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作成日時:2024.02.14
更新日時:2024.02.19

「なにがなんでも昇格して、最後は仙台で」クラブ創設メンバー・今井翔の誓い|#未来へつなぐ戦い

PHOTO BY高橋学

遡ること14年前。地元・神奈川を離れ、東北の地に渡った今井翔。

移籍初年度で起こった東日本大震災、所属していたステラミーゴいわて花巻のリーグ退会、そして現在のヴォスクオーレ仙台の前身クラブの立ち上げと、波瀾万丈なキャリアを重ねてきた。

一度は契約満了を言い渡された。

それでも、ヴォスクオーレや東北への思い入れの強さは変わらず。Fリーグライセンス不交付が決まった2020-2021シーズン、古巣に戻ることを決断。2年間東北リーグを戦い、再びトップリーグへとクラブを押し上げた。

そして今度は、Fリーグ復帰のその先の景色を見るために──。

「仙台の力になりたい」

2011年から変わらないその思いをぶつけ、運命の2連戦に挑む。

※インタビューは2024年2月7日に実施しました

#未来へつなぐ戦い|特集



仙台に明るいニュースを届けるために

──入替戦のお話の前に今井選手のキャリアを少し振り返りたいのですが、2010年に関東1部リーグのブラックショーツFCから、ステラミーゴいわて花巻に加入しています。神奈川出身で東北へ渡った経緯を教えてください。

ブラックショーツでは3年間プレーしていたのですが、Fリーグの舞台に立ちたいという気持ちがあり、東京で花巻のセレクションがあることを知って参加しました。他のチームも特には考えていなかったですし、合格をもらえたので迷いなく加入を決めました。

──憧れのFリーグで1年戦って。でも、そのシーズンの終わりに東日本大震災が起きたということですよね。

震災の当日は岩手ではなく、選手権で代々木体育館にいました。大会は中止になったのですが、そこから岩手に戻るまでにもすごく時間がかかりました。たぶん2週間くらいは帰れなかったんじゃないですかね。僕の家自体は物が倒れていたくらいで大きな被害は受けていなかったのですが、沿岸部は本当に大変な事態になっていました。

──そこから残念ながら花巻がFリーグ退会となり、新たにクオーレ仙台を立ち上げた。他のFリーグのクラブに移籍を考えたりはしなかったのでしょうか?

考えなかったわけではないですね。でも、今の監督である清水誠や渡邊一城をはじめ、当時いたメンバーで「また仙台から、Fリーグを目指すチームを立ち上げよう」という話になり、自分も力になりたいと、残ることを決めました。

──そこから、2013年に湘南へ。そして翌年には再び仙台に戻ってきています。短期間で拠点を移すのは大変そうですが……。

湘南の時は神奈川の実家から通っていたので、そこまで大変ではなかったです(笑)。戻ることを決めたのはいろんな理由があるんですが、一番は僕自身が仙台の人や街も大好きだということ。地元の方とも震災の後も物資を届けたりしてたくさん触れ合ってきたので、もう一度仙台で戦い、明るいニュースを届けていきたいという思いで再加入を決めました。



一生懸命やっていたことが、花開いた5年間

──そして2016年に、今度はシュライカー大阪へ。

仙台では2年プレーしたのですが、残念ながら契約満了という形になりました。ただ、選手としてまだプレーしたい気持ちがあったので、チームを探していたところ、大阪から話をいただくことができたので、すぐに決断をしました。

──加入初年度のシーズンは、Fリーグと全日本選手権で2冠を達成と素晴らしいシーズンになりました。

大阪には5年間所属させてもらい、1年目から優勝を経験させてもらい、僕としては運が良かったとしか言いようがないです。チームメートにもすごく刺激を与えてもらって、充実した時間でしたね。

──当時の監督は、現在日本代表監督の木暮賢一郎さんでした。印象に残っていることはありますか?

僕はそれまで感覚的にプレーしていることが多かったので、頭を使って考えながらプレーすることの大切さをすごく感じました。監督が違うだけで練習内容もすごく変わりますし、ついていくのが精一杯でした。でもあの1年、木暮さんの下で練習を積めた経験は大きいですし、フットサルをより深く学べた時間になりました。

──2冠を達成した時は、これまで花巻や仙台で波乱続きだったぶん、報われたような感覚はありましたか?

退会という経験もなかなかできないですし、しなくていい経験ではあるんですけど(苦笑)。もちろんチーム状況は大変でしたけど、僕個人としてはそこまで苦労したとは思っていないです。それよりも、一生懸命やっていたことが花開いたなという感じですかね。

──2019年には大怪我も経験し、1シーズン出場できない期間が続きました。

練習中に前十字靭帯と半月板を損傷してしまったのですが、復帰まで9カ月かかりました。それまで怪我で欠場する経験がなかったし、年齢的にも、選手を続けるか続けないかは一度考えました。

でも、まだやりきれてはいなかったし、「今ここでやめたら絶対に後悔するだろう」な、と。なのですぐにやめる選択肢はなくなって、「絶対に復活するんだ」という気持ちでリハビリを続けました。



最後は仙台で引退したい

──そして2021シーズンに、3度目の仙台への加入となりますが、ライセンス不公付を知った上で、戻ることを決めたんですよね?

