更新日時:2025.08.08
「俺はFリーグのCEOになりたい」。“ビッグマウス”皆本晃が、今季限りでの現役引退を表明した直後に語った次なる野望【F1第10節|記者会見/立川】
PHOTO BY伊藤千梅
【メットライフ生命Fリーグ2025-26シーズン ディビジョン1】立川アスレティックFC 4-3 名古屋オーシャンズ(8月3日/アリーナ立川立飛)
8月3日、メットライフ生命Fリーグ2025-26シーズン ディビジョン1の第10節が行われ、立川アスレティックFCと名古屋オーシャンズが対戦。立川は4-3で勝利した。
この激闘を制した直後、クラブの“代表理事兼選手”という唯一無二の肩書きでFリーグを走り続けてきた皆本晃が、今シーズン限りでの現役引退を発表。ホーム・アリーナ立川立飛に詰めかけたファン・サポーターの前で自身のキャリアに一つの区切りをつける意思を表明した。
試合後、皆本は記者会見に登場。集まったメディアの前で、現役引退を発表した直後の胸中を明かした。
社長業に専念する覚悟、クラブへの想い、そしてフットサル界で果たしたい野望とは──。
取材=福田悠
編集=柴山秀之
「すげえな」と思われて送り出されたい
──現役引退についてコメントをお願いします。
本当はこんな形で選手をやめるとは思っていませんでした。
2021年のワールドカップが終わった年に引退しようと思っていましたが、急点直下で社長をやることになりました。ドキュメンタリーも見ていただきたいんですけど、そこにすべてがあります。
正直、選手としてやり残したことはほとんどないと思っていたなかで、経営者をやるなら、代表理事兼選手は他の人にはない武器だと思いました。経営者1本でやる怖さもありつつ、差別化する意味で「二刀流」というブランディングで選手を続ける選択をしました。実際にやってみるとブランディングの強さも大きく、簡単には手放せないなと思いました。
ただ、これはどこかで自分が線を引かなきゃいけないないですし、自分のパフォーマンスがどうとかではなく、自分の首を自分で切れるからこそ、早いタイミングで決めなきゃと思い、今回決断しました。
実はシーズンが始まったタイミングで、選手には「今年でやめるから」と伝えていました。どこで発表するかは悩んだのですが、僕はこの会場を大事にしてきたので、そういう場所でどうしても発表したかった。数週間前からこの日だな、と。2000人が入るホームで、さらに相手は王者である名古屋オーシャンズで、もうここしかないと思っていました。これは僕の一つのスタイルですし、選手人生を振り返っても、先にこういうふうにやると決めて、そこに自分が追いついていくことをずっとテーマにしてやってきました。
でも、負けたら言えなかった(笑)。今日、スタッフがメディアのみなさんに「皆本から重大発表があるかもしれません」と言っていたかもしれないですが、負けていたらこの発表はしていません。いつ発表するかのジレンマだったので、スタッフは今日勝ったことに非常に安堵しているのかなと思います(笑)。
試合に勝てるかはわからなかったけど、「俺は言うから」と、近しい人には言っていたので、そういう空気感は出ていたかなと思います。今日の自分のパフォーマンスが良かったとは到底思えないですけど、次に託す選手たちが非常に頑張ってくれたので、それもそれで、自分らしい形で幕引きができたのかなと感じています。
あと半年あるので、みんなに少しでもいいプレーを届けたいですね。昔のようなプレーはできないと自分で思っていますけど、今はスポンサーやファンのみなさんは僕が走っているだけで喜んでいるみたいですから(笑)。
でも最後は「やっぱすげえな」と思われて送り出されたいです。
そのためには優勝が必要で、僕はそのストーリーができていると思っています。シーズン開幕からドキュメンタリーを始め、自分のラストシーズンで初優勝する。そうなるんじゃないかなと思って、そのためにこのタイミングで言ったというのもありますし、ここからもまだ物語は続いていくので、ぜひみなさん引き続き応援していただければと思っています。
意外としゃべりましたね。もう質問いらないぐらいしゃべっちゃった(笑)。以上です。
自分を評価する立場だからこその決断
──今日の試合を見ても、やれている部分はあると感じました。それでも選手として身を引く理由は?
2021年が終わった段階から、自分の中でキャリアのピークは過ぎた、パフォーマンスは上がらないと感じていました。それでもできることはあるし、今もそうです。最大限の100%はもう出ないけど、他の選手がもっていないものはたくさんもっていますし、そういう意味ではまだチームに貢献できる自負もあります。
以前は、2000人のお客さん全員が僕のプレーだけを見て2000円を払う価値がある選手だったと思っています。そこを基準にすると、今はチームに貢献できていますが、「あんまりかな」と感じることもあります。もちろん、要因は他にもありますが、貢献のできる幅が狭くなってきている実感もあるので、ここが引き際だなと思いました。
やれると思われているのはありがたいですが、僕は自分を自分で評価する立場です。誰にも評価されない立場だからこそ、やっぱり自分には厳しい目で見なきゃいけない。変な話、「あの選手は登録させといて」と言えちゃう立場だからこそ、シビアになるべきです。
──社長と選手の二刀流としてのやりづらさはありましたか?
