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作成日時:2023.03.06
更新日時:2023.03.08

湘南・鍛代元気が引退記者会見&交流イベントを開催「全日本選手権で僕を見逃さないでほしい」

PHOTO BY髙橋学

4日、湘南ベルマーレは、今シーズン限りで現役引退を表明している鍛代元気の記者会見、およびファン・サポーター交流イベントを実施した。

鍛代は、湘南ベルマーレのサッカースクールのコーチに従事しながら、湘南のフットサル下部組織であるP.S.T.C.LONDRINAに入団。2012-2013シーズンにトップチームに昇格すると、デビュー戦でいきなりゴールを決め、同年8月のアグレミーナ浜松戦ではハットトリックを達成するなどファン・サポーターの心をつかんだ。

2014シーズンから2年間ブラジルでプレーし、2016-2017シーズンに湘南に復帰すると、4年連続で2桁得点をマーク。今シーズンは6ゴールに留まったものの、アウェイのバサジィ大分戦では2得点をマークするなど、アリーナを大きく沸かせた。

現役最後のリーグ戦を終えてから1カ月、そして現役最後の大会である全日本選手権1回戦を控えた鍛代が、記者会見とファン・サポーターからの質疑応答に応じた。

アウェイの試合が特に楽しみだった、現役最後のシーズン

──現役最後となったリーグ戦を振り返って。

まずはJリーグの川崎フロンターレ戦も行われているなかお越しいただいたみなさまありがとうございます。

今シーズン限りの引退を決めてから、発表のタイミングを考えた時に、リーグ終了直後や全日本選手権の前ではなく、リーグが始まる前に引退を発表させていただきました。理由としては、僕のプレーを見逃してほしくないなという気持ちが強かったからです。

ここまでプレーできたのは、本当にいつも応援してくださるみなさまのおかげだと思っています。感謝の気持ちをプレーで返せたらと思って、この最後のシーズンをスタートしました。

いつものシーズンとやはり違うのは、どの試合も、もう2度とないということ。ホームでもアウェイでもどんな環境でもベストを尽くすということを一番に考えていましたが、特にアウェイ戦が楽しみでした。長年一緒に湘南でプレーした選手も移籍して相手チームにいたりもして、彼らと試合することはないんだなと。勝った負けた以上に感慨深かったです。なので、アウェイ戦はピッチに最後まで残ることを、この1年はしていました。移動の時間もあるので必ずしもそうはいかないんですが、今日の試合についてみなさんが話している様子をピッチで見ながら「ありがとうございました」という気持ちで見届けるのを決まり事にしながら、この1年はアウェイ戦に臨んでいました。

ホームの試合も湘南のファン・サポーターは日本一だなと改めて感じさせられた1年でした。声出しもOKになって、それもパワーになりました。毎シーズン思っていましたが、このサポーターの熱量に選手がいかにして、どうついていくかが重要だと考えていて、僕たちはそんなファン・サポーターに日本一へ導けていないことには、応援されているうれしさの反面、悔しさを強く感じた1年間でした。

プレー面でいうと、これが引退の理由の一つにもなっていますが、自分自身が全然うまくなっていないなと。みなさんにどう見られているかわかりませんが、「こんなことできるようになった」「こんなことに気づけるようになった」ということがなかった。それは、残念ながら今シーズンもなかったです。

でもそれは、僕の選手としての成長の側面の部分だけで、チームの勝利というのが一番にあるなかで、ある程度はチームの勝利に貢献できたんじゃないかなと思っています。評価するのは僕じゃないですが、そういう意味ではリーグ戦の全試合、よくやったなと自分をほめたいと思います。

──この日を迎えてどんな気持ちですか?

今この瞬間は、気落ちが整理できていて、引退した後のことよりも目の前の試合の準備に向かっている状態です。ただ、リーグ戦が終わってから一週間くらいは喪失感とまではいかないですが、「終わっちゃったな」と。全日本に気持ちが向かなかなくて、「これじゃまずいな」と思いつつも、でも終わっちゃったなという気持ちが強かったです。そこから、全日本に向けて気持ちを立て直すのに時間がかかりすぎてしまいましたが、ただもう今は、大丈夫です。

──今シーズン、アウェイゲームのなかでも特に楽しかった試合は?

