更新日時:2023.11.10
【伊藤圭汰×山中翔斗:攻守のエース対談】「強い相手と本気でぶつかり合ってきた環境が今につながっている」|Fリーグクラブ特集
PHOTO BY青木ひかる、高橋学、本田好伸
山中翔斗がゴールへの道を切り開き、伊藤圭汰が自陣のゴールに鍵をかける。好調を続ける今のペスカドーラ町田において、彼ら2人が間違いなく攻守のキーマンだ。
山中の武器は、左利きの特徴を生かしたドリブルやカットインからのチャンスメイク。伊藤の武器は、ピンチのにおいを嗅ぎ分けた気の利いたポジショニングやゴール前での体を貼った守備力。それぞれがそれぞれの役割を遂行することで、勝負にこだわり抜く“町田イズム”をピッチで体現する。
両者は、町田の育成組織から駆け上がってきた選手だ。
山中は小学生時代からほぼクラブ一筋で、伊藤は高校卒業後、地元・北海道から単身上京してクラブの門をたたいた。育成組織からトップチームへ。彼らの共通項とはなにか。
今シーズンの好調の理由、クラブに脈々と受け継がれる哲学、そして未来への覚悟。
26歳・伊藤圭汰、21歳・山中翔斗。2人の若武者の思いに迫った。
インタビュー=福田悠、青木ひかる
編集=福田悠
※インタビューは8月24日に実施しました
ディフェンスから始まった今季の好調
──今シーズンの町田は非常に好調ですね。お2人はキャプテンとエースとしてチームをけん引していますが、強さの要因はどのあたりにあると感じていますか?
伊藤 まずはディフェンスですね。相手の良さをなるべく消しながら試合を進められているのが失点を減らせている一番の理由だと思います。オフェンスに関してはもう少し得点を増やさないといけませんが、まず簡単に失点しないという試合運びをできるようになりつつあるので、そこはチームとして今シーズン成長した部分だと思います。
山中 僕も同じ考えです。チーム全員でハードワークして、全員で守る。リーグ序盤からそれができた試合が多かったからこそ、上位にいるんだと思います。
──2人のパフォーマンスもとても安定していますよね。
伊藤 僕自身はゴールがあまり取れていないので、そこは上げていく必要があります。ディフェンスはあれくらいはやれないといけないので、そこはベースとして継続しつつ、もっと得点を取らないといけないと思っています。
──そうは言いつつ、7月30日の名古屋戦で決めたゴラッソは相当なインパクトでした。町田市立総合体育館がまさに沸騰した瞬間でした。
伊藤 ありがとうございます。あれはもう、翔斗のアシストのおかげです(笑)。
山中 僕が真ん中でフリーで持っていて、相手ゴレイロの篠田(龍馬)選手も僕がシュートを打つと予測して構えていたと思うので。右サイドに走り込んでいた圭汰が見えたので、あとは渡すだけでした。しかも、決めたのは利き足とは逆の左足でしたからね。
──山中選手はここまでのご自身のプレーをどう評価されていますか?
山中 僕は攻撃が得意なので、主にオフェンスでチームを助けるのが仕事だと思っています。それを考えると今シーズンはまだまだ物足りない。みんなでハードワークして失点を抑えられているのは素晴らしいですし、圭汰や(倉科)亮佑、ジオヴァンニ……本当にみんなですけど、チームメイトに助けてもらってばかりです。攻撃面でもっと輝かないと……。
──今シーズン守備は具体的に「ここが変わった」と思う部分はありますか?
伊藤 チーム全体としてそこまで大きく変わったことはないと思います。昨シーズンまでに積み上げてきたベースの上に、細かい修正の精度がより上がっている感覚はあります。細かい立ち位置やカバーリングポジションの取り方、寄せるタイミングなど、常に声を掛け合って連携できていますし、どの選手が出てもチーム全体として集中して行えているかなと。
山中 チーム全体としてコミュニケーションが増え、守備の細かい修正にもつながっていると思います。攻撃のパターンも多くなって、いい雰囲気でプレーできています。
──アスピランチやU-18といった育成組織から一緒にプレーしてきた選手も多いですし、今シーズンの戦いぶりを見ているとピッチ上でお互いの考えをかなり共有できているように見えます。プレー中、そういった阿吽の呼吸のようなものは感じていますか?
