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2023.01.18

金山友紀さんへの手紙。現ホルモン焼き屋、元フットサル専門誌ライターが綴る極めて私的なメッセージ

PHOTO BY高橋学/高田宗太郎

フットサルマガジンピヴォ!という雑誌をご存知だろうか。

Fリーグ発足のはるか前に刊行されたこのフットサル専門誌に、創刊号から続く「ふっとさる虎の穴」という人気連載があった。

現役時代の甲斐修侍監督が師範を務めるこの誌上クリニックの副師範・金山友紀と、見習い編集部員だった記者が出会ったのは、今から20年も前のことになる。

以来、ピヴォ!、ナビ、ホルモン焼き屋(現本業)を経てSAL編集部員に至るまで、その背中を見つめてきたらしい。そんな男が綴った「金山さんへの手紙」。

極めて私的な文章だが、「甲斐師範の引退時も手紙を公開したので、今回だけは」と懇願するピヴォ!時代の先輩記者の思いを汲み取り、SAL副編集長である私、本田の判断で掲載することにした。

偉大なキャリアを終えようとする金山友紀選手へ。

そして読者のみなさまにとって、それぞれの思いを馳せるキッカケにしていただければ幸いである。

 

金山友紀さんへの手紙

拝啓 金山友紀 様

「ボクね、ドラマや映画を見て泣くことってないんですよ。でも、岡崎慎司選手のプレーと、中山雅史選手のプレーを見ていると、泣きそうになるんですよ。ライン際までボールを追う姿とか、負けてても最後まで諦めない姿勢とか。なんかね、涙、出てくるんですよ」

わかる。わかるよー、やべっち。わかります。

でも、ね。もう1人。

「フットサル界には、金山友紀って選手がいるんです」

絶対、お気にめしますからー
誰か教えたげてぇーーー

そんなことを日曜深夜に思ったのは、もう10年以上前のお話……。

でもね金山さん、これは総意です。金山友紀を見たことがある人の総意なんです。

心を、動かされるんです。あなたのプレーを見ると。時として涙が出るほどに。

これまでフットサルで感じた、感情の総和──試合を見て感じた興奮や衝撃、話を聞いて知った驚き、喜怒哀楽すべての感情、を全部足した総量──の中で僕の場合、金山友紀によってもたらされた割合がかなり多いんです。昔ほど試合を見てない、というのはありますが、やっぱり今でも。ツボなんでしょうね。

それはきっと、僕が意志の弱い、どうしょうもない人間だからで。仕事や日常生活において、

あなたのように強くないから、ボールが切れる前に、気持ちを切ってしまうし。
あなたのように勇気がないから、ファーポストに限らず、思いっきり飛び込めない。

まいっかと妥協して、ある保証のない明日を打算してしまうわけです。

だからこそ憧れるのです。職人のようなあなたに。あらがい続けるあなたに。一瞬一瞬に、全力で、魂を賭して、命を削ってプレーするあなたに。

魂が震えるんです。

金山さんにも来てもらったことがありますが、本業のホルモン焼き屋を営む中で気づいたことを少し。

金山さん、知っていますか、包丁って研げば研ぐほどすり減って、刃の面積が減っていくんです。僕の肉切り包丁は、早いスパンで研ぐので、そのペースもまた早い。

研ぐほどに切れ味を取り戻し、また肉を切り、時に刃こぼれ、やれ研ぎ澄まし。

そんな日々を繰り返して、包丁を握る中指がまな板に付くころには僕もいっぱしになれたらな、と。包丁を研ぐ頭の中はいつもミスチルと金山さんです。

金山友紀はオリハルコン──電光石火で相手の首元を切りつけるビッカビカに研ぎ澄まされた世界最高峰のナイフ──でした。

ただ、旅には終わりが来るもので。あと何振りなのか。刃の面積がもう大きくないこと、「全身全霊の一振り」を見られるのがそう多くないことは、ここ数年、感じていました。

それでもあなたは、今までと同じように刃を研ぎ澄まし、最後の一瞬まで全力でプレーし続けることでしょう。

1月22日、最後のホームゲームは、店を臨時休業にしてその勇姿を目に焼き付けに行きます。

と言いたいところでしたが、引退発表より前に予約が入っていたので休むことができません。本当は22日、町田市立総合体育館のミックスゾーンで、お話を聞かせてもらおうと思っていたのですが、叶わないので手紙を書きました。

けれど「お疲れさまでした」はまだ似合いません。「ありがとうございました」も。

プレーオフか全日本選手権、店を休む準備はできています。

本当に申し訳ありません。

こんなにもたくさんの感動をもらったのに僕はまだ、最後の最後、全力で走り切る金山友紀の、その炎が美しく燃え尽きる瞬間に、そのラストシーンに、今世紀最大級の期待をしています。

2023年1月11日
高田宗太郎

 

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