勝った負けたは置いておいてあえて選ぶなら、2つですね。アウェイ一発目と、最後の試合ですね。どこでしょう(笑)。

最初が北九州で、最後が大分ですね。どちらのチームも湘南で長く一緒にプレーした選手がいて、行く前も試合中も楽しかったです。終わってからも、彼らと試合ができて良かったなと思えた試合でした。

──相手の選手から声をかけられて、印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

僕はFリーグでは湘南でしかプレーをしていないし、代表経験も選抜経験もなく、ヒサさん(故・久光重貴氏)がやっていたフットサルリボンの活動くらいしか横のつながりがほとんどありませんでした。それでも、もともと湘南だった選手以外でも何人か声をかけてくれた選手がいて、一番びっくりしたのが、Y.S.C.C横浜の堤(優太)選手が、終わって一番に「お疲れさまでした」と言いに来てくれたことですね。今までほとんど話したことなかったんですが、そういうふうに声をかけてくれる選手もいるんだなと。うれしかったですし、応援したくなりました。

人に恵まれながら、競技を継続し続けた

──この1年のなかで、引退をやめようと思ったことはありましたか?

それがないんですよね。チームメイトのなかでも特にミッチー(堀内迪弥)とかは、練習に来るたびに「来シーズンやるんでしょ?」と言ってくれたし、(高橋)広大とかも同じように言ってくれていましたが、来季もじゃあやろうかなという気持ちにはならなかったですね。やりきったというか、これ以上はできないなというか。今シーズンでおしまいというところで、自分自身に向き合えていると思います。

──鍛代選手の、選手としての座右の銘は?

座右の銘と言えるかはわかりませんが、好きな言葉は「継続は力なり」ですね。

僕は子どものころから三日坊主で、そういう子どもだったからそういう言葉をくれたのかはわからないんですけど、親から言われた言葉がすごく残っていて。

というのも、僕は幼少期からサッカーを続けてきましたが、選抜やトレセンに選ばれたこと、全国大会に出場したこともないんです。それでも競技をやり続けてきたから今はこうしてベルマーレのユニフォームが着られている。なにがあったらそうなれたのかというところを考えると、継続してきたからですよね。

三日坊主と言っても、サッカーについてはやらない生活があるんだということが、自分にとってはむしろ驚きでした。小学校を卒業した時も、「もうやめようと思う」「サッカーじゃない部活に入ろうと思う」という道に進む友達もいて、その考え自体を否定することはないんですが、当時の僕には考えられなかったです。生涯スポーツ的な側面もあるので、「やめる」という選択肢があるのは衝撃でしたね。

その後の進学でも、部活にするかクラブチームに行くかの選択はあっても、やめるという選択肢はなかったです。今まで自分よりうまい選手はいっぱいいましたけど、なにかのきっかけで競技から離れる判断をしている選手もたくさんいる。それでも僕はここまでサッカーやフットサルを続けてきたからこそ、今があるんだなと。やめてしまえば能力があっても、上に行くことはできないですから。なので、好きな言葉に選ぶのなら、「継続は力なり」になりますね。

──選手人生のなかで、特に影響を受けた人は?

もともと県リーグでプレーをしていましたが、きちんとフットサルに競技として向き合い始めたのが、湘南の下部組織であるロンドリーナに入ってからでした。その時が伊久間(洋輔)監督、そして今も伊久間監督です。図らずとも、最初も最後も伊久間監督という形で、僕はフットサル生活を終えることになります。

伊久間監督は、今でこそあまり選手に強い言い方で要求をすることはないのですが、ロンドリーナの監督時代はもっと厳しかったんですよね。ただ、当時の僕はそれもあまり気にしていなくて、「この人が言いたいことはなんなんだろう」と考えていました。サッカーとフットサルの境界線って言葉にするのは難しいんですが、その境界線を自分のなかに作ってくれた人だなと思っています。

あとは、僕が15番を着ける理由でもある関新さん。一緒にトップチームの選手としてピッチに立つことはできませんでしたが、僕はスクールコーチでベルマーレに入団した時に傷害保険の仕事の担当をしていて、関さんはフットサル選手をしながら湘南の金庫番として経理の仕事もしていました。

最初はその仕事で関わるようになって。「選手をしてるのに経理もしているんだ」と思っていましたが、毎試合が終わって仕事場で顔を合わせると試合の話やフットサルの話をしてくれて、僕もベルマーレでフットサル選手としてプレーしたいという気持ちにさせてくれた選手の一人でした。本当は一緒にプレーしたかったです。

そして外せないのはヒサさん。僕が馬入でコーチをしているときにヒサさんが管理人として働いていて、挨拶をする関係性になって。湘南の公式が出しているヒサさんのロングインタビューの記事を読んで、「読みました」と伝えてから特に気にかけてくれるようになって、公私にわたってお世話になり続けました。もし良ければ僕のTwitterの固定ツイートにリンクを張り付けているので、ぜひ読んでみてください。

