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作成日時:2025.12.11
更新日時:2025.12.11

【U-18日本代表】なぜ今、サッカー界からのタレント発掘が必要なのか?高橋健介監督が語る日本フットサル育成論「知識だけでは、いずれ追いつかれてしまう」

PHOTO BY本田好伸

11月8日から12日にかけて、U-18フットサル日本代表候補のトレーニングキャンプが高円宮記念JFA夢フィールドで行われた。

A代表と兼任で指揮を執る高橋健介監督は、U-18カテゴリーには「現時点のパフォーマンス」と「タレント」を両立させる必要性を感じているという。

育成年代でフットサルキャリアを重ねる“プロパー”選手とサッカーを主軸にする選手とが切磋琢磨する環境をつくり、アスリート力と競技力の両面を磨いていくこと。その積み重ねこそ、日本が世界との差を縮める手段となる──。

日本フットサルが次のステージへ踏み出すために必要なこと。高橋監督に育成の核心について聞いた。

<U-18フットサル日本代表・メンバーはこちら>



U-18は未来への投資となる活動

──今回のU-18代表候補のトレーニングキャンプの狙いを教えてください。

この年代で、代表チームのアイデンティティをピッチ内外で示していくことが活動の目的だと、選手にも話しました。A代表が進もうとしている道を、実際に選手たちに体験してもらい、体現していくための第一歩にしてもらいたいということですね。

──具体的な目標となる次の大会はありますか?

年に一度、毎年ヨーロッパ遠征を組んでいるので、そこで親善試合や国際的な大会に出ていけるようにとは考えています。ただし、現状では次のAFC U-20アジアカップの日程や開催が決まっていません。2017年、2019年と開催されてきた大会は、2021年に第3回を行う予定でしたが、それがコロナ禍で中止となってからは、延期なのか中止なのかがわからない状態となるため、今は未来への投資となる活動だと捉えています。

──現状では、選手たちが経験を積む機会をつくっている。

そうですね。現在のU-18代表チームは来年、U-19代表として活動することになります。継続的に若い選手が外の世界を経験していくことが大事になります。今のA代表もアンダーカテゴリーを経験している選手が半数以上になっていますし、その比率はどんどん上がってくると思っています。

──選手にはまずどんな話を伝えたのでしょうか?

これはA代表でも一緒ですが、代表の規律やエンブレムを背負うということはどんなことかを伝えたつもりです。去年の活動から継続している選手にも、それを踏まえて歴史を積み重ねていくことが大事だという話をしました。

──初招集が半数近くいますが、そうした選手には?

今回の招集には2つの側面があります。日頃サッカーをしていて、フットサルがどんなものなのかを知る機会が少ない選手も3人呼んでいます。

今回は進路などの関係で参加できなかった選手もいましたが、そうした選手も今後はもう少し割合を増やしたいと思います。

サッカーを軸にしていてタレントをもっている選手と、すでにフットサルの中でパフォーマンスを発揮している選手とが切磋琢磨していくことが、今後の日本フットサル界にとって重要ではないかと私たちは考えています。

──メンバーのベースは、全日本U-18フットサル選手権に出場した選手ですが、他にはどんなリサーチをしているのでしょうか?

各地域予選を含めてコーチ陣と共に視察を行っていますし、Fリーグの育成組織におけるトレーニング状況などもチェックしています。現状では、日頃からフットサルに関わりがある選手しかなかなか見ることはできないですが、サッカーを軸にしていてもフットサルの大会に偶然のように出てくる選手がいるかもしれません。

例えば、齋藤幸輝は千葉FCでサッカーをしているなかでフットサルのU-15千葉県選抜の大会に出ていたことで見出すことができて、2023年にJFA U-18フットサルタレント育成普及事業で呼んだところがスタートでした。

──全国的にU-15の選抜大会なども普及していますか?

U-15の選抜大会はまだ全国一律では開催できていないようです。フットサルチームから選ばれているのか、サッカー選手を含めているのかなど、どんな選抜チームを組織するかなどもその地域に委ねられている現状があります。

パフォーマンスとタレントの2軸で見る

──新しく入ってきた選手を含め、どんな選考基準がありますか?

