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作成日時:2025.02.07
更新日時:2025.02.07

アスレはなぜ、クラファンを始めたのか?「一番見られたくないところをさらす」皆本晃代表理事がドキュメンタリー制作にかける“本気の覚悟”【単独インタビュー】

PHOTO BY伊藤千梅

立川アスレティックFCが、新たな挑戦を始めた。

1月17日からスタートした『ATHLE DOCUMENTARY PROJECT』は、選手たちの日々の活動や試合の舞台裏、地域と共に歩むクラブのあらゆる映像を記録して発信するドキュメンタリー制作を目的としたプロジェクト。「Fリーグ、フットサル界に本気で変革を起こす」と覚悟を決めたクラブの“本気の姿”を、映像を通して世の中に発信していく。

この取り組みは、制作に必要な撮影・編集などの資金を募るためクラウドファンディングを活用。ファン・サポーターの心を動かす様々なリターンが用意されている。

果たしてアスレは、何を記録し、何を届けるのか。

「とにかく、一番見られたくないところをさらす」

皆本晃代表理事は、複雑そうな顔でそう話す。見せたくない。でも、見せたらきっと、おもしろい。そのリアルこそが、人の心を突き動かすはず──。

クラブの舞台裏、選手たちのぶつかり合い、経営者が直面する葛藤……このドキュメンタリーが、Fリーグ、そしてフットサル界にどんな影響を与えるのか。なぜ今、なぜアスレが始めるのか。「現状を変えるにはアスレがやるしかない」。皆本に、全ての真意を聞いた。

取材=本田好伸
編集=本田好伸、伊藤千梅

▼立川アスレティックFCのクラファンはこちら
「フットサル界の未来を切り拓く!立川アスレティックFCドキュメンタリープロジェクト」



皆本晃代表理事、4年目の背伸び

──1月17日から新プロジェクト「ATHLE DOCUMENTARY PROJECT」を開始しました。なぜ、クラファンを始めようと思ったのでしょうか?

前提として、クラファンが目的ではありません。やりたいこと、つくりたい未来があるので、その手段としてクラファンで支援を募ることにしました。

──やりたいこと?

ドキュメンタリーを撮ることです。ただ、これもまた手段です。「自分たちの本気の姿を知ってほしい」「アスレの存在を、まだ届けられていないところに届けたい」。これが一番の目的です。やるからには中途半端なものではなく、プロのクオリティで出したいと思っています。当然、予算が必要なのでクラファンを始めることにしました。

──皆本さんは常々、Fリーグやフットサル界を変えたいと話してきました。その思いを形にするために始めたプロジェクトということですよね。

一時期から回復の兆しもありますけど、言葉を選ばずに言えば、Fリーグは「落ち目」です。僕はそう思っていますし、世間のみなさんの認識もきっとそうだと思います。

うちのクラブは右肩上がりですが、低迷が続くクラブが多い実情もあります。このままではFリーグが衰退していく未来が見えていますから、それを変えないといけません。

僕の力でFリーグをいきなり変えるのは難しいですけど、まずはアスレがFリーグを引っ張るクラブにならないといけない。その起爆剤となるプロジェクトだと思っています。

──アスレが先陣を切る、と。

そうですね。僕がクラブの代表に就任してからの3年間は「地域密着」を軸に、立川における影響力を広げてきました。その成果が出てきた4年目は、「クラブの格を上げること」をテーマに、次の3年間でステージを上げたいと思っています。

マイナースポーツのいちクラブから脱却して、アスレの存在を世の中に認知させることができなければ、フットサルの未来を変えていけません。選手でありながら経営者になる道を歩んでいるからこそ、僕がフットサル界をなんとかしないといけないと考えています。

「自分がダメになったら、このリーグは終わる」。そのくらいの覚悟をもっています。だからまずは、アスレがFリーグの未来を変えるために動く。自分たちはその役割を担えるクラブだと思っています。

──この3年間で土台を築けたわけですね。

そのとおりです。会社を引き継いで最初にしたのは「やらないことを決める」でした。「できることに精度高く取り組もう」と。例えば1年目は、グッズをほとんど売りませんでした。やりたかったですけど、それは「やらないこと」だったからですね。

そこから一つずつ順序立てて取り組んで、社員も増えました。僕が今、このようなプロジェクトに全力を出せるのは、クラブの土台が安定してきたからです。

だから4年目に「クラファンを通してドキュメンタリーを撮ること」にしました。

──少し背伸びをしている感覚も?

