更新日時:2023.03.09
【日本代表】激闘のアジアカップ制覇から5カ月。宿敵イランとの“再戦”に木暮賢一郎「勝ってタイトルを取ることと、内容でどう改善できるか」
PHOTO BYJFAPR
2023年最初のA代表活動として、タイ遠征にて6カ国国際親善大会を戦う木暮ジャパン。
日本は初戦でモザンビーク、2回戦でタイを撃破した。5日に行われた3回戦のサウジアラビア戦にも勝利し、3連勝を収めた。
決勝のイラン戦前日の6日、木暮賢一郎監督がオンライン取材に応じた。
7日にイランと決勝で激突。アジアカップ以来の再戦
──ここまでの活動を振り返って。
アジアカップ以降、フル代表としては最初の活動です。その間にU-23代表の国内合宿、フランス遠征がありました。前提としてU-19、20、23、フルと年代別代表としても監督をしています。僕だけではなくスタッフが兼務している背景がありますので、当然、切り離されたものではありません。
フル代表の活動はクウェートぶりですが、U-23のメンバーで今回選ばれた選手もいますし、ラージリストにももっといます。つながりをもった活動を続け、リーグ戦などの活動を視察するなかで、2023年の目標に対して一番ベストな選手を選びました。
新しい取り組みもできていますし、短期間ですけど、ここまで呼べなかった選手を含めて非常にいい進み具合をみせています。
──Fリーグがシーズンを終えて、木暮監督のなかで今年の戦いをどのようにご覧になっていましたか?
コロナ禍において様々な変わりがありました。一方で今季はプレーオフがあったり、有観客であったり、期待している競争力のあるリーグでハイパーマンスをしている選手が代表に入ってくるという状況に戻ってきたなと。リーグの環境、社会の環境を含めて、プレーオフは象徴される部分だと思います。
あとはアジアカップでタイトルを取った、選手が与えた影響は少なからずあったのかなと。新たなモチベーション、若い選手への浸透、リーグの活性化に貢献できた印象があります。
リーグあっての代表チームなので、そういった相乗効果がさらに生まれたのではないかなと思います。
──代表チームはうまく若い選手にシフトしてきている印象がありますがここまでの歩みは順調ですか?
順調というか、確実に階段を上っていると感じています。ただ、代表の長い経験のなかで様々なものを見てきて、警戒すべきは2014年です。
2012年にアジアチャンピオンとなり、ワールドカップに出場しました。メンバー構成が変わって2014年に連覇した後の2016年(にW杯出場を逃した出来事)は日本のフットサルにおいて苦い経験でした。その時の自分リーグ(シュライカー大阪)の監督でしたけど、その状況を生々しく見ています。そこは一つ、我々の持っている経験値に当てはまると思っていますので、慢心することなく確実に、謙虚に、目標に向かって進んでいくことが大事だと思っています。
──アジアカップ決勝と同じく、決勝の舞台でイラン戦と対戦します。この試合に向けて意気込みを。
こういったコンペティションに出ることが大事だと思っています。今回も2セッションでこの大会の臨んでおり、ゲームをしながら完成度を高めています。招集している選手のタレントが発揮できるプログラムを意識したなかで、ファイナルに進むことは個人としてもチームとしても経験になる。移動して試合をしてというなかで勝つことは簡単ではありません。
サッカーの代表でも集まって1日でプレッシャーのかかるコンペティションに臨むことがあります。そこに少し近づくというか、今までのフットサルではなかったような状況のなかでゲームをして、勝利を収めながら、課題を修正して完成度を高める。それをしながら決勝にいけたことは自信に持っていい。
加えて、相手が決勝の相手はイラン。この大会への参加を決めたなかで、イランとの決勝は理想の形だと思います。欧州であればFIFAデイズにW杯予選をしています。そのなかでマッチメイクを考えた時に、アジアのライバルであるイランと決勝で対戦できることはすごくポジティブです。
彼らもクウェートのことは理解しているでしょう。非常に激しい試合になると思います。前回は勝利しましたが、課題も非常に感じています。そこの改善はフランス遠征から仕込んでいるので、今回の対戦が非常に楽しみです。当然、勝ってタイトルを取ることと、プラス内容でどう改善できるか。そこは楽しみにしています。
──全日本女子フットサル選手権でも木暮ジャパンの戦いが話題になっていました。要因の一つは若い選手が結果を出せていること。木暮監督が感じている若手のメンタリティはいかがでしょうか?
