更新日時:2024.12.11
「俺がやらなあかん」進化を遂げる“なにわアタッカー”、清水寛治が示す5年目の覚悟
PHOTO BY高橋学、伊藤千梅
【Fリーグ】バルドラール浦安 3−4 シュライカー大阪(11月30日/バルドラール浦安)
レギュラーシーズンも終盤を迎え、各チームがそれぞれの目標に向け、しのぎを削る戦いを見せている。
そんななか、9位のシュライカー大阪がバルドラール浦安相手に、4−3で逆転勝利。第6節から続いていた首位チームの無敗記録を、「10」で止めた。
2ゴール1アシストをつけたエース・加藤翼の活躍の裏で、“影なるMVP”として勝利に貢献したのが、Fリーグ5年目を戦う清水寛治だ。
「個人のところで体を張って守る、一歩頑張って味方を助ける。仲間のために全員が動けた試合でした」
その言葉を誰よりも体現していたの清水であり、二度の勝ち越しを許しても折れないメンタリティでゴールを狙い続けた。
そして、残り3分でパワープレーから3−3に追いつく同点弾をマーク。今シーズン9得点目を決め、2021-2022シーズンの8ゴールを超えて、自己最多得点記録を更新した。
「正直“中堅選手”の役割とか、そういった部分はあまり考えられていませんでした。でも、もう俺がやらなあかんのやな、と」
劇的勝利から、3日後には約2年ぶりの日本代表入りを叶え、キャリアの岐路に立つ清水がこの1年で実感する心境の変化とは。
新体制での刺激と葛藤
2023-2024シーズン6位でリーグ戦を終えた大阪は、6年間チームを率いた永井義文氏が退任。名古屋オーシャンズサテライト、Fリーグ選抜、アグレミーナ浜松の監督を歴任した高橋優介氏が新たな指揮官に就任し、新シーズンを迎えた。
新監督が示すコンセプトとしては、ボールを保持しつつもより攻撃的に。堅守が強みであった昨シーズンとは変わって、選手たちは守備も含め「得点を奪うためにプレーをする」こと、そして「ピッチの中で自分たちで選択する力」が求められている。
「ボールを大事にはしますけど、空いていればどんどん前へ。勝つには得点が必要だという“フットボールの原理原則”をしっかり落とし込んでくれる監督です。パフォーマンスの良し悪しは周りが評価することなので、自分でいうことではないかもしれませんが、今シーズンは練習するたびに『フットサル、うまくなっているな』と感じています。毎日刺激が多いです」
アラをとピヴォをこなし、体を張った守備も特長の一つ。自身を“なんでも屋”と話す清水は、これまで以上にプレーの引き出しが増えていく充実感を口にする。
一方、開幕前のオフ期間で、キャプテンとして攻守の要を担っていた齋藤日向や、スピードを生かした推進力の高さがウリの計盛良太が、他クラブに移籍。さらに出場時間こそ少なかったものの、決定力の高さをもっていた野村悠翔の現役引退と、清水と同じ“1998年生まれ”の世代がそろってチームを離れた。
代わって自分よりも下の若手選手がサテライトチームから複数名加入し、顔ぶれが大きく変わることに。
オーシャンカップは3位と躍進したものの、リーグ開幕戦でのペスカドーラ町田戦では、1-7で大敗。さらに得点源の加藤翼の負傷離脱となり、不安要素が重なるシーズンスタートとなった。
監督からの言葉で強まった自覚
エースの離脱に伴い、点を動かすことのできる清水への期待値は自ずと上がる状況ではあった。それでも、清水はあくまで「自分らしさ」を大事にしていたと振り返る。
「僕は翼くんにはなれないし、翼くんも僕にはなれない。だから、“ピヴォっぽい”動きをいつもよりたくさんしようとか、代わりにたくさんゴールを量産しようという考えではなかったです」
連敗が続き「何かが足りない」現実と向き合い始めたチームは、解決策を見つけるために選手間のコミュニケーションが増え、徐々に上向きに。そのなかで、清水も「自分ができるプレーで、100%以上の力を出す」ことに専念した。
「結果論にはなりますけど、勝てない危機感から『全員がもっとやらないといけない』という意識につながったと思います。そこからは、今日の浦安戦のように一人ひとりが120、130%を第1ピリオドから出せれば、勝てるチームになってきました」
しかし中位同士の争いも拮抗し、現状は12チーム中8位という立ち位置。上位リーグに進出するには、最低2つは順位を上げなければならない。
11月2日の第13節しながわシティ戦。開幕と同じ1-7というスコアで敗れたあと、高橋監督に一人呼び出され、こんな言葉をかけられたそうだ。
「『自分がどういう立場か、わかっている?』と。怒り口調とかでは全くないですが、そんな話をされました。年齢的には“中堅”という自覚はあったんですが、キャラでいうと“若手枠”というか……。正直自分がチームを引っ張るというのは、あんまり考えられていませんでした。でももしかしたら、そういう選手になってきているのかもしれない。そうしたら、『チームを勝たせる。そういう役割を担うところまできているんだよ』と。ハッとさせられました」
たとえ全員が100%以上を出せていないコンディションであっても、「勝利」という結果をもぎ取る。そのためには、自分がこれまでよりも前のめりなる姿勢が必要なのかもしれないと、清水は監督からの言葉を反芻する。
「昨シーズンも、忍さん(相井忍、2022シーズンまで大阪に在籍)から『お前、点取れへんな!』と連絡が来たりしていましたが、『そんなにバンバン点を取るタイプじゃないしな』と思っていた節がありました。でも、そうやって逃げていてはいけない。俺がやらなあかんのやな、という気持ちに今はなってきています」
9日から18日には、2年ぶりの日本代表活動に参加。終了直後の21日には6位・湘南ベルマーレ、29日には7位・フウガドールすみだと、順位の近い相手との“6ポイントマッチ”を控える。
「とはいえ、やっぱり『自分が点を取る』ことにこだわるつもりはありません。ただ、僕がゴールを決めることが、その試合に勝つために求められているのであれば、それをやる。アシストでも、チャンスメークでも、守備でも、勝つために1試合を通して“戦える”ことが強みなので、そこは譲らずに、残りのリーグ戦に挑みたいです」
個人としてもチームとしても「勝負の12月」を乗り越えた先、26歳の“なにわアタッカー”はさらなる進化を遂げることができるか。
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