ありますね。
自分がフラットに接しているつもりでも、年齢の離れた若い選手、僕が社長になってから接するようになった選手からすると、壁は感じると思います。一方で、(上村)充哉や(酒井)遼太郎のように、社長になる前から一緒にやっていた選手はキャリアが違う尊敬する先輩として、フラットに接してくれます。
若い選手にとっては、社長でもある僕とコミュニケーションを取らなきゃいけない。例えば、変なことを言ったらクビを切られるかもとか。もちろん実際にはGMを置いているので、クビなんて切れません(笑)。でも、相手からしたらわからないじゃないですか。そう感じる瞬間に「これはずっとはできないな」と思ったんです。
──経営者としての現在の自分をどう見ていますか?
社長として勝負しなきゃいけないタイミングです。
100%には到達してないかなと思いますが、あと半年ありますし、社長1本でやることでまた違う世界をつくっていけるんじゃないかなって自分にも期待してます。僕の自己評価は高いので(笑)。
僕は本気でアスレだけじゃなく、次は社長としてFリーグを変えようと思っています。いずれはFリーグの(組織の)中央に行き、絶対この状況を変えていくという強い思いをもっています。そこに向けてのセカンドシーズンみたいな感じもあるので、改めて期待してもらえればと思っています。
Fリーグが盛り上がるためには何よりも集客
──今日の歓声や応援をピッチではどのように感じていましたか?
近年ずっと感じていましたが、特に今日は2000人がフルで入ったので強く響きました。これが僕たちが4年間でつくり上げたホームゲームだと思いますし、こういう場所をたくさんつくりたい。
まずはアスレで実現し続けることが前提ですが、Fリーグの各ホームゲームがこんなふうになれば、Fリーグって絶対に盛り上がると思うんですよ。
僕は今、お客さんが定着するにはどうすればいいのかというノウハウをためていますし、いろんな成功体験、失敗体験をしながら、いつかFリーグのクラブにも横展開していきたいと思っています。ほんとに素晴らしいお客さんがついてきてくれるなと感じていて、引き続きこれをもっともっと大きくしたいなと考えています。
──今のFリーグの課題や、発展するために必要なこととは?
やっぱり集客です。お客さんが入らないことにはアリーナは絶対に盛り上がらない。
スタジアムと違って狭いので、お客さんが入ったら熱狂がすごいじゃないですか。そうなると、来た人は絶対にまた来たいと思えるはずなんですよね。なので僕は1年目から「集客、集客、集客」って言い続けてきました。
実際に言われたこともあるんですよ。「お客さんが入っているチームって、ホームゲームで勝つよね」って。これは絶対にそうで、いろんなチームに波及していると思います。僕たちは主力選手が毎年のように引き抜かれている状況ではありますけど、順位は下がっていない。全日本選手権で決勝までいけたのは結局、お客さんが入っているからだと思うんです。ホームで勝てれば、クラブは盛り上がるということに気づいてきているんじゃないのかなって。
僕たちが課題に向き合ってきて、それが今、広がってきています。そして、各方面がお客さんで温まったところで、僕はFリーグのCEO(最高経営責任者)になりたいなと思っています。でもその先のフェーズは描けていないので、それがセカンドステージであり社長1本で見えてくる世界です。
外から誰かが来て変えてくれると思って待つのは違うし、Fリーグの中の人が変わらないといけません。僕はその覚悟をもっていますし、俺がやらなかったらFリーグは変わらないと思っています。でも自分がそういう覚悟をもってやるのは絶対に大事で、そういう未来を必ずつくりたいですし、10年計画の今は4年目なので、ここから6年間でアスレが強くなると思います。
──地域のみなさんに向けて一言お願いします。
この4シーズンで、本当にたくさんのお客さんが来てくれるようになりました。特に立川のおばさまたち(笑)。たくさん足を運んでくれています。
初めは「皆本晃がめっちゃ営業してくるからとりあえず行くか」とか、「来ませんか?来ませんか?」と言われるから来ていたと思います(笑)。
でも今となったら、そのお客さんは「アスレに勝ってほしい」と思ってくれるところまできました。僕らは立川を代表するクラブになっていきたいですし、それは僕たちだけじゃなくてみなさんとつくっていくものだと思います。
立川の街でみなさんと一緒にアスレを大きくして、日本一のクラブじゃなくて、僕は“アジア一”のクラブにしていきたいです。その過程を見られる楽しさも感じてもらいながら、一緒に育んでもらえたらなと思っているので、これからもぜひ会場で後押しをしてほしいです。
──選手・皆本晃として、最後に残したいものは?
タイトルは絶対です。特にリーグ優勝は絶対にクラブに残したい目標の一つです。
ピッチ外では、一人の選手としてお手本でありたいですし、ピッチ内では「皆本晃を真似したい」、「こうすれば俺も日本代表になれるかもしれない」というプレーを一つでも多く続けていきたいです。40分間を通していいプレーができるわけではないですけど、勝負際のところでするべきことは、他の誰よりもできると思っています。
それを言葉で伝えるだけじゃなく、選手たちが「俺は皆本晃と同じ時代にプレーしていた」、「晃さんってああいう感じだったよね。こういうプレーしてたよね。だから勝てたんだよね」というようなものを少しでも多く残していきたい。それがきっとアスレの未来につながっていくと思います。
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