僕がフットサル選手になってからは、ヒサさんが管理人としての業務が終わった後に「元気、自主練に行くぞ!」と誘ってくれることも多かったですね。当時、僕がまだ若手で、「お前はチームの練習だけで他の選手に勝てるのか?」と言うんです。彼が言いたかったのは、プレー経験が多い他の選手と同じ練習量で、その選手たちの枠に入れるのかと。その時に「やれ」じゃなくて、「やるぞ」と声をかけてくれた。ヒサさんと関さんがいたから、ベルマーレでプレーしたいなと思ったし、ヒサさんとは一緒にプレーできて良かったなと思っています。

ちょっといろんな人の顔が浮かびすぎて、あとから「名前挙げてなかったじゃないか」と言われちゃうんじゃないか心配なんですが(笑)。

あともう一人だけ挙げるなら、刈込(真人)ですね。彼は僕がロンドリーナに入るときはすでにチームにいて、1年間一緒にプレーして、同期入団でトップチームに昇格しました。

僕は途中でブラジルに移籍しましたが、彼はずっとベルマーレでプレーをして引退しました。彼は本当に面倒見がいいんですよね。ツンツンしてそうで、最初はそうは見えないですけど。ロンドリーナ時代も車で5分くらいのところに住んでいたので、公私ともに一緒に過ごす時間が長かったです。あとは、名古屋まで練習試合に行くときも乗り合いで彼が車を出してくれたりもして。一緒にトップに上がるときもいろんな話をしました。彼が引退した年は、最後とあるはずだった全日本選手権が中止になってしまってすごく悔しかったです。

自分は本当に人に恵まれたなというところがあって、ちょっと挙げきれないのでこれくらいで止めておきます(笑)。


──この現役生活のなかで、特に印象的だった試合は?

うーん…..。平塚開催だったり、あとは僕ハットトリックもしたことあるんですよ。初のオーシャンカップ決勝、キャプテンマークを初めて巻いた試合……。色々ありますね。

ただ、印象的だったゴールは2つあってひとつは刈込のゴール、そしてもうひとつはヒサさんのゴール。少し記憶が曖昧なんですがこの2つが、同じ試合だった気がしています。

ヒサさんのゴールは、アウェイ戦で僕がアシストしたシーンがあって、Fリーグの公式サイトに「久光選手9試合ゴール」と出してくれたんですよね。その時の写真がすごい素敵な写真でそれはすごい覚えています。それで、「今度は僕にアシスト待ってますね」と伝えた記憶があります。

もうひとつが、刈込のリーグ戦初ゴール。それもたしかアウェイ戦で、僕が左サイドを上がって無理やりシュートして、こぼれ球を刈込がゴールして。先ほども話したとおり、ルーキーイヤーは全然試合に絡めていなくて、苦しい時期を過ごしていたのも近くで見てきたので、どちらのゴールも自分が関わることができたのですごく嬉しかったです。

軸足はサッカーコーチ、そして蹴り足で新たな挑戦へ

──今後の活動予定は?

確定はしていないですが、サッカーの湘南ベルマーレの子どもたちに指導をしていますので、そのままアカデミーの活動に自分の軸足を置くかなと。

軸足の一方で、他方の蹴り足あるんですが、そちらでフットサルクラブでなにかをやるかなと。自分のやりたいこともいくつかあるので、いろんなことに挑戦していきたいです。その経験が人として幅を広げるし、そういう人間が子どもたちになにか伝えるときも自分にとってもいいと思います。

今よりも1年後、2年後の自分のほうが成長しているイメージを描けると思っているので、軸足を置きつつもいろんなことをやりたいなと思っています。

──やりたいことについて、言える範囲でいいので教えてください。

まずは、「元気アリーナ」をつくりたい。スポーツパークみたいな形にするのか今は模索中ですが、フットサル専用アリーナというよりかは、そこに集まれば老若男女が楽しめる居場所をつくりたいです。そこがうまくいけばなのか順番はわかりませんが、湘南のユニフォームの胸に名前を入れたいですね。ここに「鍛代元気」と名前が入るのか。(ユニフォームの規定的に)入らないかもしれませんがチャレンジしていきます(笑)。

──引退後のセカンドキャリアについて。あとは、ブランドの立ち上げはありませんか?

セカンドキャリアについては先ほどお話した通りですね。ブランドについては、実はもう立ち上がっているんですよ。知られていないのは、そこに力が注げていないということなので、そこも本格的にやっていきたいですね。

ちなみにブランド名は、「No.15」というアパレルブランドです。たしかに全然告知もしていないですし、知らない人が多くて当然です(笑)。これを機会に知ってもらえたら嬉しいです。

──将来的にはFリーグかJリーグで監督をしてもらえる未来はありますか?

