更新日時:2023.12.17
【記者会見】元世界王者に2試合連続ドロー「2023年の最後のゲームとしていい戦いができた」木暮賢一郎監督はチームのクオリティに一定の評価
PHOTO BY本田好伸
日本代表は12月17日、北海道・帯広市総合体育館でアルゼンチン代表との国際親善試合第2戦に臨み、第1戦に続いて1-1で引き分けた。試合後、木暮賢一郎監督が記者会見に出席し、元世界王者との戦いを振り返った。
試合だけでなく、代表活動のすべてが大事
●木暮賢一郎監督
──今日の試合を振り返って。
相手が対策をしてきたり、コンディションもより整ってきたり、時間的な猶予がある2試合目ということで、1試合目よりも“本気度”が上がったなかのゲームでした。勝つことはできなかったですが、勇敢にプレーし、引き分けたのは2023年最後のゲームとしていい戦いができたと思います。
大田でも、帯広でも多くのお客さんに来てもらい、満員のお客さんがつくり出すホームの雰囲気を感じながら選手がプレーできたことは幸せだと思います。フットサルがより発展するきっかけになったらうれしいですし、本当に感謝しています。
──第1戦で引き分けた後の試合で引き分けにできたのは簡単ではない。それに、第1ピリオド、第2ピリオドとも、相手に5ファウルを出させたこともそうですし、ポゼッションのメリットをでもあったと思います。監督は以前、この道が正しいのかどうかという話はしていました。木暮監督が感じた、今年やろうとしてきたことへの手応えはいかがでしょうか?
2023年の全6回の活動は、2024年の世界(ワールドカップ)に勝つための仕様にシフトチェンジする目標を掲げたなかで行ってきました。まずは、選手が前向きに取り組んでくれたことに感謝したいと思います。クラブとは慣れない戦術や本来のポジション特性ではない時間帯でプレーすることもあったと思います。
自分は、選手としてもコーチとしても、攻撃を構築するよりも、ディフェンスを武器に世界と戦って一定のところまでいった経験をしています。そして2022年にアジア王者になりましたが、改めて監督として自分に問うなかで、なにかを変えないとこれ以上の高みを目指せないのではないかと。
しっかりと自信を持ってどんな相手でもボールを持つ。相手が日本に対してボールを奪いたいけど奪えないというストレスを与える。日本が守備を頑張って耐えるのではなく、いい守備に加えてボールを持って拮抗すること。そういうステージにいくための努力を、自分自身もチャレンジして、コーチングスタッフとも話しながらやってきました。
アルゼンチンは誰もが知るように、強固な守備を武器に世界のトップまで駆け上がったチームです。そういう相手に対して非常にスピーディーで、たくさんボールを持って、ポジションチェンジを繰り返しながボールを持つ。なおかつ、そこに満足してスコアを離されるのではなく、狙い通りに拮抗した時間を長くして引き分けることができました。
そこは、一つの掲げた目標に対しては、一定の評価をしていいと感じています。ただここから先はそれをゴールにつなげていくことや、違った対策をされた時にどうアタックしていくか。また、もっと多くの選手が、日本人の良さであるスピードとモビリティ、正しいテクニックを出して、ボールを持つことを怖がらないように引き上げるチャレンジも必要だと思っています。
──より“本気度”が増す2試合目は、選手起用が限定的でした。使いたくても使えない、あるいは使わない判断があったと思います。起用しなかった選手に対して伝えたいこと、また、監督としての決断の意図は?
