更新日時:2025.11.23
「W杯の年にやめる」30歳で引退を決意した日本の守護神・井上ねね、最初で最後の大会で見せる“フットボールキャリア”の集大成

PHOTO BY伊藤千梅
2019年にフットサルへ転向してから、6年にわたって日本代表のゴールマウスを守ってきた井上ねね。5月のアジアカップでは日本の初優勝に貢献し、大会ベストGKにも選ばれた。
そんな30歳の守護神は、今季限りでの引退を決めている。
このワールドカップが最後の舞台。覚悟を語る井上は、キャリアの集大成として、最後の挑戦へ向かおうとしている。
積み重ねてきた日々の先にあるW杯
「引退は、W杯の開催が決まった時点で決めていました」
そう口にした井上は、サッカーからフットサルへの競技転向から時期をおかずに日本女子代表に招集され、以降は常に名を連ねてきた。その歩みの先にあるのが、今回のW杯だ。
「今まではアジアの大会までしか開催されていなかったので、この大会が決まった時に、ここを一区切りにしようと思いました。アジアカップで優勝して、そのままW杯に出場して。そして、その年で引退しようと決断しました」
引退を決めてから、日々の時間の捉え方は少し変わったという。
「日頃の練習では、この時間も限られているんだなと感じる瞬間が増えました。1回、1回のメニューが、以前より大事に思える」
一方で、試合中に引退を意識する時間はまだほとんどない。目の前の戦いに向けた準備に意識が向き、自然と気持ちは次のプレーへ向かう。今大会も、その感覚は変わらない。
「試合がある以上、まずはそこに向けて戦うだけ。終わった後もリーグ戦は続くので、正直そこまで実感はありません」
ただし、言葉の端々には節目としての意識もにじむ。
「でも、代表としての集大成になる大会だと思っています。ここに出ることを長く目標にしてきたので、自分にとっては本当にいい舞台です」

井上にとって「W杯」とは何なのか。あらためて問いかけると、過去の記憶と現在の思いが重なった。
「高校2年生の時にサッカーの日本女子代表でU-17女子W杯に出ました。でも、その時とはまるで別の感覚です。サッカーからフットサルに転向した時、『もう一度この大会に出場して活躍したい、日本のために貢献したい』という思いがあって、その目標を実現できるところまできました。そのために頑張ってきたと思っています」
フットサルに費やしてきた時間が、彼女自身を強くした。
「サッカー時代にも楽しい時はありましたけど、苦しい時間も多くありました。サッカー選手だと胸を張って言えるかと聞かれたら、全然そうじゃなかった。でも今は『フットサル選手だ』って胸を張って言えますし、本当にフットサルが大好きで、プレーしている時が一番楽しいです」
楽しいと思える競技に出会えたこと。その競技で、日本代表に選ばれたこと。そして今、最後の1年と定めた1年を、しっかりと踏みしめながら戦えていること。そのどれもが、井上にとって大切な道のりだ。
最後に、W杯への思いを訊くと、迷いない言葉が返ってきた。
「アジアカップとはまた別の大会になると思います。相手がどうとかではなく、自分らしさ、日本らしさを出して、みんなで勝利をつかみたい。日本女子フットサルの未来につなげるような大会にしたいです」
集大成として迎える、最初で最後のW杯。これまで積み重ねてきたすべてを携えて、井上はその舞台へと向かう。