指導者になりたいと思ったときに、監督になりたいとは思っていました。“思っていた”ということは、今は考えていません。ただ、将来的にやりたいと思ったときにできるように、ライセンスを取得しておこうとは思っています。ただ、現状は監督になりたいという気持ちはないです。

今、アカデミーでコーチをしているのは、子どもたちがサッカーを好きになったり、楽しいと思ってもらえたり、あとはベルマーレを好きになってもらう瞬間にかかわれることが楽しいなと思っているしやりがいを感じているからです。なので、トップカテゴリーでの勝ち負けに自分の重心を置くというよりかは、ベルマーレの試合で勝った負けたで一喜一憂できるようなファン・サポーターを増やしていきたいという気持ちが強いですね。

──選手としての復帰予定は?

復帰する予定はありません(笑)。神奈川県リーグで復帰するらしいという噂が流れているようですが、それはないです(笑)。

プレーをする気はありません。やるなら妥協したくないし、妥協してやらないとなると、県リーグのレベルの高いチームやトップリーグでやりたくなるし、そうすると結局また引退した理由でもある「成長していない」というところに行き着くと思うので、考えていないですね。

選手もサポーターも、離れてから気づくではもったいない

──鍛代選手にとって、湘南ベルマーレとはどんな存在ですか?

僕の人生の一部ですかね。いや、一部じゃ少ないな。全部が全部じゃないですが、ほぼ人生イコールくらいです。自分の人生の決断の時期において、大きなウエイトを占めているのが湘南ベルマーレです。

親が湘南のサッカーの試合に連れて行ってくれたことから、サポーターとしてスタジアムに通い始めて、自分がやりたかったコーチの仕事で関わることができて。そして、それをやめる可能性も覚悟しながら選手をやりたいと、当時の強化部長に伝えて、運もあって選手になることができた。

応援する側で着ていたユニフォームを、プレーする側として着ることができました。おそらく今後もベルマーレにかかわっていく人生なんだろうなと思うし、かかわっていきたいです。

──来シーズン以降の選手たちに期待したいことや伝えたいことはありますか?

期待したいことですか。

僕の「期待しています」という言葉に引っ張られる人が出てくるのはちょっと嫌だなと思っています。個人的にはやっぱりチームは勝ってほしいし、優勝してほしいという期待はありますかね。

選手に対しては、特に誰にということはなくどんどんみんなにうまくなってほしいです。できなかったことができるようになった瞬間って、やっぱりうれしいし楽しいことだと思うし、その瞬間をたくさん味わってほしいです。

結果が大切な世界ではありますが、僕個人としては、結果がすべてとは思っていません。結果を“求める”とよく言いますが、結果は“出てくる”ものだと思っているので。自分が今できる100%を出すことと、自分がうまくなるぞというマインドを持ってくれたらいいなとは思っています。

ただ、最初に伝えたとおり、そうしてほしいということではなくて、そういう目線で見守っていますというニュアンスですね。

あとは「ベルマーレのサポーターは最高だぞ!」ということを伝えたいです。僕、今は選手なので、全部わかるわけではないですが、おそらく離れたらより感じるんじゃないかなと。離れてから気づくというのはもったいないので、今気づいてほしい。その応援を存分に背中で受けてプレーしてほしいです。

──最後に、全日本選手権に向けて一言お願いします。

まだ試合が残っているタイミングで、こうしてみなさんの前でお話をする機会をいただきました。

全日本選手権で僕のことが見られるので、見逃さないでほしいです。チームとしても個人としても優勝経験がないので優勝したい。1回戦はエコパ(エコパアリーナ/静岡県)で、行くかどうか悩んでいる人もいるかもしれませんが、予定の最重要項目に入れてほしい。僕の試合を、ベルマーレの試合を一緒に戦ってほしいです。

僕が引退するタイミングだからこうして言っていますが、他の選手も同じです。例えば期限付き移籍なので戻ってくるとは思いますが、(籔内)涼也も退団しますからね。応援したい選手を明日、応援できなくなるかもしれない。「今度観に行けばいいや」ではなく、応援できるチャンスというのは、おこがましいですが、その選手のプレーを見られる機会が目の前にあるのであれば、ぜひ観てもらいたいです。

さっきの選手の話にも通じますが、引退してから行けばよかったではもったいないです。選手には「ベルマーレ最高だったな」ではなく、「最高だな」と思いながらプレーしてほしいし、みなさんにはその選手を見逃さないでほしいです。「推しは推せるうちに推せ」という言葉を聞いたことがありますけど、僕に限らずみなさんが心のなかに想っている推しの選手を観に行ってください。

そして、一緒に戦えるタイミングがあるので、みなさんはスタンドで、僕たちはピッチで戦っていけたらと思っています。あと2週間、頑張りましょう。よろしくお願いいたします。

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