更新日時:2023.12.11
【インタビュー】“もったいない”と言われても、進みたい道がある。現役最後のホーム戦で2ゴールを挙げた浦安・大島旺洋の揺るぎない指導者への思い。
PHOTO BY勝又寛晃、本田好伸
今シーズン限りでの引退を発表したバルドラール浦安の大島旺洋が、現役最後のホームゲームで魅せた。
序盤から積極的にチャンスを作ると、14分には左サイドからのクロスに落ち着いて合わせて先制点。今季2得点目となるゴールで会場を沸かせた。第2ピリオドではドリブル突破からのクロスで、田中晃輝の得点をお膳立て。最後はパワープレーを行使する相手に対し、残り1分でダメ押しの追加点を決め、2得点と1アシストで圧倒的な存在感を見せつけた。
セレクションの時から成長を見てきた小宮山友祐監督が、“特別”であり“逸材”だと評価するほどの選手である大島。今年1月にはU-23の代表に選出され、これからの活躍に期待が高まっていた。このタイミングでの引退表明には、きっと多くの人が「もったいない」という思いを抱いたのではないだろうか。
それでも、浦安に加入した当初から「5年間」と決めていた大島の表情に悔いはなく、次なる夢に踏み出した決断は、決して「もったいない」ものではない。
最後まで軽やかにピッチを駆け抜け、バルドラール浦安アリーナを後にした大島の思いに迫った。
取材・文=伊藤千梅
不安に打ち勝って決めた2ゴール
──ホーム戦ラストの試合を振り返って。
まずは平日開催にも関わらず、たくさんのファンサポーターの方が来てくれたことを素直にうれしく思いながらプレーしていました。
ホーム最終戦であり、(自身の)ラストホームゲームというのもあって、普段はあまり緊張しないんですけど、さすがにいつもと違う雰囲気で不安な気持ちも多少ありました。それでも試合にはうまく入れた印象があります。立ち上がりから浦安のペースになったり、先制点もうまく取れたりと、振り返ると1試合通して内容も結果も良かったと思います。
──緊張しているようには見えませんでしたが?
緊張よりも、不安の方が大きかったです。
(教え子である)子どもたちとか、自分に関わってくれてる人たち方たちがたくさん来ていたので、変なミスもできないですし。最後なのでしっかりと勝利も届けたいと思えば思うほど不安になっていました。
──その不安に負けることなく2得点を決める活躍をみせました。得点シーンを振り返って。
1点目は拓海くん(長坂)がうまく裏に抜けてくれて、この形はいつもやっているので「絶対パスがくる」と思いました。拓海くんのところもディエンスとギリギリ競り合っていたんですけど、先にボールに触ってくれるのは感じたので、自分はシュートを決める準備をしていました。思った通りに来たので、あとは決めるだけでしたね。
2点目は、相手がパワープレーする時間が長く、まずはシュートを打たれず失点0にしながら時間を進めていました。そこで相手がリスタートを始めようとしたところにうまくボールが自分のところに転がってきて、迷わず振り抜けたのがゴールという結果につながったと思います。(シュートを打つ時に)タケ(本石猛裕)が「アキ、打て」と声をかけてくれたので、躊躇せずに打つことができました。
──日本代表の選手と一緒にファーストセットで出場していましたが、その時の気持ちや、どのようにプレーしようと思っていましたかを教えてください。
自分は誰と一緒に出たいとか、誰と出たらやりやすい、やりづらいというのは、そんなに思っていなくて。どの選手とプレーしても自分の強みや、逆に一緒に出てる選手たちの強みを出せるように意識してきたつもりです。その気持ちで5年間やってきたのが、最後に出たのかなと思います。
次に目指す舞台は「Jリーグ」
──浦安のセレクションを受けたきっかけは?
高校卒業した時に、地元の北信越リーグのフットサルチームに練習参加をしていました。そこの監督さんに「東京でも趣味でフットサルをやりたいので、どこかいいチームを知っていますか」と聞いたら「浦安か、すみだか町田」と言われて。
たまたま社員寮が浦安に近かったので、セレクションに参加することになりました。自分もその時はFリーグを知らなかったので、当日会場に着いてからびっくりしました。
──引退まで5年と決めたのはいつですか。
浦安のセレクションで合格をもらった時からです。
絶対に辞めるとは決めていないですけど、5年間でトップチームに上がれなかったら地元に帰るという覚悟で始めました。逆に、5年間はフットサルと向き合おうとは思っていた感じですかね。
──指導者になりたいと思ったのはどのタイミングなのでしょうか?
