更新日時:2026.07.10
【特別インタビュー】フットサルシューズ案内人・しゅう太郎が語る現代プレーヤーが見つけてほしい“至高の一足”とは?

PHOTO BYしゅう太郎
SNSフォロワー10万人を超え、海外メーカーからも「ぜひ視察に来てほしい」と直接声がかかる“シューズ特化型インフルエンサー”、しゅう太郎。
フットサルシューズを語らせたら止まらない彼は、プレーよりも、選手の足元を見てしまうという。試合よりも、シューズを追っているのだ。
その異質とも言える視点は、現代フットサルシーンを取り巻くシューズ事情をどう紐解くのか。そして、全国にスポーツデポを展開する株式会社アルペンのプライベートブランド「TIGORA(ティゴラ)」から発売された新シューズに搭載された“厚底”という新潮流をどう見るのか。
「至高の一足」を追い求めるしゅう太郎に、話を聞いた。

しゅう太郎とは何者なのか?

──最初に教えてください。しゅう太郎さんって、そもそも何者なんですか?
僕は、メーカーに勤める普通の会社員です。と言っても、スポーツとは全く関係ない業界ですね。なので、フットサルシューズに関しては完全に趣味です。
大学からフットサルを始めて、5年前までは競技でやっていました。地方の地域リーグに所属しているチームにいたのですが、クラブが解散することになって、そのタイミングで一区切りつけました。今は週に2、3回エンジョイで蹴るくらいですね。
──なぜ「シューズ」に特化した発信を始めたんですか?
自然とそうなった、という感じですね。もともとサッカーをやっていた頃からスパイクがすごく好きで、親に買ってもらう誕生日プレゼントも全部スパイクでした。
それで、NIKE(ナイキ)サッカースパイクの『エアズームトータル90 II』を履いた時に「こんなに違うのか」と衝撃を受けたんです。蹴りやすさも、フィット感も、ボールの感触も全部違う。そこからは、プレー以上に「履き比べること」が楽しくなってしまったんです(笑)。
フットサルをプレーするようになって、その対象がスパイクからサルシューに変わった感じですね。
履いてきたシューズは1000足以上

──これまで何足くらいのシューズを履いてきたんですか?
正確には分からないですが、たぶん4桁は超えていると思います。家にも置いていますけど、入りきらないものは実家に送っています。それでも収まらないですね……。
──コレクターですね。
いや、それで言うと、集めることより「履くこと」が目的です。フットサルに行く時も、基本的には4〜5足は持っていきますから。1足だけで最後までプレーすることはほとんどないですね(笑)。
──4、5足ですか(笑)。
はい(笑)。休憩のたびに履き替えています。「この感触どうだろう」「今のコンディションだとどうか」みたいなのを、その場で確認したくて。
同じ体育館でも、時間帯や疲労で感じ方が変わるので、それも含めて試しています。
──プレーどころじゃないですね。
そうですね(笑)。試合を見ていても、あまりプレーは見ていなくて。どの選手が何を履いているか、そっちばかりを見ています。「このシューズ、この動きでどうなんだろう」とか、そういう見方になってしまうので、気づいたらずっと足元を追っていますね。
──ブラジルにも行かれていましたよね。
はい。それもほぼシューズ目的です。イベントに招待してもらったのですが、現地でもシューズをかなりいただいて。最終的に50足くらい持って帰ってきました。

