更新日時:2023.11.29
【必殺仕掛け人・田口元気プロデューサーの思い/前編】「新しい選手が新しいストーリーを生み出して、ファンを獲得したい」
PHOTO BYフウガドールすみだ
まずはこのホームページを見てもらいたい。
Reverse&Rebirth
http://rebirth.fuga-futsal.com/
全身スーツ姿でモデルさながらにポージングする選手たち、ユニフォームを街着にミックスしてコーディネートを提案する選手たち、某有名アーティストをオマージュした出で立ちでプロモーションする選手たち。
時にカッコよく、時に全力でふざけるその姿は、完全にアスリートの枠を飛び出して、フットサル界を飛び越えた試みとして大きな話題を集めている。そのすべては、一人の選手の脳内から始まったプロジェクトだ。
フウガドールすみだで10番を背負う田口元気がその男だ。
SNSを中心に業界をざわつかせる彼は今、「Reverse&Rebirth」と名付けたこの企画の「プロデューサー」として、様々な仕掛けを次々と世に送り出している。田口は今シーズン開幕からわずか2試合目に右足アキレス腱を断裂して、復帰まで約6カ月の大ケガを負った。それにも関わらず、彼は即座に頭の中を切り替え、ピッチでプレーできない代わりに、自分がチームのためにできることは何かを考え、実行に移したのだ。
そのアクションは確実に伝播して、8月のホームゲームには、平日夜にも関わらず多くの観客が訪れるとともに、最高のホームの雰囲気を作り出した。もしかしたら“ただのおふざけ”と映っているかもしれない。しかし、動かないわけにはいかなかった。その行動が、少しずつだが確実に、実を結び始めている。
田口はどうして、このプロジェクトを始めたのか──。
フウガは全力でふざけられるチーム
──田口選手がプロデューサーとして動き始めた「Reverse&Rebirthプロジェクト」、通称「リバプロ」がフットサル界で大きな話題を集めています。どうして始めたのでしょうか?
田口 ケガをしてから一歩、引いた位置からチームや選手、自分自身を見つめ直す距離ができました。「時間」は今までたくさんあったんですけど「距離」ができたんです。
そこで感じたのは、フウガがFリーグに上がって5年目になるのですが、いろいろ変わってきたなと。環境ももちろんそうですし、チームのメンバーもそう。いろんなところが変わってきて、自分自身が最初に抱いていたフウガのイメージから、ちょっと逸れているなということをすごく感じたんです。
最初の頃はタケさん(金川武司)や太さん(太見寿人)など、関東リーグ時代からフウガをFリーグに上げた選手たちが、自ら発信するということを自然とやっていたんです。それこそ当たり前のように。
でも今は、僕自身も含めてFリーグに上がってから入った選手がほとんどになって、フロントもしっかりとしたものになって、少しずつそういった意識がなくなってきたんじゃないかなと。フウガってもっと“全力でふざけて”なかったかな? って、ふと思ったんですよね。
それと、フウガとしてFリーグ5年目を戦っている現状として、僕自身はもっと発展しているだろうなと思っていたのですが、感覚的には微減しているように感じています。だから、ちょっとずつちょっとずつ下がってきている今だからこそ「見せ方」が重要だなと感じているんです。
そういったところから、まずはフウガというチームをもう1回、見せるために、選手から発信してふざけたり、かっこつけたりする企画があれば面白いし、それによって選手にももう一回、意識づけできると思ったんです。この企画をやりたいとフロントに相談して、学生スタッフを巻き込んでやろうと。そうしたらクラブもすぐに乗っ掛ってきてくれたというのがプロジェクトの始まりです。
──クラブの「組織」が進化していった一方で、クラブカラーの「フウガ・イズム」が薄れていると感じるようになったというところがあるんですね。
田口 そうですね。変化することは大事なので、それを否定する気持ちも、過去を否定する気持ちもありません。「Rebirth(リバース)」とは「生まれ変わる」という意味ですが、以前がダメだからもう1回よくなるということではなくて、以前はこんなにすごいことをやっていたよねっていうことで、それが「Reverse(リバース)」の「ひっくり返す」というところでもあります。Fリーグに上がってから、環境も進化して、たくさんのお客さんが入って、応援してもらえるようになったよね、じゃあもう1回、ここからさらに進化しよう、進化するために生まれ変わろう、ということでのスタートだったんです。