一番最初に思ったのは中学3年生の高校の進路を決める時です。中学生の頃から、練習がない時は小学校のクラブに顔を出していました。間接的にしか関わっていないけど、その子たちが大きくなって、競合のクラブに行くのなどが嬉しかった。その辺りから進路を考える時に「将来は指導者になれたらいいな」と少しずつ思っていました。
5年前は、指導者への道を現実的に考えていませんでしたが、この1年で指導者の方でやりたいことも定まってきて、次に挑戦するにはこのタイミングかなという意志が固まったので、今年で引退しようと思いました。
──引退の意志が固まった理由を教えてください。
今指導しているクラブでは、小学5年生を担当しています。自分の練習や試合があると、子どもたちは試合ができない。そこで来年ラスト6年生の年も同じような形でというのは、子どもたちや親御さんに申し訳ないという気持ちと、自分が最後まで見たいという気持ちがありました。
それが今後の指導者の道につながるというのも思っていたので、今シーズンでフットサルをやめて、次の指導者という道に行きたいなと思いました。
──引退という決断に至るまでに、葛藤はありましたか?
葛藤はそこまではないですね。元々長くても5年かなと思っていたのもあるので。あとはタイミングとか、自分が後悔なくやり切れた時には、もう次のステージに行きたいと思っていました。
「もったいない」と言っていただきますけれど、自分では選手として悔いはありません。また5年前浦安に入団した時のような思いをもって、次に進みたいという思いが強いです。
──フットサルをトップリーグでやったことで、指導者にも生かせそうなところはありますか?
トップレベルでやれたというのは、サッカーの指導に今も生きていますし、ずっとサッカーをやっていた人たちとは、また違う武器というか、強みではあると思っています。
例えば戦術とか、サッカーだけだと2人組の考えはあまりないと思うので、そういう面で幅が広がってると感じます。本当にフットサルをやって良かったです。
──今後はどのような指導者になっていきたいですか。
フットサルももちろん教えてはいきたいですけど、今はサッカーを教えたい気持ちの方が強いです。指導者としては、日本で1番上のリーグである「Jリーグの監督」になるのを、一つの目標にしています。
浦安の“タイトル獲得”に向けて
──大島選手にとって、浦安はどういうチームですか?
東京にも仕事で来たし、フットサルは趣味で始めようと思っていたので、そんな状態の自分をセレクションの時に拾ってくれたことに感謝しかないです。
自分はこのような下部組織とか、大きなクラブでプレーしたことはなかったので、ここで選手としても一人の人間としても、たくさん成長させてもらいました。
本当に短い5年間という時間でしたが、自分はこのチームが大好きだし、自分自身引退しても応援したい、試合を見に行きたいと思っています。
──今シーズンを振り返って、どんな1年でしたか。
怪我をして2カ月ぐらい離脱してしまったので、そこは唯一自分のなかでも、怪我なく1年間プレーしたかった気持ちはあります。
そこ以外でも、得点で言ったら3点しか取れてないし、目に見える結果として皆さんに恩返しができていない。ホーム最終戦では結果を出せましたが、まだまだ足りないと思うので、残りの試合、最終戦と上位リーグではそこもこだわって、チームの勝利に貢献できたらいいかなと思います。
──次節、町田戦の意気込みを教えてください。
町田は今首位のチームなので、激しい試合内容、展開になると思います。
それでも、自分たちの目標はタイトルを取ることだし、まだ可能性は0ではないので、週末はしっかりと勝って、次の上位リーグにつなげたいなと思います。
──最後に、今まで応援してくださったサポーターさんに一言。
5年間という短い期間ですけど、苦しい時とか、自分が降格した時にも、変わらずにずっと支えてくれたのはファンサポーターの方でした。その方たちに残りの数ヶ月はしっかりと恩返しの思いを持ってプレーしたいです。
結果で言うとタイトルをとることができたら、自分も気持ちよく次のステージに挑戦できると思うので、そこは自分自身も頑張っていきたいし、残り少ないですけど最後まで応援してもらえたらうれしいです。
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