更新日時:2019.06.13
偉大な2人の先輩を超えていけ。“F選抜1期生”三笠貴史が迎える飛躍の時。
PHOTO BY軍記ひろし
「今日の勝利は、僕個人としてもすごく大きなものでした」
6月9日(日)に開催されたFリーグ第3節、ペスカドーラ町田×フウガドールすみだ。7-5で勝利した試合後のミックスゾーンで、フウガドールすみだの三笠貴史はそう試合を振り返った。昨シーズンの1年間をFリーグ選抜で戦い、今シーズンすみだに復帰した三笠。“新天地”での飛躍を誓う若きフィクソにとって、この一つの勝利が持つ意味とはどんなものだったのだろうか。
充実した環境が生んだ新たな「渇望」
三笠は昨シーズン、Fリーグ選抜の第一期生として戦った。開幕前はどこまでやれるのか未知数と思われたチームだったが、第8節では、名古屋の開幕から続く連勝をストップするなど確かなインパクトを残して、前半戦の目玉となった。最終的に8位に終わったものの、二十歳前後の若者たち(※Fリーグ選抜は24歳以下の選手で構成)が、リーグ全体に与えた影響は少なくなかった。
三笠はキャプテンとしてその中心にいた。ともに未来の日本フットサル界を担わんとする同士と共同生活を送り、フットサルだけに集中できる環境で得た経験は間違いなく大きなものだった。名古屋での生活について、三笠自身も常々「充実している」、「恵まれている」と語っていた。
だが一方で、三笠は昨シーズンの中盤戦以降、ある一点に関してどうしようもない物足りなさを感じていた。「チーム内に目標とする選手がいないこと」だった。
三笠のポジションはフィクソ。フィールドプレーヤーの最後尾でチームの舵取りを担うポジションだ。止める、蹴る、運ぶといった基礎技術はもちろんのこと、戦術理解や状況判断は特に高いレベルが求められる。ゴレイロ同様、積み重ねた経験値がモノを言うポジションなのだ。
Fリーグ選抜にも、技術の高い選手や運動量に秀でる選手は何人もいた。だが、若手のみで構成されている以上は当然のことではあるが、チーム内に経験豊富なベテランはいなかった。
「選抜の時は(同じフィクソの)北野聖夜や伊藤圭汰と切磋琢磨していく感じでした。もちろんそれはそれで恵まれた環境だったのですが、同時に『同世代しかいないなかではこれ以上成長できないんじゃないか』という危機感もありました。まあそれも言い訳になっちゃうんですけどね。自分でその殻を破らないといけないのは分かっているけど、なかなか難しいなと」
三笠は自分を上回る経験値を持つロールモデルを欲していた。チーム内に模範となる選手がいれば、その一挙一動から吸収できることが山ほどある。そしてそれこそが、フィクソとして成長するために最も必要なことだと理解していたからだ。
所属元に復帰した三笠は晴れてトップチームに登録。渡井博之、諸江剣語という絶対的な二枚看板に次ぐ“第3のフィクソ”としてシーズンをスタートした。それはまさに、昨シーズン途中から三笠が熱望していた環境だった。
「戻ってきて改めて、あの2人から学ぶことがたくさんあると感じていて。スタイル的に僕はどちらかと言えばワタさん(渡井)に近い。紅白戦でも自分が出ていないときはピッチ脇でずっとワタさんを見ています(笑)」
技術的なことはもちろん、ボールを持っていないときの駆け引きやプレー中のわずかな所作まで見逃さない。
「ワタさんは練習中も本当に、一回もやられないですからね。ポカも無いし、全部前でインターセプトするし、相手のビジョンを完璧に読んで駆け引きしている。で、試合でもあのパフォーマンスなので……。僕はワタさんとケンゴさんは日本人フィクソの中でも1、2を争う選手だと思っています」
渡井、諸江の両ベテランとの差を痛感する毎日だというが、そう話す声はどこか嬉しそうだ。待ち望んだ環境で「去年とはまた違った充実感があります」と言う。
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