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作成日時:2025.02.26
更新日時:2025.02.26

優勝戦線復帰への重圧。空涼介が故障明けに抱いた不安と覚悟【浦安/優勝インタビュー】

PHOTO BY伊藤千梅

【Fリーグ】バルドラール浦安 5-5 しながわシティ(2月16日/パークアリーナ小牧)

2月16日、Fリーグ2024-2025 ディビジョン1 ファイナルシーズンの小牧ラウンド(第27節/最終節)が行われ、レギュラーシーズン終了時点で首位・バルドラール浦安と2位・しながわシティが対戦。5-5で引き分け、悲願の初優勝を果たした。

昨年5月、空涼介は右足アキレス腱断裂の大怪我を負い、チームを離脱。約半年に及ぶリハビリを経て、中断明けにピッチへ戻ってきた。

復帰後は、主に守備の役割でチームに貢献。出場時間こそ限られたが、ベンチから声を張り上げ、仲間を鼓舞し続ける姿が印象的だった。

そんな空が、首位を走るチームに合流する難しさや人知れず抱えていた葛藤を語った。

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全治6カ月、大怪我から復帰までの道のり

──率直に今のお気持ちを聞かせてください。

本当にうれしいです。あとは安心した気持ちも大きいですね。

──個人として今シーズンを振り返っていかがですか?

自分のプレーだけを見たら、あまり納得のいくシーズンではありませんでした。ただ、チームが優勝することが一番の目標だったので、そこは達成できて良かったと思います。

個人的には、昨シーズンの終盤から調子が上がっている感覚があったなかで、5月にアキレス腱を切ってしまいました。半年近く競技から離れたことがなかったので、もう死ぬほどへこみました。

少し滑っただけで、接触とかも何もなく一瞬でバツンと切ってしまって……これまで大きな怪我をしてこなかったのもあり、なかなか受け入れることができませんでした。でも家に帰ってアキレス腱の辺りを触ったら、あるべきものがなくて、そこでやっと実感しました。悔しい、悲しいという気持ちしか出てこなかったです。

──リハビリ期間を振り返ってどうですか?

中断期間にオフもありましたが、トレーナーの秋山(諒)さんを始め、セグンドやラス・ボニータスの練習にもお邪魔させてもらいました。たくさんの方にお世話になりましたし、何かが欠けていたら、今ピッチに戻れていないと思います。

──その期間を乗り越えて、中断明けに復帰をされました。

実際に復帰をしてピッチに立ったのは、第11節の大分戦でしたが……もう、自分が過去イチ下手で(苦笑)。

ピッチ上で何をしていいかわからなくなりました。迷子になるような感覚で、競技を始めたての頃に戻った気持ちでした。ボールに触る感覚もつかめないし、走れないし、止まれない。それが復帰後1カ月くらいは続いたので、そこでもかなり心が折れました。思い出すとあの時期は本当にきつかったです。

──その1カ月をどう乗り越えましたか?

「待ってる」と、言ってくれたファン・サポーターを始め、付きっきりでリハビリを手伝ってくれたトレーナーやドクターがいました。

たくさんの人たちが応援してくれて、自分に時間を使ってくれているのに、こんなところで終わっていたら失礼だ、と。その思いだけで乗り切りましたね。本当に戻れて良かったですし、感謝しかありません。

ゴールを決めたら、一番に秋山さんのところに行くと言っていたんですけど、リーグ戦では叶わず……選手権や来シーズンで恩返ししていきたいです。



盛り上げることでしか、戦えなかった

──その後は少しずつ試合に絡む機会も増えてきました。

そうですね。ただ、僕が復帰した時点でチームは首位にいました。今シーズンはある程度ファースト、セカンドのセットが決まっていて、試合中にメンバーが変わることがあっても、1、2人程度。正直、自分が全然うまくいっていない状態で、首位を走るチームの決まったセットに入っていくことは、すごくストレスがありました。「うまくいかなかったら、自分のせいだ」と思っていましたね。

今シーズンの浦安は、練習と試合のセットが違うことが多かったので、最初の1、2カ月はぶっつけ本番で試合に出ているような感覚でした。探り探りの状態がずっと続いていたので、かなりきつかったです。だからこそ、まずはやれることからやろうと、守備の部分から意識して取り組んでいました。

──そういった葛藤がありながらも、ピッチ内外でチームのために動いている姿が印象的でした。

試合に出られないのは、チーム内の組み合わせなどはあれど、最終的には自分の責任です。必要とされる選手はどんな時でも試合に出るけれど、自分がうまくないから、戦えていないから、出られない。

「タイトルを取るために」とチームが一丸となっている時に、あの時期の僕はプレーで貢献することができませんでした。そのなかでも自分にできることをやろうと思った時、ピッチ外で盛り上げることでしか、戦うことができなかった。それでも、ベンチで黙って腐っているくらいだったら、チームのためにできることをしようと考えました。

今までの浦安は、ベンチから盛り上げるチームというよりは、淡々と取り組むチームでした。それもいいとは思いますが、試合をするのは選手だからこそ、一番外から仲間を助けられるのもチームメートだと思って声をかけていました。

──ファイナルシーズンでは、試合に出ている姿を見る機会も増えたように感じます。最近のプレーを振り返っていかがですか?

最近はいろんなセットで出ることが多く、3つのセットで出る時もありました。ファーストとセカンドでスタイルが違う難しさはありましたが、その時その時でプレーを変えられるように意識はしていました。コミュニケーションはすごく取るようにしてましたね。

守備のところは昨シーズンから意識している部分でした。今日のような緊迫した試合でも、監督は信頼して使ってくれたと思いますし、勝つために自分が求められていることを体現し続けた結果、いい方向に転がってくれて良かったなと思います。

──そんな今シーズンを踏まえて、来シーズンへの意気込みもお願いします。

チームとしては優勝しましたが、個人として悔しいシーズンでもありました。少しずつ、プレータイムが戻ってきたものの、今シーズンはリーグ0得点で終わってしまったので、よりゴールに絡んでいけたらと思います。

あとは、守備の部分で求められていることを出すこと。まず最低限のことにしっかりと取り組んだ上で、プラスアルファを表現できるようにしていけたらと思います。


取材・文=伊藤千梅
1999年2月22日生まれ。東京都出身。元なでしこリーガー。スフィーダ世田谷FCやFC十文字VENTUSでプレー。2021年に引退後、FCふじざくら山梨オフィシャルライターに就任。なでしこリーグでのプレー経験を活かした女子サッカー記事や、スポーツ関連企業の求人サイトでのインタビュー記事などを執筆する。現在フットサル取材歴は約1年。シーズン中は毎週末Fリーグや女子Fリーグの取材をしている。2024年4月からは撮影も始め、選手たちのカッコイイ写真を撮れるよう奮闘中。

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