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作成日時:2019.12.25
更新日時:2019.12.26

主将でエースのプロ契約選手が、シーズン途中に電撃移籍。堀内迪弥はなぜ、仙台を離れたのか?

PHOTO BY軍記ひろし

真相を話せない苦悩のなかで下した決断

それは、普通ではありえないような出来事だった。

「堀内迪弥、シュライカー大阪へ完全移籍」

10月2日、ヴォスクオーレ仙台に所属する堀内迪弥の移籍が発表された。出場機会を求めて2016年10月に仙台へと新天地を求めた堀内にとって、3年ぶりの復帰。本来なら喜ばしいニュースのはずだ。だが、堀内は仙台に数人しかいない(選手だけで生計を立てられるという意味での)プロ契約選手であり、キャプテンであり、チームをけん引するエース。大黒柱のシーズン途中の移籍だけに、周囲に与える衝撃は大きかった。

「普通に考えたら、プロ契約を捨ててまで『なぜこのタイミング?』って、みんな思いますよね」

“シーズン途中の電撃移籍”の話題に触れると、言葉を選びながら静かにそう話した。

堀内の移籍が発表される前から、仙台には不穏な空気が流れていた。8月にホセ・フェルナンデス監督が契約を解除され、主軸のアランギタヒも退団。その理由は何も明かされていなかったが、クラブに“何かが起きている”ことは間違いように思われた。しかし、堀内に「移籍の理由」を聞くと、こんな言葉が返ってきた。

「大阪から仙台に移籍したときは、出場機会だけを考えていました。それから試合に出られるようになって、中心選手としてやれるようになりましたが、正直、もっと高いレベルの環境でもまれて、自分を高めたいという思いもありました。クラブとは(シーズン途中でも)契約解除できる条件があったので、社長にお願いして、やれるのであれば、プレーオフ圏内のチームでやりたいと話しました。挑戦しよう、と」

あくまで、自身が高みを目指すためのチャレンジとしての移籍だと強調する。もちろん、それも一つだろう。だが、理由がそれだけでないことは明らかだった。問いかけ続けると、堀内は少しずつ、重い口を開く。

「クラブもリーグも公表していないので、自分から言えることは限られてしまいます。でも、現状を知ってもらいたいとずっと思っていました。勘違いをされたままというのは嫌ですから」

彼の言う「現状」とは何か。それは、大阪への移籍発表から1カ月以上が経過してようやく、明らかになったことを指している。11月14日、Fリーグと仙台からそれぞれ、以下のリリースが発表された。

「ヴォスクオーレ仙台 来季F2降格決定のお知らせ」(Fリーグ)

「2020/2021シーズンF1クラブライセンス判定結果について」(ヴォスクオーレ仙台)

Fリーグクラブライセンス審査の結果、仙台は2020/2021シーズンディビジョン2(F2)への降格が決定したとする双方のリリースだ。「Fリーグクラブライセンス」は今シーズンから始まった制度だが、審査項目や基準、そして仙台の何がどのように基準に達していなかったのかなど、詳報は公表されなかった。

仙台はその2日後、ホームゲーム終了後に地元メディアに向けた記者会見を実施。東北のニュースを配信する『河北新報』によると、登壇した仙台の坂本理代表は、「Fリーグ側が1、2部を分ける明確な基準を公表していないため対応に苦慮した」とした上で、降格の理由を「財務の問題」と話したという。

財務の問題──。

クラブとして公にできる表現はそこまでなのだという。ただし、堀内が移籍を決めた理由にこの問題が無関係ではないことは、間違いない事実だろう。

堀内はもちろんのこと、クラブも、そしてメディアとしても踏み込んで伝えきれないことはある。そうしたなかで堀内が伝えたい思いとは、現実を受け止めた上で「前を向いて移籍した」ことではないだろうか。

「何もなければもちろん、そのままプレーできていたと思います。でも、自分が考えるタイミングなのかなと。引きずっても仕方がない。前向きにいこう。そう思って移籍を決断しました」

そして、彼の置かれている状況を理解してくれていた大阪が、堀内を引き戻した。

「大阪でプレーの幅を広げるために学びたいことがありますし、日本代表にも通じる戦術を学ぶこともできます。チームにフィットしていくなかで感覚をつかんで、日本代表に選ばれたときにそこで還元したい」。

7月にケガで離脱して、仙台での復帰を待たずに移籍した堀内は11月、大阪で戦列に戻った。プレーオフを目指すチームのピヴォとして、3年前とはひと回りもふた回りも成長した姿を見せている。主将・エース・プロ契約。そのすべてを捨てて決断したシーズン途中の移籍、ケガからの復帰。きっと、想像もできないくらいの困難に直面したに違いない。それでも堀内に悲壮感はなく、前を、上を目指し続けている。

「プレーオフに出たい。そして、大舞台で結果を出したい。日本代表ももちろん、狙っています。でもそこは意識しすぎず、パフォーマンスと結果にこだわる。決めるのは監督。足元を見つめ直してやるだけ」

チームのために、自分のために、日本代表を目指すために──。予期せぬ出来事に遭いながらも“挑戦”を選んだ堀内。“仙台の元エース”が「大阪のエース」と呼ばれる日が、そう遠くない未来に待っているはずだ。

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