更新日時:2024.06.28
【リアルインタビュー】「もう一度、チームの力に」引退撤回&電撃復帰、期待させる男・室田祐希の覚悟|STAR is BACK
PHOTO BY勝又寛晃
Fリーグに、「フットサルがうますぎる男」が“帰ってきた”。
エスポラーダ北海道・室田祐希だ。昨シーズン限りで現役引退したものの、今年4月9日、クラブを通して「現役復帰」を発表した。まさかの引退撤回。新シーズンの開幕を前にしてフットサル界には衝撃が走り、同時に、多くのファンが心を躍らせた。
昨シーズン、北海道はF1で最下位となり、F2で優勝した仙台との入替戦に敗れ、クラブ史上初の降格となった。古巣・名古屋戦で勝利を手繰り寄せた2得点を含め、シーズンで17得点と一人気を吐いたが、最後にチームを勝たせることができなかった。2月の入替戦後、取材エリアでは「俺から言うことはなにもない」と、苛立つ姿があった。
心残りがあるんじゃないか──。
周囲のそんな心配をよそに、室田は約1カ月後の「Fリーグオールスターゲーム2024 TOKYO」でいつも以上に無邪気にボールを追いかける姿を見せた。誰よりもフットサルを楽しみ、そして観客を魅了する生粋のフットサル小僧はその日、現役最後のゴールを奪い、そして、見事MVPにも選ばれ、笑顔でピッチを去った。
しかし室田は、クラブの危機に際して、ピッチに戻ってきた。
「魂の引退撤回!」「待ってました!」「うれしすぎる!」「これは熱い!」「カッコ良すぎる」「昇格請負人!」「漢気!」「チームを救うためって、最高の男じゃん!」
クラブのリリースを受け、SNS上では復帰を喜び、期待する声であふれた。それこそが、室田の価値だ。なにかやってくれる。ピッチで“魅せて”くれる。そして実際、その通りになった。室田は開幕から4試合で5得点、チームは4連勝、単独首位に立っている。
今シーズンこそ、室田はチームを勝利へ導けるか。その覚悟と決意を聞いた。
取材=青木ひかる、伊藤千梅
文=伊藤千梅
※取材は5月10日に実施
悩み抜いて決めた現役復帰
──昨シーズンで一度、現役引退を表明したものの、撤回して現役復帰。なぜでしょうか?
「Fリーグオールスターゲーム2024 TOKYO」ではMVPもいただいて、現役生活の最後をきれいに飾れたと思います。ただその日、北海道が来シーズン、1年でF1に昇格できなければチームの存続が危ういという話を聞きました。
引退記念Tシャツまで作ってもらいましたし、本当に最高の形で終われたので、引退撤回は数日間、悩みました。それでも「もう一度チームの力になれたら」という気持ちが強く、前GMの(水上)玄太さんに電話で自分の思いを伝えて、復帰させてもらうことにしました。
──復帰発表に対して、SNS上ではファン・サポーターの方たちのポジティブな反応であふれていました。
このタイミングで復帰するのは早いかなとは思っていました(苦笑)。でも、批判的な意見を受け入れる覚悟で決断したので、誰になにを言われてもいいと思っていました。そんななかで復帰を歓迎してくれるコメントばかりだったのは素直にうれしかったですね。
──誰かに相談しましたか?
いえ、自分1人でどうしようかと悩んでいました。
──決意した決め手はあったんですか?
もともと、北海道リーグでプレーしようとは考えていましたし、フットサルを続けたい思いはありました。なので最後はその気持ちのまま、現役復帰を決めました。
危機感が足りなかった昨シーズン
──改めて、昨シーズンはどんな思いで戦っていましたか?
シーズンが始まる時にはすでに引退を考えていたので、悔いが残らないようにやりたいと思いながらプレーしていました。
──室田選手自身は17ゴールと活躍した一方で、チームは最下位に。どんな気持ちだったのでしょうか?
