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作成日時:2024.12.13
更新日時:2024.12.13

「準優勝の悔しさを、二度と味わいたくない」。来日16年目の悲願へ、己を超え続ける“44歳守護神”の生き様(ピレス・イゴール/バルドラール浦安)|月間MVP受賞インタビュー

PHOTO BYFリーグ

10・11月のFリーグ月間MVPは、バルドラール浦安のピレス・イゴール選手が受賞。10月の中断明けから8試合中3試合でクリーンシートを達成しただけでなく、得点やアシストなど攻撃的なプレーでも勝利に貢献。首位を走るチームを最後尾から支える44歳の超ベテラン守護神・イゴール選手の受賞インタビューをお届けします。

インタビュー・文=伊藤千梅(SAL)
編集=本田好伸(SAL)

※インタビューは2024年12月6日に実施しました



息子が喜んでくれた今季初得点

──10・11月のFリーグ月間MVPの受賞おめでとうございます!率直なお気持ちはいかがですか?

すごく光栄です。44歳でもトップリーグで戦えて、いいパフォーマンスを見せられて本当にうれしいです。体はきついし、疲れるけど……もうちょっと頑張りたいです。

──チームメートはどんな反応でしたか?

チームメートは「今日もすごかったね!」と試合のたびに優しい言葉をかけてくれます。もちろんうれしいですが、僕の気持ちとしては「いい結果を出せるのはみんなのおかげだよ」と思っています。(長坂)拓海や(石田)健太郎、レアンドロ、(田中)晃輝、他のみんなそうです。GKは最後の壁ですが、僕の前で全員が守備を頑張ってくれるおかげです。

──第14節、第15節と2週連続で週間MVPを受賞しました。第14節のしながわ戦では38本のシュートを受けて無失点に抑えていますが、なぜそんなに止められるのですか?

わかりません(笑)。もちろん、どの試合も勝たないといけないですが、順位が近い相手との試合だったので、モチベーションはいつも以上に高かったと思います。すごく集中していたし、絶対負けたくないという気持ちでした。

その日は最初からいいセーブができました。2回、3回と止めていくうちにどんどん気持ちが乗ってきて、もっといいパフォーマンスができると自信が出てきました。

ベンチの選手たちの戦う気持ちも見えましたし、みんなが最後まで頑張ってくれて勝つことができたので良かったです。この試合が、今シーズンで一番いい思い出です。

──続く立川戦では今シーズン初ゴールも決めました。

昨シーズンから攻撃にもこれまで以上に参加するようになっていますし、それはすごく楽しんでいます。でも、僕のシュートはそこまで強くありません。立川戦もどこのスペースが空いていて、どこで数的優位をつくるかを考えながらプレーしていました。

あのシーンは自分がフリーになったので「シュートしかない!」と思って打ったら、とてもいいコースにいきました。得点の瞬間は「入った!」と、自分でも信じられませんでした(笑)。

──ええ……シュートが強くないって(笑)。

強くはないですよ。あの試合は息子がスタンド席から見ていたのですが、初めて目の前でゴールを決めることができましたし、すごく喜んでくれました。僕も試合中に泣きそうになりましたが「我慢、我慢」と思ってこらえました。本当に最高の気分でした。

──チームメートもすごく喜んでいましたね。

みんな毎日一緒に練習して戦って、いい時も悪い時も、怪我をした時も、みんなでサポートし合っています。あのシュートもすごく喜んでくれて、感謝の気持ちでいっぱいです。

──44歳でコンディションを維持するために気をつけていることはありますか?

食事には気を遣っています。本当は筋トレも毎日やりたいけど、難しいです。でもだいたい週5日くらいはやっています。サプリメントもたくさん飲んでいるし、ケアはマッサージを入念にしてコンディションを整えています。それによって、選手としてのキャリアが少し延びていると思います。



神様がきっと守ってくれると信じている

──イゴール選手が試合で意識していることはありますか?

試合の前には、いろんな場面をイメージします。試合の時に素早く反応できるように「ここからボールが来たら、こんなプレーをしよう」と頭に入れています。

あとは試合中のカバーリングも、常に立ち位置を考えないといけません。攻撃もどのタイミングで参加するのか、いつボールが来てもいいように準備しています。パスミスをしてしまったら失点につながるポジションだからこそ、いろいろなことを意識しています。

──集中して試合に臨むためのルーティーンは?

