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2022.06.17

「松井大輔にはピッチに立ってほしい」。横浜・鳥丸太作新監督が目指す“ボールを保持する”スタイルとは?

PHOTO BY勝又寛晃/高橋学

Y.S.C.C.横浜は今シーズン、新監督を迎えた。鳥丸太作だ。

ステラミーゴいわて花巻、バルドラール浦安で選手としても活躍し、現役引退後に指導者の道へと進んだ鳥丸は今、新しい才覚を発揮している。

関東リーグのデルミリオーレクラウド群馬を指揮して、2020シーズンにリーグを初制覇。群馬県リーグからスタートしたクラブにとって、悲願の優勝だった。さらに小学生年代のフットサルチーム、RAD FCでは大人顔負けのプレス回避や連動したパス回しを構築し、業界で大きな話題を集めた。ほかにも、定期的にアドバイザーとして関わる育成年代のチームでも、軒並み子どもたちの目を見張るようなプレーを引き出しているのだ。

そんな彼が、満を侍してFリーグに挑む。

鳥丸監督が目指すのは「ボールを保持するフットサル」。とりわけ、フットサルらしい戦術をチームに授け、サッカースタイルとの融合を図る今シーズンは腕の見せどころだ。

高校年代や大学サッカーで研鑽を積んだ“ポテンシャルの宝庫”と言われる横浜の選手たちが、鳥丸監督の指導を経て、どんな進化を遂げるのか。

新生・横浜スタイル。クラブを新しいフェーズへ導く鳥丸監督が思い描くものとは。

※インタビューは5月11日に実施

インタビュー・編集=渡邉知晃

♦︎Fリーグ2022-2023 試合日程・放送予定♦︎

鳥丸スタイルで目指す新しい横浜フットサル

──まずはY.S.C.C.横浜の監督に就任した経緯を教えてください。

横浜のGMから電話があり、「ぜひ監督をやってほしい」というところからでした。全く予想していなかったし、Fリーグの監督を自分がやり切れるだろうかと思っていたので、最初は断りました。

だけど、せっかくもらった話ですし、練習を見に行きました。トモ(渡邉知晃)もわかると思うけど、横浜ってすごくおもしろい選手が多い。それを見てからは「やってみたい」と思い始めたのですが、当然、いろんなハードルがありました。

特に、デルミリオーレクラウド群馬の監督兼選手をしていたので、そこを離れる影響と、仕事のこと。基本的には夜に仕事をしているので、横浜の練習は早朝ですから、本当にさまざまな部分を変えないといけないなと。でも、クラウドの代表の小林洋介さんに話したらすごく後押ししてもらえて、仕事仲間も協力してくれて、トントン拍子で話が進みました。

本当にゼロだったところから動き始めて、やることになりました。

──当然、契約は複数年のオファーですよね?

最初に「2年は見てほしい」という話をもらいました。でも自分は、クラウドでもそうだったのですけど、「ダメだと思ったらいつでも切ってもらって大丈夫です」と伝えてきました。2年契約ですけど単年のつもりでやっています。

1年というよりもさらに短いスパンで、結果が出なければ切ってもらっていいし、自分の取り組みや選手を見て、良くないと思ったら遠慮なく言ってくださいというスタンスです。

──どうやってほしいという具体的な話は?

まず、プレーモデルは好きにやってくださいと言われました。チームの目標は、タイトルを意識しながら戦えるチームにしてほしいというところですね。

──今シーズンの始動は?

4月6日ですね。Fリーグのなかでは早いほうだと思います。横浜武道館が使える日だったので、そこに合わせて始動しました。

──1カ月やってきた感触はどうですか?

振り返ると、まず選手がよく順応してくれている印象です。大きな視点で見れば順調です。今までの横浜は、ピヴォに当てることを中心に攻撃をつくっていました。それを変えて、選手同士が近い距離でボールポゼッションをすることが多くなってきました。DFのここをついてほしい、こうやってズラしてほしい、こうやって数的有利を作ってほしいと俺がうるさく言っているので。選手も我慢強く、自分に歩み寄ってくれている印象です。

──鳥丸監督が目指すスタイルやシステム、戦術は?

まずは、システムにとらわれないところを目指しています。俺の好みは、しっかりボールを保持しながらプレスを回避して、DFを観察して手前でのカットインで数的有利を作り、それがダメなら飛ばしてプレスを回避して前進すること。

裏に蹴るのがダメなのではなく、チームで共有していれば、そこに蹴ることもあります。選手同士の近い距離感から、まずはボールをしっかりと持つことで攻撃の時間を長くする。そのままプレス回避で前進できたら、ピヴォに強力な選手がいるので、彼らを使って攻撃しつつ、アラにもタレントがいるのでそこの1対1も使いながらフィニッシュまで持っていく。

システムという言葉を使うと役割が固定されてしまうから、とらわれずに流動的にしたい。「ボールを持つこと」がコンセプトのチームづくりをしています。

──監督1年目ですが、具体的な目標はありますか?