いくつかの側面があると思います。まずは彼らの育成環境です。Fリーグができて、引退した選手たちが指導者となり、各クラブが育成に力を入れて育ってきた選手が多い。全員ではないですけど、自分自身も彼らを指導している指導者の顔を知っています。フットサルに対して大きな情熱を持っている方たちが育成年代で関わってくださっているので、そうした方たちが日本代表を目指すという、自分たちよりもいい環境でプレーさせたい、成果を出してあげたい、そこに関わっていきたいという思いを感じています。
2つ目は、2017年から育成年代の代表が始まりました。清水和也や石田健太郎の代です。継続的に育成年代の代表活動が始まり、そのなかでも呼ばれてきた選手の背景も様変わりしてきました。今の子たちはフットサルプロパーというか、より早くフットサルの世界に入った子たち。あとは飛び級で、16、17歳くらいから代表活動に踏み入れています。
毛利元亮、金澤空にしても高校生年代から始めています。U-23のフランス遠征のメンバーも、90%以上が育成年代を経ています。今回のフル代表も70%が、アジアカップに出ていたり、私と仕事をしたりしています。育成年代から、継続した代表活動があることで、代表がどうあるべきかというメンタリティ、競争力を含め、早くから浸透している選手がいる。他にも多くの選手がリストに入っています。昨年末からトレセンも始まりましたし、地道な活動の成果が大きいのかなと思います。
──今大会ではビデオサポートがあります。木暮監督も要求したところで相手選手が退場となりました。導入にはどんな考えをお持ちでしょうか?
ビデオサポートは2021年のW杯でも導入されましたが、どういったタイミングで適切な判断や効果を感じられるかは、まだ未知数なところはあります。監督によって様々な戦略もあると思います。今回は選手に対して、具体的にどう活用するかの話をしていません。
要求できる状況も限られています。PKやレッドカードに関することなど。ゲームを意図的にコントロールするから活用するという観点ではなく、本当に肘打ちを喰らったり、明らかに感じることは、外で見るよりも実際に受けた選手のほうが信ぴょう性がわかるので、そこのコミュニケーションを取る。今回は原田快と確認して、本当であれば要求しないといけないので活用しました。正直、このシステムの是非や活用方法を持っているわけではありません。
──サウジアラビアの改めての印象は?
もちろん監督も選手時代からよく知っています。フットサルではバルセロナの監督を長く務めている監督ですし、今の一つの戦略的トレンドでもある、GKを上げることに特化している。今大会もそうですけど、国外に出て様々な活動をしているようです。情熱、力を入れている国の成長スピードを感じます。
今回のゲームで言えば、クウェート(AFCフットサルアジアカップクウェート2022)での敗戦もあるし、スコアも1-0ですけど、内容としてはチャンスを生み出した回数など、今回の我々のほうがうまくコントロールできたと思います。本来であれば決めるべきところを決めて優位に進められたらという理想はありますが、簡単な相手ではありません。
ゲームが停滞したりするのは相手の意図もあり、それでやられた経験もあります。その意味では、前回の対戦から成長し、いい成果を挙げられたと思います。ただ間違いなく力を入れているチームなので警戒しています。外に出て試合をたくさんこなしているので、我々が警戒する国の一つだと思います。
──中村充や田淵広史などフル代表で呼んだ選手の評価は?
田淵は、私が暫定監督をした2016年の合宿のトレーニングにも参加してもらいました。日本に来てもらったばかりの時で、その時から知っています。U-20代表でも共にタイトルを取っていますし、出場機会を伸ばしながら成長しているところをずっと観察しています。彼も育成出身という観点で見ていますし、今季のパフォーマンスも十分、呼ぶに値する選手です。
最初の2試合も40分間、代表の雰囲気を感じて、成長してもらえたと思っています。クラブと代表ではゲームモデルの違いもありますけど、そこも含めてキャパシティを広げて成長してほしいですね。
充もU-20代表時代に直接指導したわけではないですが、育成からキャリアを進めてきました。今季の途中には怪我をしましたけど、それまでは立川の勝ち点を積み上げる部分で非常に大きな貢献をしていました。いいタイミングで立川がプレーオフに行って、競争力があるなかで観察してきた上での招集です。スムーズにグループに入ってくれました。その一つの要因は、関係性。先ほどから育成の話が多いですけど、代表という短い活動のなかで、日常とは異なるモデルや環境下で、関係の優位性を重視しています。
その一つが、やはり日常のクラブは違っても、育成年代。トレセンで顔を知っている。U-19、U-20でも一緒にプレーしていることはメリットになると感じています。ここまでは3セットをベースに進めてきたなかで、充、健太郎、和也、堤のうち、堤以外は合宿を何度もこなし、10代から共に戦っているので、彼の大きな助けになったと思います。
それに彼は立川でプレーオフ決勝に進んでいますし、代表選手が多くいるチームです。今回は3人ですが、私が代表監督になってからも上村充哉や新井裕生など、代表に値する選手がいます。比嘉リカルド監督のこともお互いによく知っています。かつて代表でキャプテンを務めた方で、代表活動外でも代表と接点のある状況での選手ですから、そういう部分での優位性があります。
原田快、元亮、山田凱斗なども10代から一緒にやっているので、そうしたことは助けにはなっています。凱斗もフル代表は初めてですが、U-20では僕とも内山慶太郎GKコーチとも一緒にやっています。関係性において初めましてという状況ではないことは、優位に働いていると思います。
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