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作成日時:2023.11.22
更新日時:2023.11.23

【日本代表】内村俊太はなぜ“守備専門”でしかピッチに立てないのか?「良くも悪くも、徹するマインドが染み付いてしまっていた」

PHOTO BY本田好伸

11月16日、フットサル日本代表は、ウズベキスタン代表との2試合の国際親善試合に向け、活動初日に高円宮記念JFA夢フィールドでトレーニングを行った。

現在の代表チームにおいて、ある意味でもっとも“替えが効かない”タスクを担っているのが内村俊太だ。アジアや世界の屈強なピヴォをマンマークして封じ込めるという、守備のスペシャリストの役割である。

一方で、そのタスクを求められないような試合や時間帯では現状、彼の出番は限られている。8年ぶり4度目のアジア王者となったAFCフットサルアジアカップ2022はそれが顕著だった。イランとの決勝では、相手のピヴォを抑え込むために、40分間中18分の出場時間を得て、その役割を全うし、優勝の立役者の一人となった。

だが、それまでの5試合は、3試合で出場なし、残りの2試合は合計わずか10分しかピッチに立っていない。それはなぜなのか。内村はこのまま「守備のスペシャリスト」だけで戦い続けるのか。32歳。代表でもクラブでも、いい時も悪い時も経験してきたベテランにとって、悲願のワールドカップ出場へ向け、今が正念場だろう。

練習後、内村に話を聞いた。

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来年のワールドカップはなんとしても行きたい

──あらためて今の代表チームにおける内村選手の立ち居振る舞いを見ていると、キャリアを重ねてきたことで、立場はもちろん、見えているもの、感じているものが進化してきたんだなと痛感します。

感じますよね。俺もなんか、大人になったなって(笑)。

──自分を振り返ることもある?

あんまりないですけど、立場は変わってきましたからね。年齢を重ねてきたってことですね。でも、チームを助けられていないことには責任を感じています。苦しいシーズンになってしまっていますね。

──ただ、内村選手のパフォーマンスがいいだけに、チームの結果が出ない歯がゆさがあるのかなと。

そうですね。たとえば、この前のしながわシティ戦もめちゃくちゃチャンスがあったのに決めきれなくて。前半の最後のプレーで、俺はセグンドで触るだけでいい位置にいたけどラストパスをもらえなくて。

いいんですよ、そのプレーを選ぶのは。ただ「決められないなら出してくれ!」っていうのも正直あります(苦笑)。今シーズン、アシストは多いんですけど、逆に「俺にも出してくれよ」って(笑)。今までロドリゴがやってくれていて。彼は自分でも決めるけどパスも出してくれていたので。今の俺はアシストで終わってしまう。そこで出してくれれば1点なのに……ってシーンがかなりあるんです。「なんで!」っていうフラストレーションはありますよ。人のせいにはできないし、チームスポーツだから、自分に矢印を向けますし、要求するところは要求しますけど、やはり結果が出ない苦しさはありますね。

──そのなかでも代表に呼ばれ続けている。木暮賢一郎監督から求められている役割がある。そこに徹していますよね。直近のアジアカップ予選もそうでした。

そうですね(苦笑)。出場時間は限られるので、最初は自信をもって代表にきて、チームの中心でやるということもあったのですが、今は自分に求められているプレーに徹することを心がけています。だからメンタルは安定しています。もちろん、もっと出たい悔しさは忘れてはいないですけどね。

──自分のなかでそれを整理できているからこそ呼ばれているとも思います。一方で、出られない苦しさも予測できてしまう。難しいところですね。

そう……。

──ただ、そこに替わるような選手がいないのも事実です。ある意味では、内村選手に替われるような選手がいないから、呼ばれ続けている。まだまだ、内村選手の価値を代表で出せているということですよね。

来年ワールドカップがあるので、そこはなんとしても行きたいですから。

──では、ここから再び出場時間を伸ばすためにどうするというのは?

