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「柴崎岳との出会い」という挫折から14年。生粋の“フットボール小僧”が挑むW杯|ブルーノジャパンの肖像

PHOTO BY高橋学、本田好伸



柴崎岳との出会いが人生最大の挫折だった

──じゃあ、自分では挫折みたいに感じた経験はなかった?

フットサルを始める前、青森山田のときが一番の挫折かな。

──高校を中退したときのこと?

そう。もし、そのまま青森山田で高校を卒業していたら、たぶんサッカーはやめていたと思う。3年間で燃え尽きていたかなと。あのとき、途中でやめたからフットサルと出会って、今がある。あれは人生の挫折だったよ。名古屋のころの挫折が比にならないくらい。

──どうしてやめたの?

寮生活、上下関係、ホームシック、朝早い……。

──サッカーじゃないんだ。

いや、サッカーも。同級生の柴崎岳を見て思ったよね。こいつがプロになるんだと。度肝を抜かれた。あんなやつがいたら無理じゃんって。とんでもなく衝撃を受けた。

──そんなに違う?

うん、オーラとかも違う。中3から高3に交ざってプリンスリーグとかに出ていたからね。衝撃だったよ。あれが人生で一番の挫折だね。

──フットサルをやめようと思ったことは?

いや、ないかな。もしやめて北海道に戻っても地域リーグとかで続けていたと思う。あ、でも、今シーズンの開幕戦で、大阪に前半で0-5にされたときはやめようかなって思ったわ(苦笑)。それと、代表の遠征でスペインにボコられたとき。どうやって勝つのか、と。

──名古屋にやられたりすると、思っちゃうよね。

すぐに気持ちは変わるけど、そのときはしんどいよね。前半0-5のハーフタイムとか、大敗後のロッカールームとか、どうすればいいのか、と。

──恥ずかしい感じ。

めちゃくちゃある。

──放送されているし。

「戻ってきました、室田祐希! どうなる北海道!」で、0-5とか、あいつが戻ってきても意味ないじゃんって。恥ずかしい……。



試合中にキレることがなくなった

──選手として、こうなったらやめるとか決めているものはある?

結婚したら、かな。

──なんだそれ。

それはあれかな、動けなくなってきたら、かな。キレがなくなったら。(水上)玄太くんなんて9歳も違うけど、俺があと9年もやっているイメージはないよね。だから、1年ずつやるしかない。9年は頑張ろうではなく、1年、1年。

──まだそんな歳じゃないでしょ?

29歳。

──もうそんなになったんだ。

でしょ。だから1年、1年を頑張ろうって。こうなったら引退とかは特にないけど、体の衰えを感じたら考えると思う。そうなったらフィクソかピヴォにポジション変更するかも。

──それなら長くやれる。

でも、無理だと思ったらすぐやめるけどね。

──10代だった北海道の超若手がもうすぐ30歳に。なにか変わった?

顔を上げられるようになったよ。ボールを持っているときに余裕ができた。それと、当たり負けしなくなったよね。18歳のころは“渡邉さん”に吹っ飛ばされたことを今でも覚えているから、フィジカルも成長したね。それはこの数年の変化だけど。

──メンタルは? キレにくくなったとか(笑)。

それはあると思う。町田のころからかな。試合中にカッとなることが多くて、監督からも指摘された。それから意識するようになって、2年くらい続けてあまりキレなくなった。

──我慢したんだ。

そうだね(笑)。今は逆に、もっと昔のような荒々しさを出してもいいんじゃないかと言われることもあるよ。昔から見てくれている指導者の人からアドバイスをもらったりする。楽しんでプレーするだけじゃダメだって。試合に入るモチベーションとかメンタルって難しいよね。どんな気持ちで試合に入るかが定まらない時期はけっこうあったかな。

──参考にしている選手とかいるの?

いないかな。でも、スペインのアドリーとかはうまいと思う。背丈は一緒でも左利きだから参考にはできないけど、うまい。でも、海外の試合とかも、あまり見ないから。

──俺もそう。

仁部屋(和弘)とか未渚実にはたまに聞くけどね。ドリブルのときに考えていることとか。紅白戦で仁部屋に、ボディフェイントでガッツリ抜かれたときは聞きに行ったよね。あと、町田にいた(二井岡)嵩登とかにも聞いたね、ドリブルのこと。昔は聞けなかったけど、今ではアドバイスを聞くようになったかな。



警戒されていないからこそ、度肝を抜くのが楽しみ

──選手として目指している場所は?

W杯は一つの集大成だよね。ブルーノになってから、そこに行くために積み重ねてきたから。自分にとっての集大成かどうかはわからないけど、一つの区切りだと思う。

──今は目の前のW杯でどんなプレーができるか。試合に勝てるか。

そこは楽しみだね。終わってからどうなるかはわからない。もう1回、出たいとなるか。

──それこそ、和也とか若い世代は次の4年後を目指すわけだからね。

そうだね。年齢もそうだし、監督もそう。もちろん、選手として選ばれ続けないといけないけど、まずは終わったときにどういう気持ちになるかだよね。燃え尽きちゃうのか。また出たい、また4年後を目指すか。どうなるだろうね。

──いつから日本代表を意識した?

10年前は若手枠で呼ばれていたから、意識し始めたのはブルーノになってから。

──ミゲルのときは?

選ばれているけど、そんなに試合に出てないし、実感はなかったかも。

──目指すこと自体はもっと前でしょ?

そうだね。(2011年11月に)18歳で初めて呼んでもらってからは、入り続けたいと思った。でも、ほぼ知らない人だし、若手もいないし、行きたくない気持ちもあったけど(笑)。静岡で合宿したんだけど、静岡空港に着いてから、帰りてーって。トモさんもいたよ。

──俺も1回目のときは行きたくなかった(笑)。オーラと貫禄がすごいから。

そうそう。そのレベルに達していないのに、誰かがケガで辞退したから急遽呼ばれたんだよ。テツくん(村上哲哉)と同じ部屋だったことは覚えている。

──自分のなかで変化していったのはブルーノになってから。

そう、ブルーノに変えてもらった。さっきのドリブルのときに顔を上げるとか、そういう技術的なところもブルーノに教わったかな。

──じゃあ最後に、選ばれるかどうかはあるけど、改めてW杯へ向けての心境は? パラグアイとスペインにリベンジという話もあったけど、どういう気持ち?

そうだね。ブルーノは、パラグアイ、スペインじゃなく、まずはアンゴラ戦という話をしているし、俺らもそのマインドだね。リベンジが楽しみという話はしたけど、まず初戦。先のことを考えないで、初戦に合わせていかないといけないと思う。

──個人的にはどう?

たぶん、俺の情報は相手に全く入っていないと思うからチャンスだよね。ずっと3番を着けていたからね(※)。3だと(サッカーだと)CBじゃん。「こいつドリブラーかよ!」って度肝を抜けるよね。日本人とやるより、海外のほうが最初はわかりやすく飛び込んでくるからやりやすい。警戒されていないからこそ、度肝を抜くのが楽しみだね。

※編集注:現在、海外遠征中のメンバーに選ばれている室田祐希選手の背番号は7です



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