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作成日時:2024.03.29
更新日時:2024.04.08

【日本代表|会見全文】連覇、そしてW杯出場へ。「約2年3カ月の集大成を」木暮賢一郎監督が語るメンバー選考理由とアジアカップへの思い。

PHOTO BY高橋学、本田好伸

いよいよ、4月17日からフットサルアジアカップ2024が開幕する。今大会は、9月に行われるFIFAフットサルワールドカップ2024の予選も兼ねた重要な大会だ。

2022年に行われた前回大会で8年ぶりにアジア王者に輝いた日本は、W杯への出場権獲得と大会連覇を目指して、開催地・バンコクでの戦いに挑む。

328日、アジアカップに参戦する14名が発表され、木暮賢一郎監督が記者会見を実施。メンバー選考やアジアカップへの思いを語った。

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最適なグループのバランスを考えて選んだ

■木暮賢一郎監督

我々にとって非常に重要な大会が待っていますので、こうしてみなさまの前でお話しできること、そしてここから始まる活動を楽しみにしています。

代表監督に就任してから約2年3カ月、活動してきました。その間、50人近くの選手を招集して、35試合ほど行ってきた活動の一つの集大成として重要な大会に臨みたいと思っています。

──2月のポルトガル遠征からの変更もありますが、今回のアジアカップに臨むメンバー選考の狙いをお聞かせください。

いろんな選手と様々な取り組みをして、対戦相手に応じた課題や必要なことを吸収しながらここまできました。そのなかで、最適なグループのバランスを考えて選びました。我々が求めている、個人として、チームとしての要求やタスクはありますが、選手それぞれがもっている特徴や良さを踏まえ、バランス良く14名を選出できました。

常々お話しをしていますが、このアジアカップはFIFAデイズの期間外となるため、その関係でリストの土台に上がることが難しい選手も何名かいます。

そもそもリストにいない選手もいますが、様々なトライをしてきたなかでバランスを考えています。どの相手と戦ってもバランス良く持ち味を出せるということと、グループのために仕事をしてくれること。素晴らしい14名の選手を選出できました。

 ──その「バランス」ということでは、具体的にどんなポイントがありますか?

大会はファイナルまで6試合ありますから、攻撃面ではセットやグループの組み合わせ、選手の特徴を生かし、バリエーションを増やす選手がいること。守備では、相手の特徴やピヴォとしっかりと対抗できること、それに前からのアグレッシブなプレス。攻守において足を使え、スピードでイニシアティブをにぎることを考えています。

──先ほど、FIFAデイズのお話がありました。海外組の選手では、逸見勝利ラファエル、内田隼太、原田快などが入っていません。FIFAデイズの兼ね合いでクラブの了承を得られなかった選手など、話せる範囲で教えてください。

 隠すことはありません。AFCの登録上、25名のラージリストがあり、14名が登録されます。ただ誤解してほしくないのは「呼びたい」よりも「出せない」ということです。

呼びたかったけど呼べないということではなく、そもそも呼べる状況にないという伝え方が近い。国内組や怪我などを含め、リストを作成する段階の交渉で、逸見と原田の所属クラブはFIFAデイズのみしか出せない事情があります。FIFAデイズは、4月6日〜17日まで。日本の初戦が18日ですから、呼ぶ、呼ばないという状況ではありませんでした。

逸見と内田は怪我をしていましたが、今は回復して復帰し、先日の試合にも出ています。ただ、代表チームとして招集する土台に上がらないということです。

内田については、合流できるタイミングにおいて、こちらが求めているタイムラインとクラブが出してもいいという日程の交渉で難しい部分がありました。

それぞれ年齢も、置かれているクラブの状況もカテゴリーも違いますが、総じて、我々が希望するものとマッチしなかった。大きな要因はAFCがFIFAデイズ外であることです。

昨年から(クラブとの交渉をスムーズにする関係構築の意味を含めた欧州行脚で)スペインにも行っていますし、長い間、理解を求めてきました。ただ私もクラブの監督をしていましたので事情は理解できますし、欧州に出向いた昨年8月と半年後の現在とでは、シーズン終盤のチーム状況も違いますから、致し方ない部分ではあります。

もちろん、全員がFIFAデイズにはまらなかった、ということではありません。選考する上で14名に入れなかった選手もいれば、物理的に厳しいという選手もいました。

 ──木暮監督としては、アジアカップをFIFAデイズでやってほしい?

それはもう(その通りです)。ただし、呼べないことをネガティブに受け取ってはいません。常に、その時に選ぶ14名がベストです。怪我もあればクラブ事情もある。ですから「一番呼びたかったメンバーではない」とは思いません。今がベストです。

それでも、選出段階での競争原理、より精密にジャッジして選考するという視点で言えば、FIFAデイズ内であれば「土台に乗らない」ということは起こらず、そのほうが望ましいものです。スペインも2部になると違うので様々な点で改善を願っています。

 ──新井裕生選手がピヴォで選ばれていることもあり、左利きのアラでアジアカップ経験者がいません。ポルトガル遠征では、守備面でのエラーもありました。左利きのピヴォである彼に求めることは?

