更新日時:2020.07.29
【日本代表/WEB取材】若手にチャンス到来中のブルーノ・ジャパン、次なるキーマンは誰?「伊藤と石田はアラ・フィクソ、中田はパスのうまい左利きのアラ」(ブルーノ監督)
PHOTO BY軍記ひろし
日本代表は20日から25日までのトレーニングキャンプを終え、その活動を振り返ったブルーノ・ガルシア監督は、「出来が良かったし、満足している」と充実の表情をのぞかせた。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受ける中で5カ月ぶりに再開し、合計10セッションという、通常よりも長い期間のトレーニングとなった。2021年9月に延期されたW杯の出場権をかけたAFC選手権も、今年11月の開催が決まったことで、ようやく“再スタート”を切った合宿の狙いはどこにあるのか。
ブルーノ監督は「全般的な感触、プレーモデルを取り戻すこと」としたが、今回は特に、メンバー選考にもメッセージ性を感じるものとなった。加藤未渚実がケガのため不参加となり内田隼太が追加され、途中、田村友貴も離脱したが、2月の国際親善試合を戦っていないメンバーとしては、フレッシュな顔をそろえた。
(不参加、追加、離脱を含めた)20名のうち24歳以下の選手が6人。中でも、常連組ではない伊藤圭汰、石田健太郎、中田秀人、内田隼太という人選にはブルーノ監督の若手の台頭を促す意図も見える。と同時に、選ばれた選手のポジションやプレースタイルを踏まえると、ブルーノの重視する選手像も感じ取れる。
これまでブルーノ監督は、代表チームのグループ・マネージメントを大事にしてきた。その一つが、選手の特徴を踏まえつつ、ポジションごとに適度な競争を促すメンバー構成だ。
ポジションを細分化すると、特に守備面での大きな特徴を持つフィクソ、攻撃と守備をつなぎその両軸を担うアラ・フィクソ、攻撃的アタッカータイプのアラ、チャンスメイクとフィニッシュワークに絡むアラ・ピヴォ、ゴール前で起点となれるピヴォ。2016年の始動以来、ブルーノ監督は様々な選手を招集しながら、グループに適応する能力を見極め、ふるいにかけてきた。
そうして構築された2月のブルーノ・ジャパンは、16名の「ベストなメンバー」(ブルーノ監督)でパラグアイ戦に臨んだ(そして、そのままアジア選手権を戦う予定だった)。
そんな代表チームは今、大会の延期がなければ呼ばれることのなかったメンバーに新たなチャンスが訪れている。伊藤、石田、中田、追加で呼ばれた内田。中田にはレフティという要素も加味されるが、内田をのぞく3人は、後方でバランスを見ながら攻撃に絡んでいける、アラ・フィクソ系の特性がある選手として選ばれている印象もある。
現チームの心臓は、吉川智貴。守備も攻撃も、あらゆる面で超アジア級の能力を持つアラ・フィクソだ。突如として訪れたプラスアルファの強化期間を使って、ブルーノ監督は、吉川のバックアッパーを育てようとしているのではないだろうか。強度の高い守備と、幅のある戦術とシステム、セットプレーのバリエーション。そうした特徴をもつ代表チームのキーマンとなる選手には、ハイレベルな戦術理解度と再現性、いわゆるフットサルIQの高さが求められる。新たに呼ばれた若手には、そうした役割も求められている気がしてならない。
ブルーノ・ジャパンの次なるキーマンは誰か──。
今回の招集の本当の意図はどこにあるのか? チームのストロングポイントとは、武器とは何か? 合宿を終え、オンライン取材に臨んだブルーノ監督にコメントを求めた。
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ブルーノ・ガルシア監督
バリエーションのある攻守はすでに他国の脅威となっている
──今回のトレーニングキャンプを振り返って。
この期間を総括すると、非常にポジティブなトレーニングを積み上げられました。5カ月ぶりに集まった練習だったのですが、最後のときは、AFC選手権を目前に控えたスペイン遠征とパラグアイ代表との国際親善試合。その感触を取り戻すことに取り組みました。チームの雰囲気もプレーモデルもそうですし、詳細な戦術の局面、これまで準備してきたことを思い出せて、これからのプランニングの感触を取り戻すこと。全体的にも、具体的にも実行できた、いいキャンプだったと感じています。
──いつもよりも長い期間のセッションでした。特に意識したこと、重点的にやったこと、いつもより増やしたメニューなどはありますか?
