更新日時:2024.03.23
7年過ごした“ベルマーレファミリー”との予期せぬ別れ「我慢してたけど、心の中では泣いていた」|湘南・ 本田真琉虎洲 #人生に刻むラストゲーム
PHOTO BY高橋学
今年も全日本フットサル選手権を前に、選手の進退に関するリリースが各クラブから続々と発表された。チームに来年も残ることを決めた選手、新天地を求める選手、長年の現役生活に終止符を打つ選手……。1シーズンを締めくくる最後の公式大会に懸ける思いも、十人十色だ。
そして試合を終えた後の表情も、人それぞれ。同じ今シーズン限りの引退選手を取材しても「やり切った」と清々しい笑顔を見せる選手もいれば、「もう少しみんなと一緒にプレーしたかった」と悔し涙を流す選手もいる。
そんななか、本田真琉虎洲は誰よりも“寂しげ”な表情で取材エリアに現れた。もともと多くを語らない寡黙なキャラクターながらも、湘南からの退団が決まった今の胸の内を明かしてくれた。
うれしかったことだけを心に留めたい
12月9日、平塚総合体育館で行われた湘南ベルマーレのホーム最終戦。ほぼ満員の活気あふれるスタンドでも、本田は、一人寂しげにピッチを見つめていた。その表情から「もしかして……」と悟ったが、予感は的中した。
3日後の12月12日、7年在籍したスコアラーの今シーズン限りでの退団が発表された。公式ホームページの本人のコメントを読めば、自らの意思でチームを離れるわけではないことは明らかだった。
「退団が決まったのは、ホーム最終戦の2日前の夜のことでした。試合に出られず、直接お礼ができなかったのは残念。でも、どうしても土曜日(12月9日)に向けて気持ちを切り替えられませんでした」
年齢も39歳を迎え、出場時間も徐々に減少。数週間の離脱を余儀なくされる怪我も増えた。それでも、今シーズンの開幕戦では自身のFリーグ通算200得点のメモリアルゴールを含め2得点をマーク。出場すれば相手ゴールを脅かすダイナミックなプレーを見せ、連敗が続くチーム状況でもベテランとしてできる限りのことをしてきた自負はあった。だからこそ、予想していなかった突然の「さよなら」を受け入れられずにいた。
「もう本当はやりたくないなと思ってしまったのが、正直な気持ち。もちろんスポーツをやっている以上はプロでもアマチュアでもそういう話(契約満了)はあることだけど、それぐらい驚いたし、すごくショックでした」
それでも全日選手権を終えるまで湘南の一員として走り切ろうと思えたのは、なによりも自分を応援してくれるファン・サポーターの存在があったから。
「普段からSNSはあまりやらないんですが、リリースが出た時はいろんな人から届いたコメントも読みました。それでやっぱり、頑張るしかないなって。もちろん自分のためもあるけど、僕を応援してくれる人のために。結果は残念でしたけど、最後まで戦うことができました」
3月1日、試合終了を告げるタイムアップの笛の後も表情を崩さなかった本田だが、応援席の前で自分に向けたメッセージの横断幕を目にした時だけは、涙を堪えるのに必死だった。
「こういう時のサポーターの声はやっぱり泣きそうになります。我慢してたけど、心の中では泣いていたし、一緒に戦ってきた選手たちにも感謝したい。僕はこれからまだまだフットサルをやるつもりだし、たとえ敵になったとしても仲間だったということは、ずっと残るはずです」
取材時、「まだ先の話はできない」と前置きしながらも、現役続行の意思だけは表明していた。そして、選手権終了から約3週間が経った3月21日、7年ぶりにペスカドーラ町田への復帰が発表された。
町田と湘南は、お互いが“前身時代”からしのぎを削ってきたライバルであり、「境川決戦」と銘打たれたダービーマッチはFリーグで最も歴史と熱気のある激闘を繰り広げている。本田が「たとえ敵になったとしても」と語った言葉が、グッとくる。
本田と言えば、ピッチ外での寡黙で温和な雰囲気とは裏腹に、ピッチ内での闘志むき出しのプレーとのギャップが際立つ選手の一人。「ジャッピーニャを怒らせてはいけない」とは、Fリーグの選手たちもよく理解しているところだ。
そんな選手が、そんなチームに舞い戻る。ファン・サポーターにとって、少なからず複雑な思いはあるだろう。そんな周囲の心中をあらかじめ察していたかのように、本田はこう告げていた。
「いろいろなことがあるけれど、湘南の選手たちにはこれからも頑張ってほしい。僕も、うれしかったことや楽しかったことだけを思い出すようにします」
7年間の「いい思い出」だけを心に留め、Fリーグ18年目のシーズンに向け、新たな一歩を踏み出す。今年9月で40歳。「湘南のターミネーター」「町田の闘将」そのどちらも、本田の愛称だ。
ジャッピーニャは新シーズンもきっと、いつものように闘志を前面に押し出した姿を、境川決戦で見せてくれるに違いない。
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