たくさんあります。試合前にはコーヒーを飲みますし、だんだんおじいちゃんに近づいているので、去年からバナナを食べています(笑)。

ロッカールームを出る前にはお祈りをして、ピッチやペナルティエリアに入る時は右足から入ります。試合前はポストを触って、もう一回お祈りをします。

日本でルーティンをする人がどれだけいるかはわからないですが、ブラジルではけっこうみんなやっています。それをしないと自信がなくなるわけではないですが、しっかりやれば神様がきっと守ってくれると信じています。

──8年間プレーしてきた日本代表への思いも聞かせてください。

とても特別な時間でした。もちろん、日本代表は選手としてなによりも誇りですから、入りたい気持ちはあります。国の代表としてプレーできるのはとても光栄なことです。

でも、監督やスタッフはいろんなことを考えないといけません。僕は44歳で、次のW杯では48歳。どうなっているかわからないし、まずは1年ずつ考えないといけません。

代表には入りたいし、活躍したいと思っていますが、W杯に合わせたサイクルがあって、若い選手が成長しないといけないことも理解しています。



優勝できるかどうかは自分たち次第

──浦安は首位を走っていますが、チームが好調な理由は?

毎年、スタートからいいシーズンにしたいという気持ちは同じですが、いつもはどうしても年間で波が生まれてしまいます。でも今シーズンはあまり波がありません。

戦術も体現できていて、連係して守れているのでGKも仕事がしやすい。チームとしても自分としてもいいパフォーマンスを出せて、素晴らしいシーズンを歩んでいます。

──なぜ「波がない」状態をつくれているのでしょうか?

まずは、小宮山さんの下でしっかりと練習ができているし、スカウティングしてくれたことをみんなも勉強して、試合に向けていい準備ができています。

あとは、昨シーズンと比べても活躍している選手がたくさんいます。若手で言えば晃輝は今シーズン一番成長していると思いますし、カズ(菅谷知寿)も初めて代表に選ばれました。柴山(圭吾)や空(涼介)、(吉田)圭吾もプレー時間が増えています。

活躍している選手が一人だけの状態だと、勝ったり負けたりしてしまいますが、いろんな選手が活躍することで、チームとして強くなって勝てているのかなと思います。

──小宮山監督は、チームのみんなにどんなことを伝えていますか?

小宮山監督はすごく熱い。それは練習でも試合でも、ずっと変わりません。いつも言っているのは「毎試合、決勝戦だ」と。相手がどこであっても関係なく勝たないといけないという言葉で、全員のモチベーションが上がっています。戦術面もセットプレーや攻撃、守備もしっかり教えてくれているので、いい結果につながっていると感じています。

──リーグ戦も終盤に差し掛かっています。今、大事なことは?

とにかく、毎試合勝たないといけません。(インタビュー時には)あと5試合のレギュラーシーズンがあって、ファイナルシーズンも5試合。もちろん簡単なことではないけど、10試合勝てば優勝できます。今のところ、優勝できるかどうかは自分たち次第です。

この先も難しい試合が続きますけど、毎試合モチベーションも少しずつ上がっています。毎週一歩ずつ進んで、勝つしかありません。

──Fリーグ優勝への思いを聞かせてください。

今シーズンで日本に来て16年目になりますが、僕はまだ、Fリーグで優勝したことがありません。準優勝は何度もあるけど、優勝はない。あと一歩のところで敗れて悔しい思いをしてきました。その気持ちを二度と味わいたくないし、絶対に喜びたいです。勝ち続けるのは簡単ではないですけど、自分たちを信じないといけません。

だから、モチベーションはすごく高い。まだ試合は残っていますけど、今シーズンは優勝できる可能性があるし、強い気持ちをもって臨んでいます。

──過去にベスト5に9回も選出されています。これはもちろん、リーグ最多受賞記録です。節目の10回目の選出を意識していますか?

毎シーズン、開幕からいいパフォーマンスをしたいと思っていますし、年齢を重ねるごとに「もっと見せたい」という気持ちが強まっています。

プロですから当然、パフォーマンスが悪ければ次にまた契約してもらえない。若手であればチャンスをもらえるかもしれないですが、僕のような年齢の選手はどんどん難しくなる。Fリーグには素晴らしいGKがたくさんいるからこそ、その中で戦いたいし、負けたくありません。

だから毎シーズン僕は、ベスト5を目指しています。そこに入ることで今シーズンはいいプレーができたと思えるし、そこを目指すことで自分自身にプレッシャーをかけています。

もちろん、一番はチームが優勝すること。その過程でいいプレーを見せて、今シーズンもベスト5を狙いたいです。



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