先ほどお話ししたように、パフォーマンスとタレントの2軸で見る必要があると思います。現時点でパフォーマンスを発揮しているのは、日頃からフットサルをやっている選手であることは間違いありません。

ただ、将来的には、潜在的な能力が高いと思われる選手を同時並行で見ていく必要もあります。U-18年代では特に、フットサルにおける知識の優位性だけではいずれ追い付かれてしまう側面もありますから、両者が切磋琢磨できる環境でトレーニングすることがお互いにとっていいものだと考えています。

現時点ではフットサルにおけるパフォーマンスを発揮している選手を多く呼んでいますけど、そこにタレントがある選手を混ぜていくことも大事だと思っています。

──トップカテゴリーがすでにアジアでも体感しているように、フットサルの知識や経験年数を凌駕されてしまうことがあります。その意味でも、アスリート力を高めていくことや、選手を発掘するための選択肢をを広げていかないといけない。

今のA代表でも、U-18カテゴリーまでは高体連やクラブチームでサッカーをやってきた選手が多くいる事実があります。

今後、フットサルをプレーしてきた選手だけでA代表が構成されるのか、それとも、そこにタレントがあると言われる選手たちが50%くらいの割合で入ってくるのか。あるいは、フットサルの経験値が高い選手が70%くらいになっていくのかはまだわかりません。現実として、日本フットサルは、サッカーをやってきた選手もフットサルに力を注いできてくれた歴史があります。いいバランスを取りながら、お互いに補完できるといいだろうなと思っています。

フットサル界のフィジカルベースも全体的にかなり上がってきています。ただ、フィジカルだけではない部分がフットサルのおもしろさだとも思っています。

それでいくと、フットサル選手が、「どんな知識をもっているのか」も大事です。所属しているチームにおける動きや決まり事を覚えていることと、相手を見ながら判断できることは別物です。

その意味では、フィジカル的にもアスリートであり、なおかつ相手を見てフットサルの大事な部分を理解してプレーできるという、両方を併せた選手がどんどん出てくるべきだと思っています。

──そうしたお話を聞くと、改めて“本当の意味で”サッカーとフットサルの両方を幼少期から取り組んできたほうがいいとも感じますね。

例えば、去年、帝京長岡高校からU-18代表候補のトレーニングキャンプに選出された中島啓太も、彼はそのままU-19代表の遠征に連れて行きました。

彼は、幼少期にフットサルをやっていたというバックボーンがあったので、代表に来てからの適応がすごく早かったという側面もあると思います。それは逆も然りで、例えばサッカーブラジル代表の中にもフットサルをやってきた選手が多くいます。

──10月にA代表が戦ったブラジル戦で改めて突き詰められた壁、課題もあります。それを乗り越えるためにも、育成年代で取り組んでいくべきことがありますよね。

それは間違いないと思います。例えば先日、U-17年代の国際大会でブラジル代表が優勝しましたが、アルゼンチン代表も、U-17年代のコパ・アメリカを戦うために、2年くらい、毎週のようにメンバーを集めて活動するくらい時間をかけているようです。

自分たちもできることをコツコツと積み重ねていかないと、どんどんおいていかれてしまうことは間違いありません。選手もスタッフも、10月のあのブラジル戦でいろんなことを感じさせられたので、それをつなげていかないといけないという思いです。

──この年代の選手ならではの激しさやエネルギッシュさもありますね。

サッカーの子たちも、頭を抱えながら「これがフットサルか…」と話をしていましたけど、この年代の選手はなにかのきっかけから突然グンと伸びることもあります。

練習というよりも、この環境がジャンプアップの一つのきっかけになると思うので、その成長を楽しみたいです。

もちろん目の前の試合に勝つ準備もしてきましたが、ただ勝つためだけにこの時間を使うよりも、もっと将来的なものを見据えながら、全員に出場機会を与えながらやれたらと思っています。栃木シティの加藤竜馬監督(元バルドラール浦安)にも協力してもらい、15分3本で試合ができるので、いい試合をしていきたいです(※編集部注:トレーニングマッチの結果は1-3で敗戦)。

 



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