試合に出られないことは悔しいと思いますが、試合だけではなく、この代表活動のすべてが大事だと思っています。このユニフォームを着て、ホームで素晴らしい相手と試合をする。それに向けたトレーニングの準備だけではなく、多くの方々のサポートや期待感、プレッシャーなどの活動のなかで彼らが学ぶことが大事です。試合に出ていいプレーをした、プレーが悪かった、出られなかっただけでなく、彼らが学んだこと、味わったことがあると思います。それは招集されないとわからないことです。招集されずに自分の家でYouTubeで試合を見たり、試合会場に来て見たり、後から話を聞いたりではなく、我々と同じ目線で体感することがなによりも大事だと思います。
次になぜ出られなかったかと言うと、いわゆるハイインテンシティのなかで、我々が求めるのは、パスのスピードや動くスピード、決断するスピードなど、すべてにおいてスピーディななかで正しいテクニックを使うことです。
その基準に、少し足りなかった。それはゲームだけではなく、トレーニングでもその差があった。ディフェンスでも同様で、足を使ってスピードを持って、強度を高く寄せる。相手が走ってきたらそこについていくなど、世界レベルの基準にはまだ届いていなかった。
ただしもう一度言いますが、それは悪いことではなく、直接それを経験することで彼らに変わってほしい。初めての経験の選手も多く、誰もが初めからうまくいくわけではありません。大事なことはこの悔しい経験を自分のクラブに帰ってどれだけ感覚を忘れずにトレーニングができるか。戦術はクラブと代表で違ったとしても、そのマインド、世界レベルの基準にどう到達するか。それを忘れずにトレーニングできるか。できると思っているから呼びましたし、あとは彼ら次第かなと思います。
元世界王者との戦いに手応えを感じつつも…
──平田ネトアントニオマサノリ選手が2試合で1得点1アシスト。ピヴォの選手がやりたいことができるようになってきた印象だが。
マサに関しては、2つの理由でここまで苦しんでいたと思います。
新しい代表のモデルに適応するところ。そして海外のクラブに移籍して出場機会や新しい環境での適応。その2つの理由で苦しんでいたと思います。彼とはずっと話してきていますし、大事なことはなにか新しい取り組みをした時に、なぜそれをするのかを理解している選手と、理解できない選手では大きな違いだということです。理解して努力する選手にはとことんサポートをしますし、必ず変われると信じています。
ただ、その理解ができていなかったり、コミットできない選手の成長スピードは難しくなると考えています。そういう意味ではマサにしても(清水)和也にしてもタケ(本石猛裕)にしても、苦しいなかでも前者として、なぜを理解してくれた。彼の努力が少しずつ実を結んで、この2試合で一つの成果を残せたと思います。
この間も言いましたが、自分は魔法使いではありません。代表チームとして多くの期待を背負って、その先頭に立ってトレーニングをしたり戦術を組み立てたり、選手を起用したりしていますが、その期待に対して一足飛びで誰もが満足するプレーを見せることは難しいと思っています。
大事なことは、取り組んでいるプロセスを自分たちが信じて、周りになにを言われても、うまくいかなくても、歩んでいる道を正しいと信じて、一歩ずつ着実に努力していく集団をつくっていくことだと思います。もちろん時間は有限なので、結果や内容でジャッジされることは当たり前です。
ただし、見えるものだけではなく、みんなが見ていないところでどれだけの努力をしているか。そこを自分は見ています。テレビや試合に映らない部分を評価してあげたい。そういう意味では彼だけではなく、すべての選手、今回出た選手も出なかった選手も見えないところで努力をしてくれたと思いますし、そういうグループが強くなり、評価される世界であってほしいと思っています。
──2024年はアジアカップ、ワールドカップと続きます。そのアジアカップではタジキスタン、キルギス、韓国と同グループになりました。
選手にもずっと話をしていますが、前回のワールドカップは、予選を戦っていないことを忘れてはいけません。我々が最後にワールドカップ予選を戦ったのは2016年で、ベトナムとキルギスに負けました。当時はクラブの監督でしたが、メディアの方やサポーターの方、選手たちも間違いなく、日本代表の歴史のなかでも最高レベルの選手だと感じていたと思います。自分自身も、そういう状態で迎えた大会だったと記憶しています。
でも、残念ながら予選を勝ち抜くことはできませんでした。選手も我々も(前回大会の)2021年を見てはいけません。過去を振り返るなということではなく、それくらいワールドカップ予選は簡単ではないということです。2021年はいろいろな状況のなか、推薦というか、過去の成績でワールドカップに出て素晴らしい成績を残しました。我々の今のグループに予選を戦って勝ち上がった経験のある選手はほとんどいません。ワールドカップでプレーしたことがある選手もほとんどいません。
ただ、自分自身を含めて、日本代表の歴史は誰よりも知っているつもりです。同じ過ちを繰り返さないだけではなく、そういったものを跳ね除けて、最高の成績をつかむためのいい準備を毎回の活動で続けています。一つずつ着実に、毎回の活動を大切にして、いい準備、いいトレーニングを続けて、アジアカップに臨みたいと思っています。
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