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作成日時:2024.07.29
更新日時:2024.07.29

【緊急インタビュー】日本人GKとして初のスペイン挑戦 日本代表・須藤優理亜の覚悟「W杯でいい成績を残すために」

PHOTO BY伊藤千梅

フウガドールすみだの守護神・須藤優理亜は7月15日、世界最高峰の一つ、スペインリーグへの移籍を発表した。リーグ戦の真っ只中に決断を下した理由は、2025年にフィリピンで開催される「FIFAフットサル女子ワールドカップ」だ。女子フットサル史上、初めて開催される“フットサルの祭典”は、4年間フットサル日本女子代表として活動してきた彼女にとって、とても大きな目標となった。

その目的を達成するために選んだのが、よりハイレベルな舞台だ。「W杯で少しでもいい成績を残すために」。国内において、須藤は当然、トップレベルだ。しかし、その実力が世界で通用するかどうか、確証はない。日常的に“世界レベル”に身を置き、各国の代表選手たちと研鑽することは、世界に近づく第一歩だと、彼女は考えた。

須藤が下した決断と、その覚悟とは。

取材=青木ひかる、伊藤千梅
文=伊藤千梅

プロ契約でスペイン1部へ

──7月15日にスペインへの移籍を発表しました。海外移籍を考え始めたのはいつ頃からですか?

2018年のユースオリンピックに出場した時にポルトガルやスペインと対戦して「またこの人たちと一緒にやりたい」という考えが頭のなかにずっとありました。2年くらい前に代表でスペインに遠征した時にその気持ちがまた出てきて、来年のワールドカップが決まったことで「行ったほうがいいのではないか」という思いが強まりました。

──ワールドカップの開催が後押しになって、練習参加に行ったそうですね。

今年3月に代表でポルトガル遠征に行った際に、四井(沙樹)と一緒に残って、そのままスペインへ移動しました。2チームの練習に参加して、約1カ月くらいいました。

──そこから移籍へと踏み切った経緯を教えてください。

実は、移籍先のトレブランカ・メリリャというチームは練習参加に行っていないんです。向こうで別のチームの練習に参加している時に連絡をもらい、プレーの映像を送りました。このチームにはブラジル代表(FIFAランキング1位)の選手がいるので、W杯で少しでもいい成績を残すために、日常的に各国の代表選手たちと練習を積んで試合に出ることを一番に考えて決断しました。

──移籍の決め手は?

海外でやりたいとは言っても、1部でないとやる意味がないと思っていたので、その点は大きかったです。あとは、日本に比べて試合数が多いことと、プロ契約できたことです。事前に、「プロでないと行かない」とは伝えていました。それと、先ほど言ったように、世界トップレベルのブラジル代表の選手がチームに何人もいることも決め手になりました。

──移籍について誰かに相談していたのですか?

6月までスペインにいた四井にはいろいろと相談に乗ってもらいました。すみだのチームメイトは練習参加に行った時点で予想していたと思いますが、リーグ戦の最中だったのでキャプテンの勝俣(里穗)以外には伝えていませんでした。仮に移籍の話がうまく進まなかった場合にメンタルが落ち込む可能性もあったので、みんなには契約内容が固まってから言おうと思っていました。なので、伝えたのは最後の試合の1週間前くらいでした。

──スペインと日本の環境はどう違いますか?

日本の選手の多くはフルタイムで働いていますし、月謝を払ってプレーしているチームもあるので、環境がいいとは言えません。スペインだと給料が出ますし、試合や自分のパフォーマンスが生活にも関わってくるという意識の面では差があると思います。難しいですが、リーグの環境が良くなれば、選手の意識も変わってくるのかもしれません。私がスペインから海外の環境などについて発信することで、話のきっかけになることも必要ではないかと感じています。

──実力的にも差を感じますか?

そうですね。特にフィールドプレーヤーは海外の選手のほうが個の技術はあるように感じます。一つのパスやドリブルも、海外の選手のほうが優れている印象です。

──そうした選手と練習から対峙することで、GK技術の向上が見込めそうですね。

練習参加した時に感じたのですが、シュートスピードもボールの回転も全然違いました。これは、日常的に経験しないと普通に止められるようにならないな、と。そこは成長できるのではないかと思っています。

──言語の不安はありますか?

まったくしゃべれないですが、なんとかなるかなとあまり不安はありません。これまでスペイン語は勉強していたのですが、ブラジルの選手が多いのでポルトガル語が飛び交っていると聞いて、もう現地に行ってから頑張ろうかな、と(笑)。やる前にどうしようと迷うのではなく、直感でいっちゃうタイプなんです。

──スペインで挑戦したいことはありますか?

あくまで考えていることですが、空いた時間でYouTubeを始めようと思っています!

ユース五輪の銀メダルが分岐点に

──須藤選手がGKを始めたきっかけは?