──「ひっくり返して、生まれ変わる」。それがフウガらしさを思い出すことになる、と。
田口 そもそも「選手が発信する」ということは、トップリーグでは当たり前ではないと思います。選手はスポーツの競技性を高めることが本分なわけですから。でも僕らFリーガーの環境は、選手だけをやっていればいいというものではありません。むしろ、選手ではない部分もフットサルの特徴という捉え方をすると、それもやっていったらいいよねと。だからそういうアスリートの世界で当たり前ではないものを当たり前のことにしていってもいいんじゃないか、ひっくり返しちゃってもいいんじゃないかということです。
だからせめて僕らのクラブは、そこをスタンダードにしたいという思いを持っています。Fリーグは完全なプロの世界ではないという部分は否定的に捉えられがちですけど、それも特徴であることに違いないので、むしろポジティブな面もある。それはこの5年間で感じてきたことですし、一石を投じたいなと。
いろんなクラブがあって、いろんな考えがあってしかるべきなので、みんながこうすべきだとは思っていません。あくまでもこのクラブとしての思いを発信して、ムーブメントになればと思っています。先ほどもお話ししたように、僕たちはどんなクラブだったのかということをもう一度、掘り返していくプロジェクトなんです。だからそれは、クラブの若手選手に向けていますし、リーグに対しても、フットサルのコアなファンにも、フットサルを知らなかったライトな層の人たちにも向けてやるものです。
これまでクラブやリーグを引っ張ってきた人たちがいなくなったところが現状のポイントになっているのではないかと仮定して、そこから僕たち新しい選手が新しいストーリーを生み出して、ファンを獲得する。何事もトライ&エラーですし、何かをやらないと反省もできない。ひとまず動こうということも大切にしています。
──自分たちの手で、フットサルやアスリート自身の価値を発信していくわけですね。
田口 そうですね。例えば全力でふざけるのは、どちらかというとフットサルを知っているコアなファン向けで、全力でカッコつけるのはライトな層に向けています。フウガの差別化ですね。
かっこよくて面白い企画はどうやって作っているの?
──素朴な疑問なのですが、この一連の企画はどうやって、誰が作っているんですか?
田口 クラブのスタッフと学生スタッフ(卒業して社会人になったスタッフも含む)たちです。
──撮影や編集も?
田口 みんなもともとは素人なんですけど、撮影も動画編集も勉強してやっています。ホームページはクラブのスタッフが作りましたが、構想から中身まで、みんなで話をしています。だから企画会議がめちゃくちゃ楽しくて、みんな終電がなくなるくらいまでやってしまっているんですけどね(苦笑)。
──直接的には何人くらいが関わっているんですか?
田口 5人くらいですね。あとは僕が選手を巻き込んでいます。選手の人選も僕らでやっています。
──登場する選手たちはどんな感じですか?
田口 みんな協力的で「やろうぜ!」って感じで楽しみながらやってくれています。普段から「このままじゃまずいよね」とか「こうしたら絶対いいよ」って話をしている仲間ですし、やろうって話したときから「おう、じゃあやるよ」ってすぐに。ベテラン選手にも気軽に「お願いしまーす!」と。
──ボラにも(笑)。
田口 ボラはノリノリで写真を撮ってくれますね。
──渡井博之選手と諸江剣語選手の「KinShiKids」には笑いました。そのユニットがフウガドールすみだの応援大使(笑)に就任した際に着ていた着物も協力してもらったんですか?
田口 今回は準備の時間がなくてレンタルでした。でも今後は、協力してくれる企業やスポンサーさんも含めて、もっと巻き込めると思います。そうしたところで、フウガドールすみだに協力している意味が出てきたら、それも一つ、フットサルの価値を示すことにつながるのではないかと思います。
──周囲のリアクションはいかがですか?
田口 たくさんの連絡がきました。ダイレクトメッセージや選手からもLINEをもらいましたし、やっぱり形にしていかないといけないなと感じました。「俺はいつ呼ばれるの?」という逆オファーもありましたね(笑)。このコンテンツは、もっといろんな人を巻き込めると思います。選手はもちろんですが、大学生も一般人も、企業も、墨田区も。でも本当に、誰かが動かないと、できるものもできないなと思っています。
(後編に続く)
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