更新日時:2023.11.22
【日本代表】フットサル界“最大勢力”帝京長岡高出身の25歳・齋藤日向「自分は考えるところが足りない。ただ走るだけではなく賢く走る。次へつなげるために」
PHOTO BY本田好伸
11月16日、フットサル日本代表は、ウズベキスタン代表との2試合の国際親善試合に向け、活動初日に高円宮記念JFA夢フィールドでトレーニングを行った。
現在、木暮賢一郎監督率いる代表チームが掲げるキーワードの一つが「モビリティ」だ。日本語で「機動力」と訳されるその概念は、チームに躍動感と攻撃性を生み出すための重要な指針であり、そのキーマンの一人として期待されるのが齋藤日向だ。
これから中核を担っていく25歳の彼はただ、10月のアジアカップ予選でメンバー入りしながら、満足のいく出場時間と結果を出せなかった。指揮官に求められるパフォーマンスは明確でありながら、その質をピッチで表現できるかが生き残りの生命線だ。
練習後、齋藤に話を聞いた。
メッセージはもらっているので、よりレベルを高く
──アジアカップ予選が終わり、またここから次の戦いが始まります。ウズベキスタンとの親善試合に向けた合宿1日目を終えての感想はいかがですか?
まずは、ここに戻って来られた喜びと責任を感じてプレーしないといけないなと。一次予選が終わったので、次の目標に向けてまずはウズベキスタンとの2試合、チームとしても結果と内容、それに個人として求められているものも結果として出さないといけないと感じながら、1日目のトレーニングを迎えました。
──アジアカップ予選は、齋藤選手にとっていろいろと感じることの多い大会だったと思います。その後、ここまではどんな日々だったのでしょうか。
正直なところ、パフォーマンス的にうまくいかない大会でした。そこからは、自分に求められていることをまずは最低限やらないといけないですし、オフィシャルな舞台でも出せるような日々の取り組みを意識してきた1カ月ちょっとの期間でした。あとは、プラスアルファで、技術的な部分も、頭の部分も。前回の代表活動の時と同じままではなく、もう一つ、二つでもできることを増やしていかないといけないと考えながらプレーしてきました。
──アジアカップ予選は出場時間も少なく、主軸ではありませんでした。どんな感覚でしたか?
率直に悔しい気持ちがあります。一方で、自分の現状を受け止めないといけない。立ち位置がどこなのかを受け止め、なにを求められていて、それをどれだけレベル高くできるかによって、今後の序列を上げ、使ってもらえる選手になれるかにつながるので、まずは受け入れる。その上で、自分を高めていかないといけないですね。
──メンバー選考を見ていても、すごく期待を背負っているな、と。
そうだとうれしいです(笑)。
──木暮賢一郎監督がシュライカー大阪を率いていた頃からも期待を感じさせてきましたし、アジアカップへ向かう前の若手合宿にもメンバーに入っていました。モビリティをテーマにしたチームづくりで選ばれているのが齋藤選手です。メッセージ性がありますよね。
モビリティは間違いなく求められています。ただ走るだけではなくチームのコンセプトというか、頭を使って賢く、なおかつモビリティを出すということで言えば、今の自分はまだ考えるところが足りていない。ただ走っているとか、相手によってプレーを変えられるところまできていないので、そのクオリティを上げないといけない。それができたら試合に出る時間も増えていくと思います。メッセージはもらっているので、よりレベルを高く。モビリティと、ただ走るだけではなく賢く走ることをやっていきたい。
──齋藤選手は、戦術理解にも長けていて、技術をどこでどう出すかも得意なように感じます。それでも今の代表チームはすごく頭を使うという点でもハードですか?
すごくハードですね。自チームとプレーモデルが異なることもありますし、一番難しいのは、素早く動きながら考えること。考えるスピードが日頃よりも求められる。走ること、考えること、両方のスピードに難しさがあります。
「帝京長岡の先輩は、怖くない。優しいです」
──今の代表チームは“帝京長岡勢”が多いですよね(笑)。
僕もそう思いました(笑)。今回、4人なので(※編集部注:そのうちの一人、高橋響選手は自己都合により途中離脱)。
──その4人の中で一番下が齋藤選手ですよね。
はい。一つ上に響くんと(石田)健太郎くんで、4つ上に長坂(拓海)さん。長坂さんは高校でかぶっていないですね。
──校風はわからないですけど、先輩はやっぱり怖い……?
