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作成日時:2024.09.27
更新日時:2024.09.28

【インタビュー】開幕敗戦から4カ月で示した女王の真価。首位奪還の立役者が「みんなでつかんだ勝利」とあえて強調した理由(倉持杏子/バルドラール浦安ラス・ボニータス)

PHOTO BY伊藤千梅

女子Fリーグ4連覇中の“絶対女王”バルドラール浦安ラス・ボニータスは今シーズン、開幕戦でまさかの敗戦を喫した。あれから約4カ月。無敗のSWHレディース西宮をレギュラーシーズン最終節で下し、首位に返り咲いた。

この試合で2得点を挙げて勝利の立役者となったのが倉持杏子だ。誰もが認めるこの試合のMVPでありながら、彼女は取材中に自分の得点シーンを一度も振り返らなかった。

「最後守り切れたのはパワープレーの守備セットが頑張ってくれたから」「ホテルを取ってくれたスタッフさんや、14人全員のケアをしてくれたトレーナーさんの存在があってこそ」

何度も何度も、自分以外の話を熱く語る姿は、まさに“杏子さん”らしい。

実は、私と杏子さんはかつてチームメイトだった。共にサッカーをプレーしていた6年前、スフィーダ世田谷で切磋琢磨した当時から“先輩”の人柄は変わらない。

常に周りに気を配り、感謝を伝え、人の良いところを見つけて褒めるのが上手。真面目なのに抜けたところもあって、めちゃくちゃおもしろいキャラクター。送別会で一緒にネタを披露したこともあるし、自主練にも付き合ってもらった。私が退団する時も、最後にご飯に連れて行ってくれた。サッカーのことも、そうではないことも、いろんなことを教えてもらった杏子さんは今、あの頃以上に勝負にこだわるストイックさでフットサルと向き合い、常勝軍団に不可欠な選手として、凛とした姿を見せている。

そんな彼女が「ありきたりかもしれないけど」と前置きして話した「みんなでつかんだ勝利」という言葉は決してありきたりではなく、胸の奥にズシンと響く重みがあった。

自分のことより人のこと、チームのこと。そんな杏子さんが過ごしたこの4カ月とは。

インタビュー・文=伊藤千梅
編集=本田好伸



初戦で負けてから、今日のために準備をしていた

──レギュラーシーズン最終節を勝利で終えて、率直に今どんな気持ちですか?

開幕戦で負けてからずっと、この日を見据えて準備してきました。敗戦後に一度、チームみんなで今の自分たちにはなにが必要かを話し合い、目線をそろえてここまで戦ってきましたが、西宮に勝たないと「初戦の負けがあったから」とは言えないという思いもありました。それに、今日だけでなく、勝ち点を取り続けないことには1位争いができないと思って必死に戦ってきた4カ月間だったので、みんなと喜べてうれしいというのが素直な感想です。

──開幕戦はまさかの敗戦でした。

初戦は(加藤)正美さんが監督をしているアルコ神戸に負けて、チーム内の雰囲気は一度、悪くなりました。私自身、シーズンの開幕戦を負けでスタートすることが、ラスボニに入ってから初めてでしたし、多くの選手が今までそうした経験をしていませんでした。

一生懸命やっているけど勝てなかったという状況のなか、チーム内でモチベーションを保つことが難しかった部分はあります。だからみんなで本音をぶつけ合う時間をつくりました。その話し合いをした上で、勝たないと自信にはつながらないので、一戦一戦大事にしていこうと話してここまで進んできました。

ただ、初戦の黒星で7位スタートになったので、どのチームと戦う際にもチャレンジャー精神で挑めたことは良かったです。4連覇しているからこそ「この試合に勝ったら順位が上がるぞ」と上を見て戦う状況は久しぶりでしたし、それが今の自分たちには必要でした。一人ひとりが自分と向き合って、現状を変えないと勝てないという気持ちでやってこれたことは良かったと思います。

──チーム内で本音をぶつけ合った時は、どんな話をしたのですか?

