更新日時:2025.12.04
史上初の舞台で痛感した世界トップとの差。須賀雄大監督が感じた現在地と女子フットサルの未来「たくさんの積み重ねが必要」

PHOTO BY伊藤千梅
【FIFAフットサル女子ワールドカップ フィリピン2025】日本 9-0 タンザニア(日本時間12月2日/フィリスポーツ・アリーナ)
12月2日、フットサル日本女子代表はフィリピンのマニラにあるフィリスポーツ・アリーナでFIFAフットサル女子ワールドカップ フィリピン2025、準々決勝を戦い、ブラジル代表に1-6で敗戦。史上初のW杯に臨んだ日本はベスト8で敗退となった。
試合翌日、須賀雄大監督に話を聞いた。

本気で世界一を目指したからこそできるフィードバックを

──ブラジル戦の振り返りをお願いします。
率直にブラジルが強かったと思っています。
1年半前のポルトガル遠征でも対戦していますが、その時よりもさらに集中力が高く、献身性がありました。決勝トーナメントということで、グループリーグ以上のチームへの忠誠心と、高い緊張感をもったブラジルでした。
前半は苦しいスコアとなったなかで、後半は気持ちをもう一度奮い立たせて、マインドをセットし直しました。日本のフットサル、女子フットサルの未来のために、最後まで折れずに戦った選手たちを誇りに思っています。
──試合の入りのプランでは、どのようにブラジルと戦おうと考えていましたか?
まず、自分たちが今まで継続してやってきたセットをベースにしました。相手のファーストセットは非常に強力なメンバーがそろっていたので、ボールを持たれ、押し込まれてしまう時間帯が多くなることは想定していました。
特に一番脅威になるのはエミリー選手だと思っていました。サイズ的にもそうですし、一度対戦した上でのスカウティングからも、日本人が一番苦手とするタイプだと感じていました。
そこで中村みづきをエミリーにマッチアップさせつつ、しっかりとゲームを相手に簡単に動かせないようにしながら、できるだけ均衡した状態を続けていきながら先制点を狙うことがゲームプランの一つではありました。そこからは展開次第で進めていくイメージでしたね。
──その中で第1ピリオドは0-5で終わりました。ハーフタイムには選手たちにどのような声掛けをしましたか?
まずマインドとして、0-5というスコアが簡単じゃないことは、このフットサルというスポーツをやってきた全員がわかっていました。それでも勝利を目指して戦い続ける姿勢を示すことは絶対に必要でした。
もちろん1発勝負で、絶対に勝たなければ先がない試合であることもそうですし、この1戦が今後4年、そして8年、12年と続いていく女子フットサルの歴史の一つの指針になることは間違いありませんでした。だからこそ、常に全力で挑み続ける姿勢が必要なんだ、という話をしました。
──戦術的な指示はしましたか?
プレーの内容に関しては、圧倒してポゼッションもすべて上回るようなゲームプランにはならないことはわかっていました。ある程度失点をしないことは、頭に置かなければいけない相手ではありましたが、あのようなスコアになった以上、真っ当に戦っていてはひっくり返すことはできません。
パワープレーはプランニングしていましたが、それ以外のトランジションやギリギリのプレーのところでも攻撃に転じる。守備でも見るだけではなく、相手がボールを止めたら積極的に奪いにいく。仮に抜かれても全員でカバーをして、さらに逆カウンターにつなげていく。そういった、よりアグレッシブで、少しゲームを壊しにいくような指示をしました。
──第2ピリオドのパワープレーに入る直前は、一度3セット回しに戻したタイミングがありました。あれはどういう意図でしたか?
全選手が「やってやる」という気持ちに満ち溢れていたので、セットを固めるより、3セットにして全選手が躍動できる時間をつくりました。そのなかで、自分たちのゲームプランを実行して、エネルギーを生み出そうと考えていました。
──世界との差を改めて感じさせられる試合になったと思います。今後、日本はどのようにその差を縮めていけるか道筋はありますか?
まず冷静に、客観的に分析しなければいけないことが多くあります。まだ1日しか経っていないなかで、軽々しくこうすればいいというような結論を出せる状況ではないと思っています。
ただ、一つ言えることは、ブラジルは私たちよりずいぶん先に女子も男子もフットサルというものにリソースを割いて強化してきた国でもあります。そういった先をいってる国に結果でも上回ることは、彼ら以上の努力を積み重ねていかなければいけないと思っています。その努力は一つひとつのことではなく、たくさんの積み重ねが必要です。
目先の勝利を目指した戦いへのフィードバックはもちろんですが、4年後、さらにその先を見据えたフィードバックもしなければいけません。今回、本気で世界一を目指したからこそできるものだと思っているので、それが叶わなかったというフィードバックを、これからしていかなければいけないんじゃないかなと思っています。
──アジアカップを優勝して、ワールドカップに出場しました。この1年で得られたことはたくさんあったと思います。
今回のワールドカップ期間中だけでも選手がどんどんアスリート化していきました。タフなトレーニングを行い、試合の翌日でもトレーニングをして、ピッチ外も含めて変わっていく様を目の当たりにしました。
そういった意味では、代表活動以外での時間の過ごし方は間違いなくポイントになってくると思っています。今回参加した15人の選手たちが中心になって、日本の女子フットサル界全体でスタンダードを上げていく作業が求められます。今回ワールドカップを体感した15名、そして私たちスタッフが、そういったものをしっかりとフィードバックしていくこと、スタンダードを示していくことが大事なんじゃないかなと思っています。
──今回、多くのファン・サポーターが注目し、現地にも駆けつけました。メッセージをお願いします。
まず、開幕戦から多くの方が会場に来てくださり、日本コールをしていただいたことは、本当に力になりました。また、画面越しやSNSで応援してくださった方もたくさんいるということを、実感しながら活動をしてきました。
こうした注目を集めたからこそ、みなさんに今後も継続して応援していただけるような姿を見せていくこともとても大事だと思っています。先ほど、ミーティングしましたが、選手たちもその気概を見せると誓っていました。自分たちはそれに応えるべく、常に最高の準備をして、最高のパフォーマンスをして、そうした姿勢を続けていきたいと思っていますので、引き続き応援よろしくお願いします。