──50足……。
はい(笑)。まだ全部は履ききれていないくらいです。順番に履いている途中なんですけど、新しいものが増え続けるので追いつかないんですよね。
ただ、「まだ履いていないシューズがある」状態って、すごくワクワクするんですよ。「次はこれを試せる」という楽しみがずっと続くので。
──プレーする以外の普段使いとしても履いているんですか?
履いていますね。フットサルシューズって意外と歩きやすいですし、あと、僕は車移動が多いので、普通のスニーカーよりも底がフラットで運転しやすく快適です。
外を歩いていても、「このソールの返り方いいな」とか、「この当たり方どうだろう」とか、無意識にチェックしています。
メーカーと距離を置く理由
──しゅう太郎さんにとって「至高の一足」とは?
それは「文句をつけようがない一足」です。機能も見た目も含めて、自分にとって全部がハマるもの。ただ、それって本当に出会えないんですよ。
だからこそ探し続けているし、僕がシューズを履き続けている理由でもあります。新しいシューズを履く瞬間って、「これが一番かもしれない」という期待があるので。
──試合中もシューズを見ているとのことですが。
試合を見る時も、まずは足元から入りますね。選手の足元を見て、「このカラー、このソール、この形ならこのモデルだな」と、ある程度は見た瞬間に分かります。
分からない場合は、映像を止めたり、チームのSNSを見たり、それでも分からなければ選手本人に聞くこともあります。
──選手に直接聞くことも(笑)。
ありますね(笑)。それで初めて分かることもありますし、そこから「この国ではこういうシューズが流行っているんだな」とか、トレンドが見えてくることもあります。
──足元だけで選手を当てることもできる?
選手によってはできますね(笑)。特徴的なモデルや履き方の選手だと、後ろ姿や足元だけで分かることがあります。「この履き方、このモデルならあの選手だな」みたいな。
──ここまで詳しいとメーカーと組むという選択肢もありそうですが。
ありがたいことに、お声がけいただくことはあります。ただ、基本的には特定のメーカーと深く組んで何かお取り組みさせていただくことはありませんね。

──それはなぜですか?
それは「全部履きたい」からです(笑)。どこかと契約してしまうと、他のシューズを履きづらくなりますよね。それは自分のスタイルではないなと。
どのシューズにも良さがあると思っているので、フラットに確かめたいんです。
──発信スタンスにも関わりますね。
かなり関わっています。僕はシューズを強く否定することはないのですが、そこにも理由があります。開発される側の背景もありますから、一方的に評価するのは違うなと。
自分は評論家ではなく「履いた人間としての感覚」を伝える立場だと思っています。
──それでも趣味として発信を続ける理由は?
自由でいたいからですね。履きたいものを履いて、気になったものを試して、それを発信する。そのスタンスを崩したくないんです。
世界の潮流と「TIGORA OSA-1」

