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作成日時:2018.12.04
更新日時:2018.12.04

目立っているのは髪色だけじゃない!自身の成長を求めた新井裕生が半年でたどり着いた“代表候補”

PHOTO BY軍記ひろし

23歳以下で構成されるFリーグ選抜、それは「所属チームで出場機会に恵まれていない“飢えた若者たち”」が集まるチーム。今年5月に始動した彼らは、プロクラブと同等のフットサル漬けの生活を送り、「成り上がる」という野心と勢いに裏打ちされた驚異的な成長を遂げて、リーグの勢力図をかき乱すほどの台風の目となった。

そんなギラギラした若者たちの中で、新井裕生の“髪”は特に目立っていた。スプレーで髪を染めて、金や青、銀、緑と、毎試合のように異なる髪色で登場した。しかしシーズンを重ねるうちに、いつしか目立っているのは髪色だけではなくなっていった。11月には、日本代表候補合宿に召集されるまでに注目されるようになったのだ。

突然のコンバートが新井にもたらしたもの

「去年、所属クラブ(アグレミーナ浜松)で出場機会にあまり恵まれませんでした。自分をより高められる環境だと思いましたし、ここで成功するかしないかが、この先のフットサル人生に大きく影響するはず。そう思って決断しました」

新井は、自らターニングポイントになると位置付け、覚悟を持ってFリーグ選抜に飛び込んだ。まずは目立たないことには始まらない。そうして新井は、開幕戦に緑色の髪で登場してインパクトを残した。しかし──。

ふてぶてしさと度胸を感じさせる行動だったが、その裏で、新井は戸惑っていた。

「開幕前にピヴォがいないことを聞いて『誰がやるんだ?』という感じでした。高橋(優介)監督から『やってみるか?』と言われたので『やるしかないですね』と。半ば強引な感じで……(苦笑)」

これまで経験したことがないポジションにコンバートされたのだ。

ピヴォを置いた3-1システムと、より流動的な4-0システムのいずれの場合であっても、前線で起点となり、ゴールに近い位置で仕事ができるプレーヤーは、トップレベルのすべての指揮官が求めている。もちろんチームによっても選手の特徴によっても役割が異なるものの、ピヴォの有無で戦術の選択肢は格段に変化してしまう。ピヴォとはまさに、今も昔も変わらずに、フットサルに必要不可欠なポジションなのだ。

こうして「半ば強引の決定」によって新しい仕事にチャレンジすることになった新井だが、実際にはそのことが彼を大きく成長させる一つのきっかけとなった。

「最初はもう全然ダメでした。どのタイミングで(ゴール前に)顔を出せばいいのか、どういう背負い方をすればいいのかなど、全然わからなかった。ピヴォがいないわけなので教わることもできないので、映像を見たり、(同じ敷地内で練習している)名古屋オーシャンズの素晴らしいピヴォを見て盗んだりしました。最近では、名古屋の星翔太選手に教えてもらえるようになって、練習から取り組むようになりました」

メキメキと成長した新井は、シーズン序盤で早くも可能性を示した。第9節のヴォスクオーレ仙台戦で、相手選手を背負ったピヴォ当てから仁井貴仁のゴールをお膳立てしたのだ。高橋監督も「それまではセットプレーやカウンターからの得点が多かったのですが、あれは初めてきれいな形で決まった」と称賛した。

アシストだけでなく得点力も開花しつつある。ここまで25試合で12ゴールという数字は、チームでダントツの1位。昨シーズンは無得点だった男が、である。ピヴォと出会ってまだ半年。ひたむきな努力と驚異的な適応力で着実に成長を遂げた新井はついに、日本代表候補合宿に声が掛かるまでになっていた。

見逃せないのは、1巡目に5点、2巡目に5点を挙げた彼の成長が、そのままチーム力に直結している点だろう。キャプテンの三笠貴史が「ここまでの経験を踏まえて、3巡目はチームよりももっと個人に焦点を当てて、自分が残りの試合でどんなプレーをできるのかという、選手のエゴが大切になる」と話すように、ピヴォという、ある意味でエゴイスティックなポジションを務める新井には、さらなるけん引役が求められる。

シーズンは残り8試合。より結果を求めていった先にもし、新人賞や代表定着があるならば、それはピヴォとしての真の開花の証明であり、それと同時に、チームの結果にもつながっていくだろう。

気がつけば最近の髪色は黒系に落ち着くようになった。髪で目立つ必要はない、プレーで目立てばいい。髪色はもしかしたら、新井のそんな決意の表れなのかもしれない。

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