更新日時:2025.11.29
「自分たちはできる」“ただ一人”ベンチから鼓舞する姿は意思表示。ポルトガル戦の連続失点直後、キャプテン・伊藤果穂が身を乗り出した意味

PHOTO BY伊藤千梅
フットサル日本女子代表が戦うワールドカップ、グループステージ第2戦。格上のポルトガルを相手に粘り強い守備で0-0と均衡を保っていた日本だが、16分に今大会初失点。その直後、立て続けに得点を許し、悪い流れに飲み込まれてしまうかと思われた。
ここで声を挙げたのがキャプテンの伊藤果穂だった。連続失点のタイミングで真っ先にチームを鼓舞した主将はあの時、ピッチで何を考えていたのか。
取材・文=伊藤千梅

失点直後に響いた主将の一声
今大会初めての失点は、セットプレーからだった。相手のコーナーキックから、流れるようなダイレクトパスに翻弄され、ゴール前で押し込まれた。
ピッチに立っていた伊藤は、悔しそうな表情でこの場面を振り返る。
「そもそもコーナーにしてしまったところから反省はありますが、一人ひとりの立ち位置など、細かく言えば細かく言うほど、防げた部分がたくさんありました。直後に映像を見ても、自分自身『こうすれば良かったな』という反省点はその時点でも浮かんできました。それはここでピッチにいたみんなが感じている部分だと思います」
反省はある。ただ、須賀雄大監督が「ブラジルやスペインのような強豪国でも絶対に失点しないというのは難しいもの」と話したように、失点が必ずしも後ろ向きなものというわけではない。
「試合中もセット間で話すことができましたし、他のセットでも、もう一度セットプレーになった時の話ができました」
同じ轍を踏まないように修正する。試合中、どれだけ早く、的確に戦況に対応し、ピッチで体現できるかは、世界の強豪を相手に勝ち切るために必要な力だろう。

しかし、流れはすぐには戻らなかった。同16分、自陣での連係ミスから再び失点。普段は起こり得ないようなエラーから立て続けに得点を許し、試合が崩れてしまいそうな予感さえもただよっていた。
ここでベンチから立ち上がったのが、伊藤だった。
手を叩き、声を張り上げ、下を向く選手たちを鼓舞する。
「試合全体の流れとして少し落ち込んでしまった部分はありましたが、『自分たちはできる』という自信はもっていました。なので『チームとしてもう一度戦うんだ』というところを伝え、自分の声でチームを盛り上げることができればと思ってあの時、中の選手たちに声をかけていました」
チームを信頼しているからこそ、あの場面で声をかけることができた。
「十分に時間はありましたし、逆に自分たちができていない部分が見えていたからこそ、できる部分がもっとあるとは思っていました。あの時にどれだけ盛り返せるかが重要だったので、まだまだできると、チーム全体で意思確認ができたと思います」

一方で、あの場面で伊藤“だけが”際立ったのも事実だ。
選手同士で声をかけ合うことはあったはずだが、ベンチから身を乗り出すようにアクションを起こしたのは、キャプテンマークを巻いた、伊藤ただ一人だった。
「そういう声はあればあるほどいい。W杯直前のイタリアとコロンビアとの親善試合でも、前半ビハインドの場面がありました。須賀監督から『こういう状況がW杯で起きた時に、どういった行動が取れるのかがチームにとって大事』という話があったのですが、まだまだ経験が浅いチームだと思います」
伊藤自身は、2018年に代表に選ばれ、日の丸を背負ってから7年が経った。その間、ポルトガル遠征とスペイン遠征を二度ずつ経験。世界の強豪国を相手に、何度も歯が立たずに敗れた経験を重ねた。
外から見ても、今回のポルトガル戦は、これまでにないほど戦えていることは明らかだった。だからこそ、ベンチからであってもピッチ全体を巻き込み、勝利に執着し、白星をつかみ取る貪欲さが求められていたはずだ。
「私自身、経験やキャプテンであるという立ち位置としても、率先して行動を取ったということはありますが、もっともっとチームに輪が広がればいいなとは思います」
敗戦に下を向いている時間はない。中2日で迎える第3戦、タンザニアとの戦いは日本を未来へとつなげていくための戦いだ。引き分け以上で、準々決勝進出が決まる──。
「敗戦はもちろん悔しかった。でも、チームのみんなが悔しかったと思えているのは、全員で戦えていたからこそ。タンザニア戦に勝てばグループを突破できるので、いい準備をして試合に向かいます」
キャプテンが試合中に示したもの。仲間たちを鼓舞する声で、自分たちはできる、もっと戦うんだという意思をチームみんなで共有しようと、必死に振る舞った。
その覚悟に応えるのは、選手全員だ。ゴールを決めた時、すなわちいい状況の時だけでなく、チームが苦しい時、失点した時、ベンチから飛び出すほどに“気持ち”を見せる選手が一人、二人と増えていった時、彼女たちはきっと、想像を越える一体感を手にしているに違いない。

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