──世界のシューズ事情をどのように見ていますか?
地域差がかなり大きいと思います。例えば、ブラジルは厚めでレザー系、インドネシアはかなり薄いモデルが主流などですね。オフィシャルの大会を見渡すと、JOMA(ホマ)やナイキが多いですよね。その中でホマを筆頭に厚底シューズの流れも出てきていると感じますが、それ一択というわけではなく、選手ごとに好みは分かれています。
──日本はどうでしょう?
Desporte(デスポルチ)やASICS(アシックス)が長くけん引してきたと思います。2010年にFリーグにリカルジーニョ選手が来た頃からナイキも日本で見るようになりましたけど、やはり体育館や大会ごとの「規定」によって、ソールの色がカラフルなものは「床に色が着く」と言う理由で履けない影響もありました。
昨今は「飴色のみ」といった規定は緩和されているところも増えましたけど、それでもなお、地方の体育館など、今でも厳しく言われることがあります。そうするとメーカーさんは履けない色は手を出せないですよね。飴色のソールはクラシカルで、オールドスタイルだと言われたりもします。海外の人たちは「なんで飴色しかないんだ」って。
海外の選手たちも日本メーカーの機能性にはすごく驚いて気に入ってくれるんですけど、デザイン性の部分で手を出してくれない。けっこう見た目を重視するんですよね。品質が優れているだけに、その問題は非常に大きなものだと今でも感じています。
──デザインも大事なんですね。
そう思います。それで潮流の話に戻ると、やはり日本国内のフットサルはまず、アシックスのデスタッキあたりが強かったですよね。競技系の選手は、僕もそうなんですけど、最初に履いた時に感動しました。2000年代中盤から後半にかけて、メーカーさんもすごく開発に力を入れるようになっていたと思います。それで、アシックスなら甲斐修侍さんや前田喜史さん、デスポルチなら上村信之介さん、hummel(ヒュンメル)なら市原誉昭さんといった感じで、カリスマ選手が着用することで、みんな憧れて履く感覚もありましたね。
そうした時代を経て、今はATHLETA(アスレタ)やLUZeSOMBRA(ルースイソンブラ)など新しい部類のメーカーを履いている選手も増えましたし、ホマやNew Balance(ニューバランス)などもよく見かけますよね。
2024年のフットサルワールドカップの全選手のシューズを集計したところ、1位は圧倒的にホマで、2位はナイキで“2強”のような感じです。少し数が減って、3位はMUNICH(ムニック)という感じだったので、そういう意味では、日本の市場は必ずしも世界と一致しているわけではなく、独自の変遷で流通も変化しているように感じています。
──全選手を集計したんですね(笑)。
Fリーグも毎シーズン、全選手チェックしていますよ(笑)。それと、カラーリングで言えば、日本では圧倒的に白が売れます。ここも海外とはかなり異なる傾向です。安定して売れるので、メーカーもそこに寄っていくのではないかと思います。
──4月にTIGORA(ティゴラ)から発売された「TIGORA OSA-1」をどう見ていますか?
このシューズも、すごく気になっていたんです。昨シーズンからシュライカー大阪の選手が履いていて、「なんだこのシューズは!?」って(笑)。なので、今回の発売を聞いて、なるほど、開発段階から選手が関わって、実戦で履いてきたのかと納得しました。
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──そうだったんですね。
はい。機能性の前に、まず一番おもしろいと感じたのは価格帯ですね。トップモデルで1万3000円前後は、今の市場の「空白ゾーン」にあたると思います。現在はどちらかと言うと2万円前後の高価格帯か、1万円を切る低価格帯の二極化が進んでいるなかで、その間を突いている価格になります。競技系の選手も手を出しやすいと思います。
──日本に「厚底」の新定番を生み出そうという狙いもあるようです。
日本のブランドが厚底をテーマにしっかりと作り込んできたのはすごく大きいですね。世界的に見れば、厚底は「定番」だと言えます。それが「主流」かは難しくて、選手によってはやはり薄底が好きな場合もあるので一概には言えません。ただ、そうした海外の“厚底系”に目が向いているなかで、日本のブランドがついに出てきたというか。
金型を一から作っている完全オリジナル設計で、見ればわかるレベルで作り込まれています。クッション性とボールタッチ感はトレードオフになりやすいものなのですが、そこにしっかりと向き合って開発されている印象があります。
──見ればわかるレベル。
僕の場合ですけどね(笑)。
──では最後に、しゅう太郎さん一押しのシューズの選び方を教えてください。
まずは、見た目から入るのがいいと思います。やっぱり、好きなもののほうが履きたくなるものなので。その上で、実際に履いてみる。お店の試し履きだとわからない部分は大きいかもしれないですけど、できれば1、2時間はプレーしてほしいです。
結局のところ、“合う”“合わない”というのは、人それぞれなんです。例えば「ベストは親指がこれくらい空いている状態」といった指標があったとしても、「親指が当たる」とか「窮屈な感じがする」とか、個人差で違うものです。その人における「ベスト」は異なるからこそ、一度、履いてプレーして、違和感があったらサイズを変えてみたりして、ああでもないこうでもないと感じながら試し履きすると、いい一足が見つかります。
──それはもう、かなりの“沼”ですね(笑)。
そうかもしれないですね(笑)。ただ、シューズの沼にハマってもらいたいので、ぜひ履いてプレーして選んでもらうことをお勧めします。その際に、インドアで蹴る時と、人工芝で蹴る時で、シューズは分けたほうがいいと思います。
ちょっとした違いがわかるようになると、シューズ選びが楽しくなりますし、履き替えながらプレーするワクワク感も得られるようになると思います。
ぜひ、たくさんの人にフットサルシューズに注目してもらえたらうれしいですね。僕はこれからも、至高の一足を探し続けたいと思います(笑)。
まだ見ぬ一足を履く瞬間が、いちばんおもしろいので。