もちろん「タイトルを取る!」と言いたい気持ちはあります。チームの目標も自分へのオーダーもそこなのでそう言いたいけど、現実的には「リーグで3位以内に入ること」です。昨年が10位ですから、いきなり「タイトル」とは俺の性格上、言いづらいから複雑です(苦笑)。もちろん上を目指してやるけど、謙虚にやりたいという気持ちもあります。

鳥丸監督が二刀流・松井大輔に望むこと

──松井大輔選手の起用法について、鳥丸監督はどのように考えていますか?

まず、松井選手は、Fリーグの試合のピッチにできるだけ立ってほしいと思っています。役割としては、以前はピヴォに固定して入っていたイメージですが、彼の持っている技術はセンターレーンでこそ生きると思っています。そのレーンでのプレーが、彼のファンタジスタとしての即興性、パスセンスや、俺には見えないようなタイミングやパスコースを持っていると感じますから、そういうところで力を発揮してほしいと思っています。

──コミュニケーションは取れていますか?

サッカーのJ3がスタートしていますし、“二刀流”は松井選手自身も初めてのことですから、かなり難しさを感じながらやれることをやっています。事実として、フットサルのトレーニングにフルコミットできているとは言えません。ですけど、なんとかうまくフォーマットをつくって、できればサッカーとフットサルの両方で活躍してほしいと思っています。

──Fリーグ開幕後も両方を行き来する?

そうなります。

──開幕後も比重の置き方は変わらない?

それは、サッカー側のフロントと相談ですね。これはあくまで個人的な考えですけど……松井選手はサッカーの元日本代表ですし、経験も申し分ないですから、サッカーへのアジャストは早いと思います。だからこそ、フットサルに多めに出てほしいな、と。

フットサルは人数が少ない分、試合中一人にかかる責任の比重が大きいですし、俺としても伝えたいことがまだまだたくさんあります。フットサルの数的有利を生み出すためのあらゆるアクション、マークを外す、外せたら自分が止まって受けることでフリーになるなど、そうした技術はフットサルでこそ獲得できるものですから、それらをサッカーに生かしてほしいなと、個人的には思っています。

鳥丸太作が影響を受けた3人の指導者

──Fリーグ以外でも、指導をしているんですよね?

はい、横浜以外には、育成年代のRAD FCと、他にスクールもやっています。

──1日のスケジュールはどんな感じに……?

そうですね、朝4時に起きて、4時半に家を出発して横浜へと向かい、6時から8時まで横浜のトレーニングをしています。その後、前田佳宏強化部長とランニングをしたりしながらチームのことを話しています。それから埼玉のRADアカデミーの場所へ移動して事務作業をこなし、夕方からスクールで指導してから夜に帰宅するという流れです。

──なかなかハードですね。そもそも指導者になったきっかけは?

仕事として本格的に指導を始めたのは、ブラジルから帰ってきた26歳か27歳くらいですね。その当時もまだ選手をしていたので、子どもたちになにかを伝えられたらいいなという思いで始めました。今考えると、正直なところ専門的な指導の知識を持っていませんでしたし、至らないことだらけだったように思います。

──少しずつ指導について学んでいった。

はい、もっと勉強しないといけないな、と。33歳でFリーグの選手をやめてから指導者ライセンスの講習会を受けに行きました。そこで指導の深さや、自分に足りなかったところを勉強できました。人に伝えることへの楽しさを感じたのもその頃ですし、フットサルの技術をサッカーに生かしてほしいと思っていて、自分が言語化して伝えるんだと意気込んでいました。そんなときに、クラウドの小林さんから電話をもらい、トップチームの指導と選手をやらないかと。実際に指導してみて思ったのは、トップチームでやることは、子どもたちに指導することとそんなに変わらないということ。それからは自分が試してみたいことがうまくリンクしていって、本格的に指導者として活動を続けていきました。

──鳥丸監督のフットサル観や哲学のベースにあるものは?

最初のベースは、パコ・アラウホさんに学びました。ステラミーゴいわて花巻でプレーしていた当時の監督です。パコは、相手のDFのタイプによってサポートの方法や人の配置を変えていました。相手のズレを生むやり方が本当に秀でていました。自分がDFの配置や選手のタイプを見るうえで、パコ監督のやり方に多くの影響を受けていると感じています。

あとは、ずっと一緒に仕事をしている高橋健介(現日本代表コーチ)のあらゆることを参考にしています。それと、浦安時代にお世話になった岡山孝介監督。数多くの監督とやったわけではないですけど、この3人はいろんな側面から参考にすることが多いですね。

サッカーとフットサルに取り組む子どもたちへ

──RAD FCは、子どもたちが、個人技ではなくクワトロの動きなどでパスを回しながらプレス回避していく映像が話題になりました。どのように指導しているんですか?