小学校2年生からサッカーを始めて、キーパーをやりました。初めてゴールを前に立った時に、以前、バレーボールをやっていたこともあって顔の目の前に飛んで来たボールを怖がらなかったことが良かったみたいです。監督に「お前はキーパーだ」と指名されて、嫌とも言えずにそれからずっとキーパーをやってきました。やりたくて始めたわけではありません(笑)。

──それでも続けてきたのですね。

高校時代にサッカーとフットサルの両方をやっていた時に、少しフットサルをやめた時がありました。でも、みんなとフットサルをしていることが楽しかったから、親にお願いしてもう1回やりました。みんなといる時間が好きで、毎日が楽しくて続けていただけだったのに、なぜかここまできちゃいましたね。

──高校3年生の時には、ユースオリンピックにも選ばれました。

それまでは楽しさだけでボールを蹴っていましたが、ユースオリンピックがきっかけでフットサルを真剣にやろうと思うようになりました。当時は代表になる意味も、監督やスタッフの名前も誰一人わからなくて、その時に監督だった木暮(賢一郎)さんの名前の検索から始まりました(苦笑)。あとは楽しんでいたら訳もわからず2位になってしまって、その時に「これ、真剣にやったらおもしろいかもな」と思ったんです。「日本代表」として世界で銀メダルを取れた経験は大きかったと思います。

──それが今につながっているんですね。

今はワールドカップがあるので、そこに出たいという思いでやっています。競技を続ける上で、日本代表に入りたいという思いはその時から変わらずにもっています。


──日本代表への思いが芽生えてから、競技面で意識していることはありますか?

食事には気を遣っています。キーパーにはどっしりと構えて止めるタイプもいますけど、自分は余計なものがなく軽いほうが跳べる感覚があります。だから基本的に質素なものしか食べません。普段はグルテンは取らず、お米も1グラム単位で測って、多くても150グラムに調整しています。油も使いません。一人で食べるご飯は、魚はなんでも食べますけど、お肉は牛の赤身か鳥だけ。ただ、友達とご飯に行く時は気にせずに食べますし、オフや試合の次の日はグルテンを解禁して好きなものを食べるといったメリハリはつけています。

──すごく徹底していますね!

ただ、3月にスペインに行った時は自分で調理ができずグルテンも油もたくさん取っていたので、帰ってきた時に体が大きくなってしまいました。「やばい、ユニフォームちょっと小さいかも」って(笑)。ホームゲームまでにどうやって戻すかをずっと考えていました。ちなみに移籍先では自炊ができるみたいなので、そこは心配していません。

──須藤選手のなかで適性の感覚があるんですね。

そうですね。体重が減りすぎている時は調整します。絞りすぎた時は一時期、体脂肪7%までいきましたが、今はそれよりも5kgくらい増えています。でも体は重くないですし、練習で感覚をつかみながらやっています。試合で最高の状態にもっていけるように調整しています。

一番印象に残ったラストマッチ

──すみだでの5年半はどうでしたか?

すみだに来るまでは一度も基礎技術を教えてもらったことがなかったので、体の柔らかさと反応スピードだけで止めていたのですが、この5年半で少しは基礎が身についたと思います。あとはキーパーを使ったプレス回避やキーパー攻撃など、少しは足元も上達したかなと。

──昨シーズンは、上位リーグか下位リーグかが決まる戦いで負けてしまいましたよね。

引き分け以上で上位リーグにいける試合で、負けて下位リーグになってしまい、その時は絶望的な気分でした。本当に泣きすぎて死ぬかと思ったくらい、泣きました。昨シーズンはキャプテンだったことと、その試合は勝俣が怪我で不在だったので、勝って一緒に上位リーグを戦いたい思いが強かったですし、入団してから一番落ち込みました。

──すみだに入って印象に残っている試合は?

一番は、おとといの試合(神戸戦)です。去年は2-7で大敗していますし、アルコには日本リーグに入ってから勝ったことがなかったので、個人的には、移籍する前の最後のホームで勝てたことが良かったです。

──試合後に勝俣選手と抱き合っていました。須藤選手にとってキャプテンはどんな存在ですか?

今、近くにいるので話しづらいですけど(笑)。お姉ちゃんみたいな存在ですかね。19歳で上京して、東京のこともフットサルのことも、なにもわからない時に、一番近くにいて支えてくれたのが勝俣でした。

(勝俣)あの頃はかわいかったなー(笑)。

なんか、隣で言ってます(笑)。

──勝俣選手はさみしいですか?

(勝俣)えー。

えーって言っちゃってるよ(笑)。

(勝俣)さみしいですね、きっと。最近はずっと一緒にいたので想像できません。

──移籍の話を聞いた時はどんな気持ちでしたか?

(勝俣)最初に行きたいと聞いた時から「本当に行くんだろうな」と感じていたので、特に驚きはありませんでした。去年くらいから、来年はいないんだろうとは思ってはいました(笑)。なので、異国の地で一人でがんばれ!と思っているくらい。でも神戸戦で試合終了の笛が鳴った時には「もう一緒にやることなーい」と思って、ジーンときました。

──勝俣選手、ありがとうございます。最後に、須藤選手のすみだへの思いを聞かせてください。

正直、すみだがこんなに熱くて一体感のあるチームだと思って入ったわけではありませんでした。なので入った当初は戸惑いましたが、5年も経てば一体感もわかるようになってきました。みんなでワイワイする日常がなくなるのはさみしいです。でも、キーパーの庄子(彩)も、渡邉(純子)もいますし、ホームであんな熱い試合ができるから、私はなんの心配もなく出ていけます。今年こそは上位リーグにいってスポンサーさんに恩返しをしてほしいですし、私も新天地で頑張るので、一緒に頑張れたらと思っています。

 

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