自分の場合は、ディフェンスはやれることは知っているし、去年のアジアカップ決勝のイラン戦のように、ポンと出て本番に強さを出せることも知っている、と。それは木暮さんも言っています。だからオフェンスの部分ですよね。今で言えば、(オリベイラ・)アルトゥールも(石田)健太郎もうまいじゃないですか。

パスを出せるし、頭がいい。そういうところは求められていますね。自分は縦のスピードもあるので、モビリティを出してもっと味方を生かしたり、自分がドリブルで運んで一つ外してパスを出したり、そういうことを求められていると思います。そこですね、俺の今の課題は。



守備に徹するクセがついてしまったきっかけ

──ただ、内村選手は元来、それをもっていますよね。パスも、ドリブルも、フィニッシュも、そもそもこのレベルで出せる質がある。だからどうして、ここまで出場時間が限られてしまうのかなと。

あとは戦術理解度とかもありますかね。ただ、チームでやっていることに関して理解はできています。

──あえて言うなら、アルトゥールのような遠目からでもズドンと決めるシュート力は劣るかもしれません。ただ、そこも自分で運んで崩してシュート、あるいはパスを出せますよね。

そこですよね。もちろん、パスも自信があるし、ドリブルもいける。でも求められているのはオフェンスだ、と。たぶん、ちょっと迷いがあるというか、チームに気を遣いすぎてしまう部分があるかもしれません。もっと図々しさとかを出さないと。

──たとえば、中村充選手などを見ていると、すごくガツガツいって、自分でゴールネットを揺らすところまでやりきってしまう。そういった感覚というか。今の内村選手はバランスを重視している分、自分ではいかない印象もあります。

それはありますね。勢いというか、昔のようにガーっといっちゃうところとか。チームでは、カウンターでも上がりきらないというか、ディフェンスを意識してしまう。前で取られた後を想定してしまう。そういうのが染み付いてしまっているのかもしれません。木暮さんにこの前の合宿の最後に言われたのは「チームで、ある程度のポジションが確約されている。一度ミスをしたところで、信頼がなくなるわけじゃない。ディフェンスもいいし、パスもいいから、もっと運ぶところを意識してやってほしい」というようなことを。代表でも、「パス、パスではなく、ちょっと持って変化をつけられる選手になってほしい」と。



──すごくイメージができます。自らフィニッシュまで持ち込めるかは、元々、内村選手が出せていたものを取り戻せるかというか。

そうですね、そうだと思います。内なるものをもっと出さないと(笑)。

──湘南でも、ゴールを決める瞬間は内村選手っぽいな、と。

毎試合ではないですけど、たまにスイッチが入るんですよね。わかりやすく、去年のアジアカップ決勝のイランのような超アウェイとか、Fリーグだと名古屋戦とか、いつもと違う感覚がある。超楽しい、やってやろう、みたいな。それをどこでも出せるようになれば。俺いけるじゃんという気持ちの時は、そういう相手がすごい強いとか、大きな舞台とか。なので、そのマインドを日常的につくり出せるか。

──少し、落ち着いてしまった感じですか?

カウンターでも、完全に最後までは絡まないとか、後ろでさばいてしまう。

──良くも悪くも、メンタルの波がなくなったというか。

そうですね。でも、リーグ戦でも毎試合、基本的にはパフォーマンスはいいと思っています。それはミスをしないとか、安定してカウンターにいけて、ピヴォをつぶして、パスをつないで、と。無理してないというか。

一つきっかけがあったんです。アルトゥールってドリブルしないじゃないですか?

──しないですね。

しないけど、ゴールを決めたり、うまいじゃないですか。それ、ブルーノ・ガルシア監督の時に、自分のできないことは無理してやらないという感じでした。プロフェッショナルが集まっているから。体を張れるピヴォも、仕掛けられるドリブラーも、みんなすごいレベルだから、アルトゥールはもう、そこは任せてしまう。

そういう話をしていたことがあって、それを聞いて妙に納得した自分がいたんです。湘南であれば、(靏谷)春人(萩原)真夏も、ドリブルは自分よりうまい選手がいる。だからそこは任せよう、って。そういう思考に自分のなかでなってしまった感じです。今はディフェンス、カウンターとか、いい意味でも、悪い意味でもそこに徹してしまっている自分がいるのかなと思います。

だから、代表にくればもっとプロフェッショナルがいるから、任せちゃう。あとは動きながらバランスをとって。もっと自分を出さないとと思いながらも、クセが染み付いてしまっている感じもあります。

──今の代表チームは、フィクソがゴールを決められるかも求められる水準になってきていますよね。石田選手はバランサーの色が強いですけど、高橋響選手が入ってきたのはそこもあるかな、と。

シュートがあることはでかいですよね。

──ということは、もう一度「内村俊太」を取り戻してW杯へ。

ほんと、そこに行きたいですよ。頑張りますんで。



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