更新日時:2018.12.04
残り8試合で勝ち点5差を逆転──。“奇跡の湘南”の立役者・ロドリゴが挑む2年目のジンクス
PHOTO BY軍記ひろし
リオネル・メッシはこの10年間、世界フットボールシーンの頂点に君臨してきた。誰にも止められないキレキレのドリブル、類まれな得点力、勝利に導くリーダーシップ。もはや説明はいらないだろう。
そのプレーを数十秒でも見れば、ほとんどの人がファンになってしまう。メッシにはそれくらいのインパクトがあるのだ。かたやフットサルでも、わずかなプレーで観客をトリコにしてしまう選手がいる。
湘南ベルマーレのドリブラー、ロドリゴだ。自チームのチャンスと見るや一気にギアを上げて敵陣に侵入して、あっという間にゴールを奪ってしまう。シーズンを重ねるごとに、存在感は増すばかり。そんな一撃必殺のプレーを武器に持つ彼は今、クラブの浮沈を左右するキーマンとしてピッチに立っている。その姿はさながら“Fリーグ版メッシ”だ。
“2年目のジンクス”と戦う湘南のエース
昨シーズンのチームは「奇跡の湘南」と呼ばれた。万年下位争いが定位置となった弱小チームが「今年は強い湘南を見せる」と宣言して、本当にリーグ戦で旋風を巻き起こした。クラブとして初めて、上位5チームが出場できるプレーオフに進出して“強い湘南”を印象づけた。ところが彼らは、それに満足しなかった。
「昨シーズンがまぐれではないことを見せる」
今シーズンの湘南は“2年目のジンクス”との戦いを強いられた。「結果を出さなければ本当の強者にはなれない」という重圧が、選手、監督、スタッフ、サポーター、すべてにのし掛かっているようだった。
ロドリゴもそうだ。湘南で2年目を迎えた昨シーズンは、得点ランキング4位に食い込む30得点を挙げて名実ともにエースとなった。スピードに乗ったドリブルが最大の武器であり、切れ味の鋭い切り返しやフェイクで相手を翻弄して、そのまま強烈な左足シュートをたたき込んでしまう。アタッカーでありながらも、自陣の後方でプレーすることが多いのは、ボールを奪った後にスピードアップするスペースを作るため。発動したら最後、ゴールが決まるまで止まらないカウンターこそが“奇跡の湘南”の攻撃の真骨頂であり、その中心には必ずロドリゴがいた。しかし今年の彼のプレーは、その鮮烈なイメージにはまだ及んでいない。
徹底したマークを受けることで、チームとしても選手個人としても苦戦を強いられているのだ。それでも、昨シーズンの成績で手に入れた自信と積み重ねによってベースアップしたスタイルを武器に、湘南は上位戦線になんとか踏みとどまってきた。残り10試合を切って、2位のシュライカー大阪と6ポイント差の5位。これまでのレギュレーションであれば、2年連続プレーオフも順当だろう。しかし今年からプレーオフが上位3チームへと減少したために、このままでは出場権を手に入れることができない。
1位の名古屋オーシャンズは2位に10ポイント差をつけ、しかも残された試合数が1つ多い。当確で間違いないだろう。4位のペスカドーラ町田も同様に1試合多く残されているため、実際には3位にいる可能性がある。前々節、その町田との激闘は、ロドリゴの決勝弾によって勝利目前だったが最後に失点して引き分け、前節は3位・立川・府中アスレティックFCとの激闘の末に0-1で敗れた。もはや1つも落とせない戦いが続いている。
「引き分けでもまったく問題ないですし、これから全部勝つつもりですし、その力はあると信じています」
奥村敬人監督は町田戦後にそう話していた。3回戦総当たりのリーグ戦は2巡目が終了。つまり3巡目は、互いに戦力や戦い方など手の内を明かした上で、どうやって相手から勝ち点をもぎ取るのかという戦い。この戦略戦かつ総力戦で試されるのは「地力」であり、湘南は残り8試合で「昨シーズンがまぐれではない」と証明しなければならない。だからこそ、昨シーズン並みかそれ以上のロドリゴの活躍が不可欠なのだ。
ここまでの25試合・12得点は満足のいく数字ではないが、まだエースの本領を見せつける時間はある。奥村監督もロドリゴの覚醒の兆しを感じているからこそ、クラブの常勝を確信しているのだろう。
21歳で来日して、最初にプレーしたのが立川・府中だった。3年間プレーした後にデウソン神戸に移籍し、そこで1年を過ごして湘南に移ってから、今年で3年目。ロドリゴの力を疑う者はもう誰もいない。だからこそ警戒され、包囲網が敷かれてきたが、それを打ち破り、チームをプレーオフへ導けるのだろうか。
あっという間にゴールに迫り、あっという間にネットを揺らす。電光石火のそのプレーが再びリーグを席巻したとき、“奇跡”は“必然”に変わるはず。ロドリゴは“奇跡の湘南・第2章”の主役となれるか――。
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