バランスを考えて、3人のピヴォがいます。それぞれ異なるタイプの選手を要することができるのはメリットです。新井は左利きであり、そして、アラもピヴォもできる。なおかつ、リーグで結果を出しているように「ゴール」をもっている。我々の攻撃のオプションを増やしていく視点で非常に必要だと感じています。

前回のポルトガル遠征が久しぶりの招集でしたが、非常にアダプトも早かった。世界トップの国との対戦でしたから、どの選手でも細かなエラーはあると思います。それ以上にチームへの融合、戦術理解の融合、そのなかで可能性を感じるプレーを見せてくれたことを踏まえ、評価しての選出です。

左利きでは、全員が初めてのアジアカップです。どの選手にどんなことがあっても新しく入る選手は同等レベルかそれ以上になる競争を求めています。この2年3カ月で多くの左利きを選んできたなか、今の時点でバランスの取れた左利き選手がラインナップしました。



育成を大事に、さらなる成長を遂げていきたい

 ──今回は4名のサポートメンバーも国内合宿に参加しますが、選考の狙いを教えてください。

日本フットサルをより良いものにしていくためにも、育成を非常に重視してきました。常に若い選手が入って彼らが刺激を受け、今いる選手を大きく飛び越えていくようなサイクルを絶やさず、継続していくことが大事だと考えています。

前回のアジアカップでも2人の若い選手(井戸孔晟、宮川泰生)を連れていきました。今回はワールドカップ予選を兼ねていますし、現地に連れていくことも考えましたが、多くの選手と共に練習し、過ごす時間など、国内で一緒にトレーニングすることがいいと思い、一週間ですが、寝食を共にし、全ての活動を行ってもらおうと思っています。

招集の背景としては、U-19以下の選手であることと、育成年代の代表で我々とともにプレーした経験のある選手であること。ポジションバランスでも左利きのアラ、フィクソ・アラ、ピヴォと、一つのセットとして活動できることを考えています。

加えて、Fリーグのトップチームに帯同したり、ベンチや試合に出ていたりする選手を基準として設けています。伊集(龍二)と柴山(圭吾)は2022年に行われたクロアチアでの大会「Futsal Week U19 Summer Cup – Porec 2022」でU-19代表として出場しています。

私は先日までスペインで開催されたカンファレンスに出席し、各国の代表監督や育成年代の監督とディスカッションしたのですが、そこでも日本への良いイメージを伝えられましたし、クロアチアの大会は今でも評価を受けています。その大会でもいいパフォーマンスを示していた選手たちの経験を引き上げていきたいと考えています。

青島(竣平)と羽生(恒平)はさらに若い選手です。昨年のトレセンのメンバーでもありますし、オーシャンカップでもU-19フットサル日本選抜として共に出場し、彼らはトップチームでも出番をえています。(青島、羽生がそうであるように)左利きはどのカテゴリーでも継続的にいることが理想なので、年齢は若いですが、彼らの年代の選手にも刺激を与えたいと思っています。

全体的な観点としても、我々が今だけではなく、常に若い選手をピックアップしてきているメッセージを、日本のフットサル界に届けたいと考えています。育成を大事にしていますし、さらなる成長を遂げていきたいという思いも含まれているものです。

 ──羽生や青島が、上の世代の代表で継続的に一緒にやる意義について教えてください。

2つあります。一つは、若い世代の選手が、代表のトップの選手と共に過ごすことで彼らのマインドを強く引き上げ、大きな刺激を感じ、新しいサイクルに入るタイミングで、自分たちの努力によって蒔いてきた種の花を咲かせてほしい。彼らは育成年代でもいいプレーをしてきていますし、この一週間、精神的にも耐えられるだろうと加味して選んでいます。

もう一つは、日本全体へのメッセージです。フットサルにおいて、若い選手に大きな夢や目標を強くもってほしい。もちろん、代表選手になるだけが目標ではないとは思います。Fリーグでプレーすること、チームスポーツで成長するなど様々だと思います。

ですが競技スポーツである以上、代表やW杯、フットサルにはまだないですが五輪があるならそこへの目標が当たり前にあるものです。同年代の選手を見ることで、どこで誰が見ているかわからないし、チャンスがある、と。

直接、メンバーに入るだけでなく、同年代の選手にも機会があること、自分のほうがもっとできるという意欲。それに、多くの育成年代の指導者の方々のおかげで引き上げられている感謝があります。そうしたメッセージでもあります。より素晴らしい選手を育てるエネルギーに変えてもらえるようなメッセージとしてポジティブに受け取ってほしい。

それとは真逆の発想で、(ピレス・)イゴールのように「15番目の選手」もいます。大会には出場しなくても、(現地に帯同して)力を貸してほしいですし、予選もチーム力が試されるなかで、彼の人望や経験、情熱が、間違いなく、全ての選手に大きな影響を与えると確信しています。