それは正直、あります。でも、土台ができたら自分たちが届かないことに挑戦しようと決めていましたし、4年目の今がそのタイミングだと考えています。

スタッフの中には、これまでにもっとやりたいと思っていたことがあるかもしれません。でもこの3年間は「今ではない」とずっと伝えてきました。土台がないのに背伸びしたら崩れてしまいますから。でも、今はそこがしっかりとしています。だから、ここからは逆に「まだ早い」と思われることに挑戦していけたらと思っています。



知られたくない部分を「さらす」ドキュメンタリー

──なぜ、ドキュメンタリーなのでしょうか?

ドキュメンタリーは、本気だからこそ、誰がやってもおもしろいコンテンツになると思います。例えば、元サッカー日本代表の槙野(智章)さんが配信しているYouTubeチャンネル「槙野智章の俺じゃけん」は、監督をされている品川CCの舞台裏を配信しています。

個人的に関係があるわけでもないですし、知名度のあるスター選手がいるわけでもないですが、おもしろくてすごく引き込まれる。本気の姿だからこそ伝わるものがあるな、と感じました。

本気で言い争うシーンやぶつかり合う光景は、普通は見せない部分です。そうやってブランディングするものだと思いますが、僕たちが撮る動画では、隠されている部分をさらしていく。マイナースポーツだからこそ、本気の姿を見せることが多くの人に届けるための突破口だと思ったので、ドキュメンタリーを撮ることにしました。

──キーワードは「本気の姿」ですね。

そうですね。それこそが、自分たちの一番の価値だと思います。選手はチームの勝利を追い求めたり、日本代表を目指したり、日々、人生を懸けて勝負しています。

本気だからこそ、言い争ったり、時にケンカをしたりもします。そういう本気レベルが高いからこそ世の中の人に伝わるものがあるはずですし、心に響くと思っています。

──本気の姿を見せるドキュメンタリーと言えば、スポーツドキュメンタリー番組の『オール・オア・ナッシング』のようなイメージでしょうか?

まさに、僕はあのドキュメンタリーが好きで、全シリーズ見ています。イメージはそれに近いですね。事務所や練習、試合、ロッカーまで、全てに定点カメラを入れたい。アウェイゲームにカメラマンが帯同できるかどうかは予算次第。お金が集まれば、全試合で撮影したい。とにかく「一番見られたくないところをさらすしかない」と思っています。

──本音や知られざる部分を出す。

そうです。僕としては、知られたくない部分を「さらす」ことが、最も多くの人に届くと思っています。出さないですむなら、そうしたかったですけどね(笑)。

──もう出すしかない、と。

はい(苦笑)。クラブとして、今のペースでも成長はできると思いますし、必ずしもやり方が間違っているとは思っていません。むしろきちんと進んできている。ただし、このままの成長速度では、僕が目指している世界にいくためには時間が足りません。

このプロジェクトは、僕自身が現役選手でいるうちにやるべきだと思っていますし、そう考えると、今のタイミングでクラファンを始めないと間に合わないと感じています。

──例えば、皆本さんが事務所で怒鳴っているところとか……。

むしろ、一番それを見せたいですね(苦笑)。

事務所に定点カメラを置くので、例えば僕が「スポンサーを切られるかも……」と頭を抱えているかもしれません。自分の前向きな姿や話はこれまでメディアのみなさんにコンテンツにしてもらいましたけど、そうではないありのままの苦悩もさらけ出したいです。

