更新日時:2025.03.31
シーズン途中に思わぬ転身。“元クラブスタッフ”饗場健監督の目標「ちゃんとオファーをもらって、この場所に戻ってきたい」【全日本選手権 決勝|インタビュー/立川】
PHOTO BY伊藤千梅
【第30回全日本選手権大会|決勝】立川アスレティックFC 2-5 しながわシティ(3月22日/駒沢オリンピック公園総合運動場 屋内球技場)
3月22日、駒沢オリンピック公園総合運動場 屋内球技場でJFA 第30回全日本フットサル選手権大会の決勝が行われ、立川アスレティックFCとしながわシティが対戦。立川は2-5で敗れた。
昨シーズンをもって、4年間チームを率いた比嘉リカルド氏が退任し、新たにサバス氏が新監督に就任した立川。オフ期間にはリーグ得点王でありチームのエースでもあった新井裕生がクラブを離れるなか、開幕5連勝を挙げ、リーグ優勝に向け幸先の良いスタートを切ったかに思えた。
しかし、8月の中断期間前最後のリーグ戦でバルドラール浦安に0-6で大敗。そして9月には、サバス氏の所持しているライセンスがリーグが定める基準を満たしていないことが発覚するという、前代未聞の事態が起こった。
協議の結果、サバス氏はコーチに役職が変更。後任に選ばれたのは、クラブスタッフとして従事していた饗場健氏だった。
ゆくゆくは指導者の道を歩むつもりではあったものの、思わぬ形で引き継ぐことになった、トップリーグ監督のポスト。
シーズン最後の大会を準優勝で終えた饗場監督が、波乱の1年を過ごした思いを語った。
チームとして、超えられていない大きな壁がある
──今シーズン1勝1敗1分のしながわに、今日も拮抗した試合をしましたが、惜しくも敗戦となりました。
シーズンの成績が互角だったからといっても、レギュラーシーズンでの対戦からは時間も経っていますし、カップ戦であることも含めて状況はリーグ戦の時とはまた違うので、一括りにはできないのかなと思います。
その上で今終えたこの試合に関しては、もう少しやれたことがあったんじゃないかという評価です。
ベスト4を経て、この決勝まで勝ち上がってきているということは、それだけ力のある相手という証拠でもあります。そういった手強い相手を前に、まだまだ自分たちの「甘さ」があるから、2年連続で優勝を逃してしまった。
昨季のリーグ得点王でありエースでもあった新井裕生の退団という痛手に加え、シーズン途中に思わぬ理由で就任したばかりの指揮官が退任し、クラブスタッフだった僕が監督になるという、イレギュラーも起きました。そうした苦しい状況でもここまで来れたことは、ポジティブなことではあると思います。
ただ、それでもどうにか勝ち切って、タイトルをつかみとるまでに至らないのは、一つの事象やエラーが問題なのではなく、チームとしてもっと超えられていない大きな壁があるから。それがよくわかる試合になりました。
──一つの事象やエラーというのは、バックパスの判定とラインを割ったかどうかのセルフジャッジの部分などでしょうか。
そういった、対ルールやジャッジのところではなく、人と人との勝負でのミスのところですね。たとえば昨日の準決勝であればセグンドのマークをしっかりつけられていなくて失点してしまいました。あとは今日の(皆本)晃さんが反転されてしまったところも、その局面を引き起こしたきっかけのエラーは、準決勝でも同じような事象がありました。まず同じミスはしないこと、そしてもしエラーが起こってもしっかりカバーをしあえて、自然と流れを引き寄せることができるのが、本当に強いチームなのだと思います。
── とはいえバックパスの判定については立川の選手たちは納得していない表情で、雰囲気を盛り立てていたベンチからの声も小さくなってしまったように感じました。
試合後審判団のみなさんにも伝えましたが、今日のジャッジメントは全体的にはブレも少ない印象でした。たしかにワンツーで抜け出したシーンで(ファウル)をとってもらえなかったり、4秒ルールのカウントだったり、気になるところはありました。でも、都度コミュニケーションを取れていたので、個人的にはストレスが溜まることが多発したという印象は、特にありませんでした。やりたいこともやれていたし、先に失点はしても追いついて、雰囲気を盛り立てられていたと思います。
それなのに、途中から自分たちから対峙する相手ではないところに目線をおいてしまい、自分たちでゲームを崩してしまいました。ベンチのマネジメントも、もう少しやりようはあったと感じています。
早く指導者に専念できるように
──すでに退任が発表されていますが、今後は?
まず、ライセンスを取りに行く予定です。もともと目指してきたのはクラブスタッフではなく指導者なので、早く指導者に専念できるように準備していきたいと思っています。
──思わぬ形で「Fリーグ監督」に就任しましたが、より指導者の道への思いも強まったのでは?
何度か話している通り、クラブとしてもリーグとしてもあってはならないことですし、今後同じことが起きないように、しっかりとした再発防止や整備を徹底しなければいけません。
ただおっしゃる通り、試合の日も選手と同じようにロッカーやベンチに入って、一緒に戦う経験ができたことは、自分にとってものすごく大きな経験になりました。
僕が急遽アスレの監督職に就かなければいけなくなったことで、もともと指揮していた中央大学フットサル部の監督を退かないといけなくなってしまって……。「シーズン途中での指揮官交代」がどれだけ大変かを感じながら、同じことを中大のみんなに味合わせてしまうことになりました。
それでも、彼らは事情を理解して受け入れてくれたし、むしろ「頑張ってきてね」と応援してくれた。本当に感謝しています。
だから今度は、シーズン初めからちゃんとオファーをもらって、正式な監督としてこの場所に戻ってきたい。この貴重な経験を生かして、指導者として成長を続けていけるように、今後も努力していきたいです。
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