僕より年齢が一つ下で、若い選手の育成と言っている軸とは真逆ですけど、若い選手もイゴールの取り組む姿勢などを学びに変えてほしい。我々のチームにおける大きな役割を担ってほしい意図を彼も理解し、参加してもらっていることもお伝えしたいと思います。



“十字架”を選手が背負う必要は全くない

──2022年の前回は優勝しましたが、コロナ禍の影響もあり、国際大会の経験を積めていないなかで臨んだ大会でした。連覇を狙う今大会の意気込みをお聞かせください。

もちろん、連覇を目標にしています。ただしまず一つ目のターゲットは、しっかりと準決勝に進んで、W杯の権利を得ることが目標です(編集部注:今回のアジアカップはW杯予選を兼ねた大会でもあり、W杯開催国のウズベキスタン+アジア4枠が与えられている)。そこを突破した上で、優勝という次の目標に向かっていきたい。時系列的にもそうですがそんなプランで臨みたいと考えています。

他の大陸と比べても、アジアはW杯イヤーになると非常に力を注いでくるという傾向は、この何十年、変わっていません。日常的なリーグでは日本とイランが抜けている現状があり、多くの国はこの予選に全てを注いでくるという構図を今でも感じています。

その意味では、他国も2022年のアジアカップとは異なる戦力構成となります。どの国もモチベーションは高いですが、大会への準備という点では濃淡がすごくあります。もちろん脅威に感じることもあります。一方で、我々は継続的に強化試合を繰り返して成長するという全く違う戦略であり、プロセスを評価されるべき取り組みをしていると信じています。

育成においても、Fリーグも、各クラブのレベルも向上し、下部組織の歴史も積み重ねてきたものが代表チームに反映されると信じていますから、我々とは異なる構図の手強いライバルはいますけど、日本が取り組んでいる道を信じて臨みたい。

大きな成果を出すことで、代表チームだけではなく日本フットサルの成功になる。レベルの高さ、取り組んでいるプロセス、積み重ねの歴史を証明できると思っています。

 ──タイといえば、木暮監督が2012年のW杯にキャプテンとして出場した思い出の場所でもあります。当時は三浦知良さんのメンバー入りでも話題になりました。先日、ポルトガル遠征でもカズさんが試合観戦にいらしていましたが、話をされたんですか?

 ハーフタイム中に少しだけですけど、話はできました。

 ──カズさんと話したことや、今回が2012年のW杯以来となる、アジアの予選を勝ち抜いてW杯に出る大会になります。監督自身、どんな思いがありますか?

カズさんにはいつも応援しているよ、と言ってもらいました。日頃からそうしたやりとりはさせてもらっています。ポルトガルとの試合をサプライズで見に来てくれたことは本当にうれしいですし、自分がカズさんと約束した「フットサル界をもっと引っ張っていってほしい」という強いメッセージを忘れたことはありません。

引き続き、強い気持ちで臨みたいと思っています。

予選が久しぶりというのはおっしゃる通りで、2021年は予選がなく、2016年は予選敗退してしまいました。12年ぶりの自力での予選突破を目指す。2016年の悔しい思いは、フットサル界全体で今もなお、悔しさとしてもっている方もたくさんいます。自分もそうです。

忘れたこともありません。選手に対しても一次予選では少し、その話をしました。ただし、僕自身も少しずついろんな経験を重ね、年齢を重ねたことで、今その質問に答えるなら、そうした思いや“十字架”を選手が背負う必要は全くないな、ということです。

率直に、そんなことを気にしないで、たくましく戦ってほしいと思っています。唯一、2016年大会の現場にいたのは吉川智貴だけです。W杯を経験しているのは彼と(オリベイラ・)アルトゥールと、清水和也の3人です。残りの選手は、ある意味でその経験をしていない世代ですけど、この2年3カ月で、アウェイの本当にハードなゲームを繰り返しながら大きく成長してくれました。年齢だけではなく、2021年までの代表活動にいなかった選手が圧倒的に多いですが、彼らの新しい価値観や取り組んできたプロセスを振り返れば、なにも心配することはありません。そうしたプレッシャーを簡単に跳ね除けてたくましく戦ってくれる14名の選手になっていると思います。

彼ら自身も、大会が始まればプレッシャーを感じたり、その前からいろんな話を聞いたりしていると思います。自力で予選を勝ち抜くことが久しぶりだとか、2016年に負けたとか。少なからずプレッシャーを感じることはあるかもしれないですが、世界で勝つには跳ね除けるマインドでなければいけません。大きなプレッシャーや呪縛を背負って戦うのではなく、思い切り解放して戦わせてあげたいという思いです。

もしプレッシャーを感じるのであれば、それは私だけでいい。選手たちには、ここまで取り組んできたことを出してほしいと思っています。



▼ 関連リンク ▼

  • AFCフットサルアジアカップ2024予選|大会概要・試合日程&結果一覧
  • Fリーグ2023-2024 試合&放送日程

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