全般的なテーマとしては、大枠の感触、プレーモデルの体現レベル、感触を取り戻すことでした。具体的には、定位置攻撃や定位置守備、セットプレー、パワープレー、第2PK、退場局面などの全般的なところに触れることに時間を活用していきました。その中で、選手の反応や掘り下げるべきところを見極めながら触れていくことを考えていました。なので必要な部分に力点を絞って、細かく確認することもありました。広めに捉えながらも、ディールに踏み込んでいく。出来が良かったですし、満足しています。
──今回招集した若手、特に伊藤圭汰、中田秀人、石田健太郎は、アラ・フィクソタイプの選手を呼んでいます。全体のポジション構成を考えるとアンバランスにも感じる招集の意図はどこにありますか?
今回は19名を招集しました。GKが3人で、FPが16人ということで、4人組を4セット組むことを目的にやっています。これだけの人数を集めるときには、大会に向けて磨き上げる側面と、4セット呼ばれることで、中長期のプロジェクトの健全性を考えたときに、若い選手を呼ぶという考えが前提としてあります。
その中で、質問にあった3人についてですが、伊藤と石田の2人は、フィクソとアラができる、いわゆるアラ・フィクソの選手です。タレントがあって、これから定着してほしい選手。年齢だけではなく、ポジション的にも健全なバランスを持ってチームが編成していくようにということを念頭に考えると、その2人がアラもフィクソもできる選手というポジションのバランスで言えば、呼ぶことは妥当だと思っています。
もう一人、中田については全く違うプロファイルを持っています。彼は左利きですが、日本において、左利きでパスもうまいという選手はたくさんいないので、期待できる選手です。それぞれのプロファイル、そして年齢も考えながら、短期的な直前のテーマの強化だけではなく、中長期も見据えて代表チームを編成していく。14名とか16名とかのキャンプだと今回のような構成は難しいこともあるが、19名の招集と、今のようなタイミング、状況では十分に有意義な参加をしてもらえる。そういう招集を意図しています。
──後ろができる選手が重要で、今後のアジアや世界と戦う上でもそのポジションが求められている?
フィクソができる選手は重要で、日本では常に養成が必要なポジションなので、強化してやってきました。その中で、伊藤圭汰、石田健太郎は、フィクソができる選手です。ただ、中田はフィクソという認識ではありません。左利きのアラであり、前向きで、攻撃にかかっていけるパスのうまい選手という位置付けです。
──改めて、ブルーノ・ジャパンのストロングポイントを教えてください。アジアのレベルが高まっている中では、これまでの強度の高い前線からの守備や、構築してきたシステムだけでは優位を保てなくなっているという見方もされているのでしょうか? 今後のアジアや世界での戦いをどのように見据えているか。
それは少し違うなと思っています。おっしゃる通り、チームの特徴として、積極的でアグレッシブで、イニシアチブを取りやすい守備が光りやすいと思います。ですがよく見ていただくと、定位置攻撃と守備、そこからのバリエーション、セットプレーのバリエーション、あらゆる形に、チームが共有しているアクション、戦略・戦術の豊かさが染み付いて、そのことを自由自在に活用できるようになっていることが、他国から見たときには脅威になっていると認識しています。
その構造を体現できること自体が脅威なのですが、今は、その体現レベルをさらに磨き上げることが必要なフェーズです。そこが積み上がっているので非常にポジティブに捉えています。過去、日本は全くスタイルを変えたわけではないですが、日本代表のアイデンティティをピッチで表現できるレベルを高めることが2016年以来の課題だと思っています。みんなもその必要性を理解して、意識して取り組めています。なので、このチームのアイデンティティ、プロファイルは、要求レベルが高いものをしていますが、それをできること自体が他国にとっては脅威になるし、自分たちの大きな武器になると信じています。
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