山中 それはもう、プレー中はもちろん、ピッチ外でもかなりありますね。年下の僕が言うのもあれですけど、圭汰や他の先輩たちもいい意味で先輩とは感じないような雰囲気なので(笑)。変に気を遣う感じもなく、本当に自分の好きなようにやらせてもらえています。自分がパフォーマンスを発揮することに集中できるので、そこはありがたいですね。
──野村啓介選手など、ベテランがかなりイジられていますよね。
伊藤 そうですね(笑)。啓介くんは町田の育成組織出身ではないですし、加入してまだ2シーズン目ですけど、あの感じなので僕らも接しやすいです。翔斗が言ったように、年齢や所属年数とかに関係なく、誰でもフラットにコミュニケーションが取れるチームなので、全員がプレーしやすい環境が整っているのかなと思います。
アスピランチ、U-18で過ごした濃厚な時間
──山中選手は町田のスクールでフットサルを始めて、そこからほぼペスカドーラ一筋でトップチームまで駆け上がってきたんですよね。
山中 そうですね。幼少期にペスカのスクールに通い始めて、小学生まではフットサルとサッカーを並行してプレーして、中学時代は町田ゼルビアジュニアユースでサッカーに専念していました。その後、高校生になってからまたペスカのU-18でフットサルをプレーして、トップチームに昇格しました。
──山中選手が高校生だった2018~2020年頃はU-18やアスピランチ出身の先輩たちが続々とトップチームデビューを果たした時期と重なります。年齢の近い若手選手たちが主力として活躍する姿を見てどのように感じていましたか?
山中 当時のU-18は、一つ上の(毛利)元亮(カステジョン/スペイン2部)、(甲斐)稜人(名古屋オーシャンズ)とかが高3でトップの練習に参加していました。U-18の練習は夜だったんですけど、彼らが「明日、トップの練習が朝早いんで抜けます」みたいなのがあったりして。そういうのを見て「高3でもトップに行けるんだ」と思って。僕は高2だったんですけど、正直、そこまでの差を感じていなかったので、「だったら自分もやれるな」と思っていました。だいぶ強気ですけどね(笑)。
──ギラギラしていましたね。
山中 逆に「なんで(あの2人は)トップ行けんの?」っていう不満というか焦りみたいなものもあって。高校卒業後の進路も決まっていなかったですし、「トップに上がれなかったら俺の人生終わるな」「じゃあ絶対上がってやる」という覚悟でプレーしていたと思います。高校卒業のタイミングで無事にトップ昇格のお話をいただけたのですが、高2、高3の頃に年上の選手たちから受けた刺激というのは本当に大きかったと思います。
──甲斐選手とは小学生の頃からよく知った間柄だったようですね。
山中 そうですね。小学校の頃から僕と稜人と、稜人の弟の翔大(しょうま)と一緒に練習していて、甲斐(修侍)さんはその頃にはもう、僕のことを認識してくれていました。当時から甲斐さんの指導を受けることもありましたね。
──未来の監督からすでに指導を受けていたんですね。何歳頃ですか?
山中 たしか小4か小5くらいだったと思います。
──すごいですね……。山中選手は幼少期から才能の片鱗を見せていたと聞きますが、甲斐さんから「お前も将来トップでプレーしろよ!」みたいなことは言われたりも?
山中 いや、さすがにそこまではなかったと思います(笑)。でも明らかに熱を持って教えてくれていることは子どもながらに感じていました。僕自身、トップの試合を観に行ったり、エスコートキッズを務めたりして、甲斐さんがトップチームの中心選手であることも知っていたので、その甲斐さんに覚えてもらっていたことはすごくうれしかったです。
──どんなアドバイスを受けていたのでしょうか?
山中 さすがに細かいことまでは覚えていませんが、同じ左利きとして「俺だったらこうする」とか「もっとこういうプレーを狙おう」といった指導を受けたことは、うっすらとではありますけど記憶に残っていますね。
──ありがとうございます。伊藤選手は高校まではサッカーをしていて、本格的にフットサルに転向したのは町田アスピランチからですよね?
伊藤 そうですね。北海道出身なので、外でサッカーの練習ができなくなる冬場に体育館でフットサルをすることはあったのですが、あくまでもサッカーの補助としてやっていました。本格的なフットサルをちゃんと学んだのはアスピランチに加入してからでした。
【次ページ】伊藤の転機。いきなり全国準優勝→U-18日本代表招集→そして……
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