「自分たちの街のクラブだから」。残留を目指し共に戦うコールリーダーの話
PHOTO BY川嶋正隆
入替戦ではなく「追加公演」
今シーズンの浜松のリーグ戦績は3勝4分26敗。厳しい結果だったが、それでもなお、チームの残留を願って遠くから会場に足を運ぶ人たちが大勢いる。23日の第1戦も、サポーター席には熱気があった。
「皆さん! アグレミーナ浜松の“追加公演”にお集まりいただきありがとうございます!」
キックオフ直前、こーちゃんがやや自虐的に声を張ると、スタンドは笑いに包まれた。
「“入替戦”と言うと後ろ向きっぽい感じがするのでポジティブにいきたくて(笑)。僕らは大好きなチームの試合があと2試合も観られるんだよと。追加公演ですよ!」
そこに殺伐とした空気や悲壮感は無い。浜松からわざわざ足を運んだという親子連れの姿も目立ち、アットホームさと同時に「みんなで残留するぞ!」という一体感も感じられる。かくして運命の一戦の火ぶたが切って落とされた。
どこか放っておけない、見守りたくなるクラブ
浜松の立ち上がりは最悪だった。前半開始わずか17秒、DFラインの裏に抜け出た長野の10番・伊藤広樹に先制点を許してしまう。浜松のサポーターは一瞬下を向くもチャントを止めることなく、同時に「切り替えろ!」「頑張れ!」と声援を送る。
すると、左サイドで前を向いた10番・田中智基が得意のドリブルで持ち上がってシュート。これがゴール右下に決まり、すぐさま同点に追い付く。雄叫びを上げながらサポーターの前を駆け抜ける田中。総立ちで称え、歓喜するスタンド。不安定ながらもどこか期待感も抱かせる、実に浜松らしい立ち上がりだった。
「アグレミーナはとても人間的なクラブというか……まあ見守りたくなるクラブなんですよね。選手も個性的だし、プレースタイルもファンタスティックと言えばファンタスティックだし。そこをガツンとやられて負けてしまうということも多いんですけど。それでもどこか放っておけない、我が町のクラブという感じなんです」
一進一退の攻防の末、試合は3-3の引き分けに終わった。今日の第2戦に引き分け以上で残留できることを考えれば、決して悪い結果ではないだろう。
だが同時に、浜松の悪い癖が出た試合だったのも確かだ。前半開始早々の失点、前半終了間際の失点、さらに相手ゴール前まで押し込みながらもシュートで終われずにカウンターを受けての失点と、やられる時間帯と内容が悪すぎた。選手個々の能力では明らかに長野を上回っているだけに、浜松サポーターとしては歯がゆさの残る結果だろう。これまでに幾度となく繰り返されてきた光景だ。しかし、彼らがクラブを去ることはない。こーちゃんがサポーターを辞めようと考えたことは一度もないそうだ。
「勝つチームを応援したいというよりも、自分たちの街のクラブだから応援したいという気持ちが強いので。人間なら誰しもそうだと思いますけど、人生は上手くいかないことの方が多いじゃないですか。ましてやあんな個性的な選手たちがそろっていたらなおさら(笑)。勝った負けたは関係なく、いつまでも見守っていきたいと、個人的には思います」
残留したいと思うのは、選手が離れてしまうのが悲しいから
勝敗以上に大事なものがあると話すこーちゃん。とは言え、2部に降格していいということではなく、当然ながら残留を目指してともに戦う覚悟だ。
「カテゴリーが下がると、キャリアアップを目指す選手は離れてしまうと思うんですよね。チームを去るのはもちろん自由だし、その選手の意思を尊重したい。ただ、クラブのカテゴリーが下がることでどうしようもなくて出て行く……というのはちょっと悲しいじゃないですか。だから何とか1部に残ってもらって、その上で、キャリアアップを考えて移籍する選手がいれば、それは栄転ということで気持ちよく送り出したいです。あとF2は試合数も減ってしまいますから。来シーズンもF1で戦って、北海道や大分でまた美味しいご飯も食べたいです。明日は勝って、選手たちの笑顔を見たいです!」
浜松の選手、クラブ、そしてファン・サポーターにとって運命の第2戦。キックオフは同会場でこのあと、14:30から。泣いても笑っても今日で決まる。なんと入場無料だ。ドラマの結末を、ウナトラスとともに現地で見届けてみてはいかだろうか。
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