そうですね。ディビジョン2に降格をして、結果的にFリーグでは戦えないということが決まったあとでした。もちろん、Fリーグでプレーしたいという気持ちもありましたけど、引退をするなら、最後はヴォスクオーレ仙台で選手を辞めたいなって。クラブ事情もわかった上で、立て直しに貢献できればなという思いで、もう一度仙台に戻ることを決断しました。

──何年でFリーグに戻れるかもわからない状況で、不安はなかったのでしょうか?

2021シーズンは、新型コロナウイルスの影響もあり、もちろん不安はありました。ただ、先が見えないのは、仙台に関わる選手・スタッフも同じでしたし、今はやれることをやろうと前向きに考えるようにしていました。

──ライセンスの交付が決まった瞬間を振り返って。

練習前に、クラブの代表が来てみんなを集めて、そこでライセンスが取れたと話してくれました。みんな泣いていたし、その後リリースが出た時も、ファン・サポーターの皆さんから「良かったね」「また応援するよ」という温かい声をいただきました。

復帰後最初の開幕戦はたしかアウェイの広島エフ・ドゥ戦でしたが、勝利することができて。Fリーグに戻ってこられたなという実感が沸いた瞬間でしたね。

──そして復帰して2年目にして、ディビジョン2優勝を果たしました。好調の要因は?

メンバーは数人抜けましたけど、1年目から継続してきたことの質が上がったなと感じました。あとは、監督がより考えや思いを、細かく言語化して伝えてくれていたので、より一体感が生まれたんじゃないかなと。ホームゲームの時にたくさんのお客さんが入ってくれたことも、パワーになりました。たくさんの声援に後押しされて勢いに乗ることができましたし、逆転勝ちが多かったのも、そのおかげなんじゃないかなと思っています。

──優勝が決まった時の気持ちは?

優勝はうれしかったですけど、まだ喜びきれてはいないですね。浮かれている場合ではない、と。入替戦が本当の勝負だと思っています。



慢心することなく、チャレンジャー精神で

──入替戦に向けて今の気持ちは?

前に降格をしてしまったのは自主降格だったので、クラブとしても、僕としても入替戦の経験はないですし、これまでも映像でしか見ていないので、実際の雰囲気は行ってみないとわからない部分です。でも、次のシーズンを左右するところなので絶対に勝ちたいですし、そういう戦いができることがまず、選手としてなかなかできる経験ではないですよね。

思い切り自分たちの力を信じてやっていきたいです。

──大阪の時の優勝争いとは違う?

違いますね(笑)。

優勝争いをしていた時は、リーグ戦なので、1試合1試合、毎週勝つためにという気持ちで進んでいましたけど、今回の入替戦は2試合、土日での連戦で全てが決まるので。まだ味わったことのない緊張感がありますね。

──北海道へのイメージや意識する選手は?

北海道は、スピードや一人ひとりのクオリティが高い印象ですし、タレントもいるので、そこは特に警戒しなくちゃいけない。

個人的には堀米将太選手は、大阪時代に一緒にプレーしたので、対戦することが久しぶりですし、楽しみですね。あと、10番の鈴木裕太郎選手は、僕が膝の怪我をした際に、同じ怪我をしてSNS上で励まし合ったりもしていたので、お互い現役を続けてこうして対戦できることはとてもうれしく思います。

──北海道の水上玄太選手は「勢い的に分があるのは仙台」と話をしていましたが、やはり勢いや勝ち癖があるぶん、強気でいられるという部分はあるのでしょうか?

僕個人の意見になりますけど、周りが思っているよりも、有利だとは思っていないです。リーグ戦ではたしかに勝てていましたけど、入替戦はまた別物だというイメージがあります。もちろん、勝ち癖があるとは思いますけど、そこで相手を甘く見てプレーしたら絶対にやられてしまう。チャレンジャー精神を忘れず、慢心することなくやりたいです。

──運命の2連戦に向け、意気込みを聞かせてください。

Fリーグに参戦できない年もありましたが、復帰してこの2年でまた応援してくださる方も増え、たくさんの力をもらいました。今回の入替戦は、そういった応援してくださる方、支えてくださる方に、ディビジョン1という舞台を見せられるチャンスです。本当に、なにがなんでも2連勝して昇格するんだという気持ちでやっていきます。



ディビジョン1・2入替戦

2月17日(土)

中継開始 カード 解・実 現地中継
13:00 北海道2-3仙台
★現地中継&W解説★
実況:福田悠
解説:北原亘
解説:横江怜
ABEMAハイライト

2月18日(日)

中継開始 カード 解・実 現地中継
13:00 北海道1-4仙台
★現地中継&W解説★
実況:福田悠
リポーター:辻歩
解説:稲葉洸太郎
解説:渡邉知晃
ABEMAハイライト

※2戦合計が北海道3-7仙台となり、ヴォスクオーレ仙台のF1昇格が決定

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