──オフシーズンの補強や契約更改も見たいです。

撮り始めの時期によりますけど、そこも踏み込みたいですよね。選手獲得は毎年、一番悩んでいますから。うちのクラブは、毎年のように主軸になった選手が他クラブからオファーをもらって移籍するので、2、3月はずっと頭を抱えています(苦笑)。

──もちろん、台本はない。

そうですね。誰がスターになるかわからないのもいいですよね。最初はすごく怒られていた選手が成長して、一つのドラマを生み出すかもしれないですから。

思わぬスターが生まれる可能性を秘めていますし、それでいいと思っています。だから、結末は何でもいい。ただ、見ている人たちに「アスレの最終戦を見に行きたい」と期待感をもってもらえる内容にできたら最高ですね。「チケット完売」は短期的な目標です。

──そして、Fリーグ優勝のエンディングになったらすごいですね。

それは本当に最高すぎます。ただ、優勝できてもできなくても、クラブは続いていきます。だからこそ、未来を描けるような終わり方であればいいなと思っています。



このプロジェクトも必ず成功させる

──クラファンを活用した理由はなんでしょうか?

クラブとしては、2018年12月に「アスレくん」のマスコット制作の際にクラファンを活用して178万円を支援してもらいました。その経験もあったので、もう一度、挑戦したいな、と。今回は目標額がさらに上がりますし、より専門的な知見が必要になるため、Fリーグのスポンサーである「株式会社BOKURA」さんに協力してもらいました。

──どんな協力を得たのでしょうか?

クラファンのかなり細かく、具体的な部分ですね。リターンの設定、金額設定、本文の内容、文面、見せ方、タイトルなど、多岐にわたって相談させてもらいました。自分たちだけではこのクオリティにはできなかったので本当に助けてもらいました。

BOKURAさんの存在が、このプロジェクトの最後のひと押しになりましたね。それに、BOKURAさんの専門領域はファンマーケティングなので、今回のクラファンを通して新規ファンの獲得を期待できると同時に、その後の検証やファン拡大にもつながっていきます。大事なのは、このプロジェクトをどう次の展開に進めていくかだと思います。

──新しく認知されるファンには期待したいですね。

まさに、クラファンに始まり、ドキュメント制作、そしてYouTubeでの公開とつなげることで、今まで関わりのなかった業界への認知を広げられる可能性があると思います。

──アスレが成功することで、他のクラブのロールモデルにもなる。

そうなったらうれしいですね。そもそも、こういった取り組みができないのは、クラブにお金がないからです。そこに使える予算があるならば、選手への報酬や練習環境の改善が優先されるのは、クラブの強化の視点で考えれば当然かもしれません。

だからこそ、ファン・サポーターの方の支援を呼びかけることにしました。みんなで一緒に、すごいものを世の中に発信したいな、と。まずはアスレから始めますけど、こうした動きをきっかけにしてFリーグ、フットサル界を変えていきたいと思っています。

──アスレについてきてくれ、と。

そうは言っても、みんながみんな応援してくれるわけではないですから、やっぱり綺麗事ではないと思います。僕らがやることを煙たがる人だって、いると思います。

でも、「次は何をするんだろう」「何かやってくれる」と思わせるような存在でありたい。一人でも多くの人に、このプロジェクトの先にある未来をお見せしたいですし、そこに懸けてみようかなと思ってくれる人がいたらありがたいですね。

──常に“何か”を見せ続けてきた皆本さんらしいですね。

たしかに、自分らしいですね(笑)。

これまでもうまくいかないことや想定外はたくさんありました。決して順調ではなかったと思いますし、「順調になるようにしてきた」という感じ。無理やりにでもみんなで頑張ってきたから今があります。最後にものを言うのは、やり抜く執念ですね。

最終的には、何とかするしかない。経営とはそういうものだと思いますし、今回も必ず成功させます。ぜひ期待してほしいですし、力を貸してもらえたらうれしいです。

▼立川アスレティックFCのクラファンはこちら
「フットサル界の未来を切り拓く!立川アスレティックFCドキュメンタリープロジェクト」

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