個人的には点は決められましたが、チームはなかなか勝てない状況が続いていました。今思えばシーズンの最後のほうは特に、練習の質も、危機感も足りないと感じていました。「本当にF2に落ちるかもしれない」という当事者意識がもっと一人ひとりにあれば、結果は違ったかもしれません。
──練習の質とは、具体的にどのような部分ですか?
強度ですね。試合もそうですけど、相手に負けないという気持ちの部分が足りていないとずっと感じていました。みんなが強度高くやる意識をもっていればいい練習はできると思うので、選手全員に課題があったと思います。
──今シーズンは練習強度が改善されていますか?
監督を含めスタッフ陣も変わっているので、みんなの意識次第です。そこはベテランの選手が先頭に立って積極的に引っ張っていかなければいけないと思っています。
──室田選手から働きかけていることはありますか?
特にありません(笑)。僕はおとなしくして、聞かれたら答えるくらいです。第一印象が怖いと言われるので、みんなあまり話しかけて来ないのですが……(笑)。
──今のチームは、室田選手が若手の頃との違いを感じますか?
僕らが若手の頃は、練習中に年上だろうがもっと熱くやり合っていたように感じます。僕も試合中になったらファウルすれすれの激しいプレーをしていました。
でも例えば今シーズン、スペインからペスカドーラ町田に戻ってきた(毛利)元亮や、名古屋オーシャンズの(甲斐)稜人はすごくいい選手だと思います。僕は彼らが18歳の時に町田で一緒にプレーしていましたけど、あの2人はバチバチ感や年上に気を使いすぎずに自分の意見を伝える部分が共通しています。そういった意識やメンタリティについては今のチームの若手にも見習ってほしいですね。
──あまりとがった選手はいない?
そうですね、淡々とプレーする選手が多い印象です。ボールを奪って吠える選手も最近はいないですし、もっと気持ちを前面に出す選手がいてもいいと思います。熱い気持ちがないわけではないと思うので、練習でも試合でも、ピッチ上で見せてほしいですね。
子どもたちのために1年で再びF1へ
──室田選手のプレーを見ていると「楽しむこと」や「人を楽しませること」を大事にしていると感じます。どんな時がフットサルをしていて楽しいですか?
やっぱり、ゴールした時ですね。点を決めるのも、その得点を喜んでもらえるのも楽しいです。観客の盛り上がりもゴールしないと生まれないものだと思うので。
昔はそんなに余裕がなかったですし、自分のことで精いっぱいでした。でもある程度の経験を重ねた時から「人を楽しませたい」という気持ちに変わっていきました。自分自身、ボラや、名古屋でプレーしたリカルジーニョのプレーを見て、自分も楽しませてもらっていたので、いずれそういうプレーヤーになりたいとは思っていました。
──室田選手にとって「エスポラーダ北海道」とはどんな存在でしょうか?
僕が高校生の時からお世話になってきたクラブです。今では、スクールや応援してくれている北海道の子どもたちから「エスポラーダに入りたい」という声も聞くので、彼らのためにも今シーズンでF1に昇格しないといけないですね。
──今シーズンは入替戦がなくF2優勝チームが自動昇格となるのでチャンスだと思います。一方で、主力選手が抜けた影響もあるでしょうか。
(関口)優志が抜けたことは痛いですけど、みんな各々の目標があっての判断なので、そこは尊重したいです。宮原(勇哉)と三浦(憂)が帰ってきましたし、戦力アップもしています。僕自身、去年よりも体はつくれているので、ドリブルだけでなくディフェンスのプレスやトランジションの部分、あとは走ることを意識してやっていきたいです。
──最後に、今シーズンはどんな1年にしますか?
チームを昇格させることが一番の目標です。ただし、F2でそんな簡単に勝たせてもらえるとは思っていません。だからこそ本当に、目の前の試合を大事にしたい。去年は結果的に悔いが残ったシーズンだったので、今年はトレーニングを含め、悔いを残さないシーズンにしたいと思います。
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