いや、優しく指導してもらっていました(笑)。普段も優しいですよ。
──同じ学校ということで気を遣うことも?
どうですかね。それは高校に限らず、どの先輩にもありますから。ただピッチに入ったらお互いに求められていることをやるし、こちらからも求める。代表チームでやることに変わりはないですね。そこはあまり、怖いとかはないですね(笑)。
──ピッチでは呼び捨てですよね?
だと思います(笑)。パッと出てくるのでその時々で違います。自然と呼んじゃう感じです。
──やはり同級生の石田選手と高橋選手は仲が良いですよね。
小学校から一緒ですからね。
──長岡JYFCですね。
そうです。それで僕は長岡ビルボードというチームで。
──長岡では小学生からJYFCとビルボードという系譜の違いがあるんですね。
そうですね。長坂さんもJYFCだったと思います。
──サッカーを続けてきて、その後フットサルの舞台で、しかも日本代表で再会するのはすごいですよね。
はい。代表でもう一度、一緒にプレーできるのはすごいなと思います。
──Fリーグでも帝京長岡高校出身の選手がかなり増えています。
大阪では中井駿斗が同級生ですし、Y.S.C.C.横浜の安井嶺芽も一緒です。しながわシティの荒木辰文とペスカドーラ町田の土岡優晟が2つ下ですね。
──高校時代のスタイルがフットサルにハマっている?
中井とも「意外とフットサルにつながる練習をしていたよね」という話はよくします。高校で一緒にやってきた分、中井とは感覚が似ているのですが、ここはもっとこうしようと話している時などに、高校の頃に取り組んでいたことを思い出します。当時から、サッカーにもフットサルにもつながるようなことを練習していたなと、今になって思いますね。その時は、言われたことをこなしていた部分が大きいですけど(苦笑)。今、あらめて同じような練習すると、中井とはフィーリングが合う感覚がありますね。
──齋藤選手や安井選手は、フットサルに進む先輩も出てきていたり、全日本ユース(U-18)フットサル選手権大会で結果を出していたりしたことで「フットサル」という進路が芽生えていたんですか?
僕は純粋に、フットサルが楽しかったというのがありますね。最初からフットサル選手を目指したいという入り方よりも、「フットサル楽しい」から始まって、結果が出たことでより楽しさが増していった感覚ですね。それで上を目指したいとなっていった。高校時代は、サッカーも楽しかったですけど、フットサルにより魅力を感じていきました。
──サッカーでのポジションはどこでした?
最後は左サイドバックでしたね。もともとは中盤とかサイドハーフとかでしたけど、だんだん下がっていった感じです。
──僕自身、全日本ユース(U-18)フットサル選手権大会を取材した当時の衝撃を今でも覚えています。帝京長岡自体もそうですし、齋藤選手や安井選手がうますぎて。しかも楽しそうで。ただ、Fリーグではあらゆる質と強度が上がる分、当時のようにプレーするのは簡単ではないだろうなということを、見ていて感じます。
それは思いますね。高校生の大会も、僕らの頃はサッカーの強豪校が優勝するケースが多かったですけど、今は町田やすみだとかFリーグの下部組織が勝っています。フットサル界にとってそれはいいことだなと思います。僕もフットボウズと決勝を戦った時に、普段やっていることと違いすぎてついていけませんでしたね。「なんだこれは」って。簡単にマークを外されて、そこにも僕はおもしろさを感じました。セットプレーとかを含めて。フットサルチームってすごいなって感じていました。
──そうだったんですね。あらためて、今が齋藤選手にとっても重要なタイミングですよね。今回、そして次のアルゼンチンとの対戦でアピールできないと、来年のワールドカップへ向かうメンバー争いに勝ち残っていけない。
間違いないですね。なので、1回1回の代表活動が勝負だと思っています。今回がいいから次に呼ばれ、次もよければまた次とつながっていく。なので今パフォーマンスを出さないと次はないと思う。一つは自分のパフォーマンスを出すこと。あとはチームとしてW杯ベスト8以上という目標があるので、個人とチームの力でそれを達成するために、両方の結果を求めて。勝ちながら自分も成長するし、自分もハイパフォーマンスを出して次もまた呼ばれるようにしていかないといけないと。まず、ウズベキスタンの遠征、練習を含めて、試合でも結果と内容を出せるようにやっていきたいと思います。
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