1月12日、墨田区総合体育館にてＦリーグ2023-2024ディビジョン１ファイナルシーズン下位リーグ・第27節が行われ、フウガドールすみだとボルクバレット北九州が対戦。3-3で引き分けた。

北九州の強力な前プレスに苦しみながらも、徐々にペースをつかむすみだは6分、左サイドの伊藤が相手ディフェンスの股を通しゴール前にパスを送ると、これを清水誠也が決め先制点をマークする。

しかしその後は3連続失点。残り5分を切り攻守が激しく入れ替わるなか、すみだは4分にパワープレーに踏み切ると、37分に左サイドからの折り返しに反応した中田秀人が、1点差に。そして残り22秒、星龍太からのロングパスを、ゴールポスト右付近で受け取った中田が再びネットを揺らし、意地の同点弾をマーク。シーズン最後のホームゲームで勝ち点1をもぎ取った。

試合を終え、北隅智宙監督と畠山勇気が記者会見に出席した。

下を向く選手は一人もいなかった

●フウガドールすみだ｜北隅智宙監督

──試合を振り返って。

負けなくて良かったということと、これが選手の底力だ、というゲームでした。ピッチに立っている、いないに関係なく勝負事に真摯に取り組んでくれました。下を向く選手は一人もいなかった。シーズンの後半戦は一体感が選手から湧き出ています。俺が結果を変えてやる、と。その反面、今の順位に納得していては次はありません。

今シーズンの27試合で出たものは、全日本選手権で出します。僕たちは大会連覇できる唯一のチームなので、この1年がどうだったか、立ち向かってくる相手を跳ね退けて、頂点に立てるように準備したいです。

──監督にとってはまだやりたいことがあったなかでの退任となります。

目に見えて成長があるなか、この先を考えても、足りないリソースを埋めることができたら、このクラブは数年後、タイトルに近いところに手が届くと感じられた27節でした。

自分はＦ１でプレーしてた選手ではないですが、実績を買われてプロジェクトを立ち上げて、長い時間をかけてじっくりとやろうということでしたが、それをできなくなるのは純粋に悔しいです。逆に、27試合でこれだけ選手が化けるという驚きもありました。何度も話をしていますが、自分はクラブのなかで、選手を起用できる唯一の人間ですから、大きな勇気をもった決断が実を結んだり、一方で、なんで俺じゃないんだというベテランもいたり、競争があるなかでやってきた自分の仕事には誇りがありますし、それをやり切ってくれた選手にも感謝しています。

これは自分にしかできない取り組みだと思ってやってきたことが自信です。ただ、結果を出さないといけないなかで引き上げられなかったという事実もあります。大きな学びがあり、みんなの成長を見られたので、また次の指導者に託します。

価値あるものだったと胸を張れる仕事でしたし、これ以上の選手を育てることが自分の使命なので、またチャンスをもらえるなら、より学んで、もっといい指導者になれるように努力したいです。

──GKに入江悠斗選手を起用した理由と、羽生恒平選手の成長ぶりについて。

入江は、見ての通りチームを何度も救うパフォーマンスを出してくれました。名古屋ラウンドでは負けましたが、フィウーザと並ぶ実力があることは、町田ラウンドの横浜戦でも証明しています。GKグループでの怪我などもあり、最後、誰を起用するのかという自分の決断がありますが、ピッチのパフォーマンスが悪くなかったので起用しました。

それは当たっていたと思います。日常的な、岸将太、入江、本地一貴のGK陣3人の努力、切磋琢磨する姿勢、そして清家大葵という素晴らしいGKコーチがいます。それを追うように、すみだバッファローズには松谷健吾というGKが、常にギラついて練習しています。そうしたものが結果につながっているのかなと思います。

プレゼントされた起用ではなく、仲間から奪い取ったという自信をもてているのかなと思います。

羽生は、見ての通り試合を追うごとに自分で主体性を持ってプレーできています。彼も、日常がそうさせていますね。練習でもそんな振る舞いをしていますし、育成枠の選手というよりも、一人のトップ選手だと思っています。恒平はあと1、2年の間に、アンドレシートを超える選手になります。そういう選手がいないと、世界と戦えないと思います。

グレさん（木暮賢一郎日本代表監督）、良かったら2月のポルトガル遠征に連れて行ってください。それは難しいかもしれないですが、あとは選手権次第で、ぜひアジアカップへ。僕もそこへ引き上げられるように準備したいです。

──パワープレーの質が高い。自信があるのではないでしょうか？

実は、パワープレーの練習はそんなにやっていません。前日練習のうち、3分しかやっていない。パワープレーは数的不均衡を確実に見つけるものですが、その局面でどこに優劣があるのかを知っているので、相手を観察して、守備のエラーを狙っています。そこに加えて、選手の技術があり、見る力が必要ですが、スカウティングが質を高める要因だと思います。

やり方にいくつかあるのは事実で、それを使い分けています。あとは選手の決断がすべてですね。うまくハマれば、戦略がうまくいき、選手が決断できたということです。練習ではあまりやらないですが、積み重ねがここで花開いたのかな、と。あとは、練習の時から、守備役をする選手たちが、いかにリアルにやり切れるか。攻撃をつくり込んでいるのは、守備がしっかりとデザインする作業を日常的にやってくれているので、試合で選手たちが落ち着いて狙えています。パワープレー自体が素晴らしいというだけではなく、チームとしてやっていることが機能し、結果につながったと思います。

パワープレーをつくり込んでいる時間は、他のチームよりも少ないと思っています。

選手権で連覇して最高の形でシーズンで終われるように

●フウガドールすみだ｜畠山勇気

──試合を振り返って。

負けなくて良かったです。後半の残り10分を切って2点差となり、そこから取り返せたのは、自分たちの成長を感じる部分もあります。いい流れというか、負けなかったことを全日本選手権にもつなげていけたらいいと思うので頑張ります。

──北隅監督と戦った27節を戦って。

個人としては、27試合を智さんと戦って、選手として成長できたことがたくさんあります。4枚のシステムとかもそうです。前監督の荻窪（孝）さん、須賀（雄大）さんとは違ったシステムの使い方、アイデアが多く、成長がありました。

チームとしては、良くなっている状態であとは選手権しかありません。去年もそうでしたが、優勝して終わった経験をもっています。まだ終わっていないですが、これから続けていけばこのチームはどうなるかと、少し考えることもあります。寂しい気持ちもありますが、今シーズンが終わることは決まっていますから、選手権で連覇して最高の形でシーズンで終われるようにやっていきたいです。

──入江選手や羽生選手の成長ぶりをどう感じますか？

羽生はピッチ外では高校生で、かわいい一面もあります。ピッチ内では、若手と思っていなくて、素晴らしい選手だと感じています。自分よりも優れていることがたくさんあります。見えていることも多い。練習でも驚かされることの多い選手なので、ピッチ外では高校生ですが、ピッチに入ったら若手という感じは全くありません。一人の立派な選手だと思っています。

入江も、最近試合に出て成長したなと。GKのことはよくわからないですが、あいつは声が大きければもっといい選手になると思います（笑）。声が大きいともっといいな、と。そこくらいですね。止めてくれるし、足元もすごく上手で、落ち着きもあるので、コジータ（岸将太の愛称）くらい声を出せたら、すぐに代表に呼ばれちゃうと勝手に思っています。