず全力でやるしかないですね。

 

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