例えば「優位性を持ってプレーすること」。これは本当に大人も子どもも同じです。それを考えながらプレーすることが大事です。

一番強い優位性は数的優位ですけど、それができたらどうするか。2対1ができたら、幅と深さがをつくれたら突破できるよね、と。これは大人でも抜け落ちる部分ですし、特に足元の技術がうまければうまいほど、スペースの優位性を使えなくなってしまう。

でも子どもは素直なので、「幅を取って」と言えば幅を取るし、「高さはこういう高さ」「タイミングはこうがいい」と伝えていくと徐々に2対1に気がついていき、狙いを持つことで考えながらプレーするようになる。これが一番大事なことだと思います。

──なるほど。

トモは、サッカーをやっている子どもとフットサルにも意欲的に取り組んでいる子どもの大きな違いってどこだと思う? 例えば、いろんなところでサッカーの一環としてフットサルを教えてくださいというオーダーをもらって指導するときによく見られるんだけど。

──どこだろう。

フットサルに触れていたり、頭を使う複雑なメニューに慣れていたりする選手の場合、俺が「こうしよう」と伝えたときに、前の子の真似をしない。つまり、自分の頭でメニューを聞いて狙いがなにかを理解できるから、どこに並んでどうすべきか、すぐにパッとできる。

だから、「考える力」を伸ばすという点で、フットサルはすごくいい。フットサルは「足元の技術」や「ドリブル」、「ボールタッチ」の習得にいいと言われるけど、考える力を伸ばし、スペースを理解することのほうが、獲得できる要素としては価値が高いと思う。

──RAD FCの子どもたちはサッカーもやっているんですよね?

そうそう。埼玉県の戸塚FCJというチームでやっています。むしろ、戸塚FCJの選手は全員RADに入っていて、火曜はフットサルのトレーニングをしています。俺は戸塚FCJのテクニカルアドバイザーをしているので、サッカーとつながるようなプレーモデルの話をさせてもらっているという感じですね。選手はサッカーでも活躍しています。

──RAD FCの選手には将来どうなってほしいですか?

判断力や考える力を持った選手になってほしいと思っています。でも一番は楽しむこと。

みんな「プロになりたい」と言いますけど、個人的にはどのカテゴリーであっても、楽しんでやることが一番だと思っています。ほとんどの人にとって、フットボールを始めたきっかけは「ボールを蹴ることが楽しい」だと思うから、それを忘れないでほしいなと、この年齢になってすごく思います。高い目標を持って、楽しみながら努力してもらいたいなと。

それさえ忘れなければ、どのカテゴリーでも、もちろんプロでも、サッカーでも、フットサルでも、草サッカーでも、自分に合うチームや環境で楽しめると思います。

サッカーに最も生きる、フットサルの魅力

──昔からテーマになってきた「フットサルはサッカーに生きるのか」ということで言えば、鳥丸監督としては「考える力」が身に付くということですか?

うん、絶対にそこだと思う。他のスクールを否定するわけではないけど、サッカースクールを見ていると、判断する要素がすごく少ないと感じます。ボールを持っている選手がいて、そのままずっと自分のボールにしている選手が多いな、と。

そういう選手にスペースの話をしてもなかなか頭に入っていきません。こういう話をするとよく勘違いされるのですが、パスしないといけない、ということではありません。

その都度、パスかドリブルかを考えて決める、判断することが大事。日本代表などトップの世界では、監督が考える戦術があり、監督のオーダーに応える必要があります。そのうえでさらに自分の特徴を出すことは、どのカテゴリーでも大事なことだと思いますから、なぜそうしたことを身につけるトレーニングをしないのだろうと思います。

──ドリブルで仕掛けるところと、パスを出すところの判断が大事。

もちろん、1対1のスキルは世界と戦ううえでも必要だけど、それだけの選手は絶対にいない。これは想像ですけど、久保建英選手が、もしスクールを立ち上げるなら、彼はドリブルもめちゃくちゃうまいけど、それに特化した内容にはしないと思う。

他にも重要なことがあると知っているから。憶測だけどね(笑)。トモだって、得点力が持ち味だからシュートに特化した内容でやるとしても、シュート技術だけがすべてじゃないと伝えるでしょ。考える力があっての技術。それがフットサルの可能性というか、フットサルをやる意味として、大きな価値になってくれたらいいなと思っています。

──そうですね。トップ選手の指導と子どもの指導は共通する部分も多い?

スペースやタッチ数などで言えば、トップカテゴリーの横浜の選手が一番複雑で難しい連動をしているけど、ボールを動かして2対1をつくる動きとかはどのカテゴリーでも同じだね。2対1になったときのアクションや優位性を生かすことは、子どもに対して伝えることも一緒だし、これは変えようがないと思う。ロングボールの使い方とかはカテゴリーでも違うから全部が同じとは言わないけど、共通する部分は多いですね。

──では、最後に今シーズンの意気込みをお願いします!

俺自身が「ボールを持つこと」をコンセプトにしているから、迫力あるプレッシングからの即時回収を狙うところを含め、チャレンジしていきます。リスクをかけてでもチャレンジする姿は見せたいです。自分が選手のときは、ボールを持つことが楽しかったし、ボールを持ちながらゴールを狙いにいくところに楽しみを覚えていたから、今の選手にもそういうことを伝えています。だからこそ、今シーズンの横浜は、選手が楽しんでいるところも見てほしいですし、それを見ている人たちも楽しいと感じてくれたらうれしいですね。

──今日はありがとうございました!

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