どういう考えで戦っているのかをお互いに知るために、監督もスタッフも一緒になって話しました。プレーや私生活について、普段なんとなく思っているけど見過ごしてきたことや、言うほどでもないと思っていたことを一度、正そうとできた時間でした。毎年選手も入れ替わっていくなか、年齢や経験値によって立場も変わっていきますけど、改めてそれぞれが「自分は今こういう役割だ」というものをはっきりと理解できたように思います。

自分で言えば、今までは正美さんや、今はスタッフの(平井)佑果さん、スギさん(杉山藍子)、アニージャ湘南の(田中)千尋さんなど、引っ張ってくれるメンバーについていっていましたが、在籍5年目になりました。私と一緒に入った選手や、それ以前からいる選手はもっと在籍年数が長くなっていくなかで、「次は誰がリーダーシップを発揮するのか」という課題に、きちんと向き合うことができた時間だったと思います。

──今までの4年間と比べて、今年はどんなチームですか?

私がラスボニに入った時は、日本代表で女子フットサル界を引っ張ってきたメンバーや、リーダーシップを発揮できる経験値の高い選手が多かったと思います。だから、さっき言ったような先輩たちに、若いメンバーも頼っている部分がありました。

今年に入ってからどこかでぶつかることを避けていた気がしますし、その話し合いが終わった後のほうが、自分としては去年までのように戻った感覚があります。今は、雰囲気やコミュニケーションの量、試合に向かっていく時の温度感も含めて、リーダーシップを発揮してくれていたメンバーがいた時のような印象です。

それに加えて、5連覇を目指すプレッシャーもあったかもしれません。いろんな要素があってそうなっていたとは思いますが「開幕戦に負けたおかげで」と、やっと言えるようになって良かったです。



フィクソ出身だから感じる1点の重み

──レギュラーシーズンを終えて首位に立ちました。

この第10節、11節、今シーズン初めての連戦は総力戦になることはわかっていました。北海道戦も楽ではなく、得点をうまく積み重ねられなかったですけど、メンバー全員で3セット回しで戦えました。西宮戦も激しい試合になることはわかっていた上で、それぞれが自分のできることや役割を全うできたと思います。そこには、選手同士の信頼がありました。

だから、ありきたりかもしれないですけど、みんなでつかんだ勝利だと、本当にそう思っています。細かいかもしれないですけど、スタッフの存在も本当に大きかったです。

ホテルを取ってくれたり、連戦を考慮してタクシー移動の判断をしてくれたり、チェックアウト時間を遅らせてくれたり、補食を用意してくれたり……全部、当たり前のことではありません。それに、この2日間でメンバー14人全員がトレーナーさんのケアを受けているので、30回近く、ものすごい時間をかけて送り出してくれました。

──まさにチーム全員ですね。

そう思います。それとやはり、選手同士の信頼関係は本当にすごいと思います。普段、練習からバチバチやり合っているからこそだと思いますし、ポジション争いをしている選手であっても、お互いに気持ちよく送り出せる関係があります。今日も、なる(平井成美)が最初に出ていましたが、以前であれば自分がポジション争いをしている選手に前向きな言葉をかけられなかったかもしれません。ラスボニのように激しい競争があるチームではなおさら、そうした言葉をかける関係性が不要な場合もあると思います。だけど私が出場する時に、なるやシブ(澁川鈴菜)など、争っている仲間が背中を押してくれる。そんな関係性でいられることがうれしいですし、それが今のラスボニの強さだと思います。

──選手同士の信頼関係こそが強さ。

はい。今日の試合、最後に守り切れたのは(伊藤)果穂さんたち、相手のパワープレーの時間帯で出ていたセットが守備を頑張ってくれたからだし、1点で抑えてくれたからです。自分は得点を量産できる選手ではないし、今回は2点を決められましたけど、みんなでつかんだ勝利ということを本当に実感しています。もともとフィクソをしていて今は前線でプレーしているからこそ、1点を守ることの重みをより感じていますし、逆に前からの守備や得点で貢献するという意味でも頑張らなきゃいけないと感じた試合でした。

──ファイナルシーズンは、5連覇に向けてどんな意識で戦っていきますか?

上位リーグでは、どのチームも同じように戦わせてくれる相手はいないと思います。それに、チーム内でもこれからさらにポジション争いが待っています。

この2、3週間くらいは2つ以上のポジションをやる選手や、新しい組み合わせの練習もたくさんしてきました。そういう時間を大事にして、どの相手に対しても、いつもやっていることをやれば大丈夫と思えるくらいまで突き詰めていきたいです。そして、今の順位は一度忘れて、自信をもって戦えたらいいと思います。どの試合も接戦になると思うので、構えるよりもどんどんチャレンジする戦い方をしていきたいです。



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