更新日時:2024.04.26
【日本代表】木暮ジャパンの敗因をSAL編集部が徹底分析!日本フットサルのこれからの課題、再起に向けての展望は?
PHOTO BY本田好伸、AFC
4月17日から開幕した、AFCフットサルアジアカップ2024。木暮賢一郎監督率いる日本代表は、前回大会での優勝に次ぐアジア連覇と、今年9月に開催されるFIFAフットサルワールドカップの出場権を懸けた戦いに臨んだ。
しかし、18日に行われたグループステージの初戦でキルギス戦に2-3で敗れ、第2節での韓国戦に5-0で勝利しなんとか勢いを盛り返すも、第3節のタジキスタン戦で1点リードから追いつかれ勝ち切ることができず。ノックアウトステージ進出には「勝利」が絶対条件だった試合を落とし、史上初のグループステージ敗退という衝撃的な結果で幕を閉じた。
2021年11月に木暮監督が就任以降「世界で戦えるチーム」を目指して選手育成と強化を図り、順調な道のりを歩んでいたはずの日本代表は、なぜ17回目にして初めてグループステージ敗退の事態に陥ったのか。そして、今後の日本フットサルが抱える課題とは?
現地で戦況を見守ったSAL編集長の北健一郎と副編集長の本田好伸が、客観的事実と専門メディアとしての目線を織り交ぜながら、見解を語った。
■どこよりも早い敗因徹底分析!SALTV
https://www.youtube.com/live/wunHUaebA9M?si=pNtiyIeFQFHbxW6y
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苦肉の“3セット回し”は、吉と出たのか凶と出たのか?
まず、今回の敗因を考える上で避けて通れないのは、攻守の要であるアルトゥールと、エースストライカーの清水和也の開幕直前での離脱だ。これまで木暮ジャパンは、清水、吉川智貴、堤優太、アルトゥールの4人でファーストセットを組み準備を整えてきたものの、そのうちの2人を欠くという不測の事態に。急遽、セットの内容を組み替えて初戦のキルギス戦に臨んだ。
北:フットサルはただでさえも、選手同士が呼吸を合わせることが大事なので、同じセットの選手が2人も代わってしまう影響が初戦の時点でかなり響いていたなと思います。そこで木暮監督は韓国戦とタジキスタン戦で、同じクラブでプレーしてきた時間が長い選手を同じセットで組ませて、「3セットを均等に回す」という決断を取りました。この“3セット回し”は、これまで本番と言われるような大事な大会では取り入れていませんでした。
本田:選手としては、プレー時間が均等になることで「出番が来るタイミング」を見やすくなるというのもあります。ただ一方で、プレータイムをある程度長くとったほうが、強度も上がって自分のパフォーマンスを発揮しやすいという選手も多いんですよ。なので、いわゆる強豪と言われるチームは基本的には2セットで回しているし、これまでの木暮さんのスタイルではまずなかったな、という戦い方でしたね。
(動画内:9:39〜)
https://www.youtube.com/live/wunHUaebA9M?si=F9DHdD_rZajjtj4H&t=579
代表活動の最大の障壁、「FIFAデイズ」のジレンマ
想定外の2人の負傷については発表時点でも大きな話題となり、ファン・サポーターからも日本代表のチーム状況を心配する声がSNS上で寄せられていた。しかし清水とアルトゥールを欠く前に、木暮ジャパンにとって避けたかった問題はすでに起こっていたと、北は言及する。
北:そもそもベストメンバーを選ぶ上で、このアジアカップが欧州組を招集できる「FIFAインターナショナルマッチデー(以後、FIFAデイズ)」の期間ではないという点が、大きな壁でした。特に最近は個の技術を高めるためにスペインでプレーする選手も増えましたが、FIFAデイズではない時期に欧州の選手を呼ぶためには、クラブとの交渉が必要になります。そのために木暮監督は、日本人選手が所属するクラブに直接訪問し「アジアカップに協力してほしい」とお願いしました。それでも、いざ大会を前に招集に応じてくれたのは、山田凱斗が所属するインテルFSと平田が所属するサンタ・コロマのみ。これはもう、代表チームだけで解決できるものではなく、AFCも巻き込んで解決しなければいけない問題です。
本田:たとえば清水選手も2021年までスペインリーグで主力として活躍していて、海外でやれる力はある。それでも日本に帰ってきたのは、もしかしたら日本で活動していたほうが代表に関わりやすいということが、理由の一つにあるかもしれないですよね。
(動画内:40:39〜)
高まるアジアの競技力と、日本の優位性の薄まり
FIFAデイズ期間外での大会開催と主力の負傷。仮にこれらの問題をないものとし、ベストメンバーで戦えていたとして、木暮ジャパンはノックアウトステージ進出後にワールドカップ出場権獲得、そしてアジア連覇という目標を達成できていたのか。現地で各国の戦いぶりを見てきた北と本田は、「そう簡単にはいかなかったのではないか」と分析する。
北:フットサル選手を構成する要素として、「フィジカル」「テクニック」「ブレイン」の三つが挙げられると僕は思っているのですが、日本の選手はこれまで「ブレイン」の部分に特化して、サッカーではなくフットサルの知識をきちんと身につけて専門的なチームをつくってきたことで、他の国にアドバンテージを持てていた。でも、ここ数年、アジアの国もスペインやブラジルから優秀な監督を呼んでくるようになって、アジア全体のリテラシーが上がってきている。それは今大会でのいろんな国の戦いを見ていて、すごく感じた部分です。
本田:じゃあどう戦うかというところで、木暮さんがよく選手たちに伝えていたのが「モビリティ」と「カオスを作る」いうキーワードでした。体格差がある相手に対して、金澤空や堤優太といった小柄でもスピードのある選手をうまく生かしながら、4-0で動き回り、一歩先の駆け引きをしてカオスを生み出す。グループステージ敗退という結果にはなってしまいましたが、そういった戦い方を突き詰めていた木暮さんの戦い方が決して間違っていたわけではないと、このアジアカップで改めて感じることができました。
(動画内:25:39〜)
改めて語る、国内リーグの重要性
日本のフットサル史にも残るグループステージ敗退という結果で、アジアカップの戦いを終えた日本代表。今回の事態について、競技関係者や指導者のみならず、ファン・サポーターからも、フットサルという競技の未来を危ぶむ多くの声が挙がっている。
特に論点となっているのは、国内トップカテゴリーにあたるFリーグの「プロ化」。サッカーからの転向だけでなく、Fリーグクラブの育成組織の環境も徐々に整ってきている一方、進学や就職のタイミングなどで、有望な若手選手が引退してしまう現状に目を向けなければならない。
本田:第3節で戦ったタジキスタンのメンバー表を見てみると、2017年と2019年に行われたAFCU-20フットサル選手権に出場していた選手が、6、7人フル代表のメンバーに入って、今回のアジアカップを戦っているんですよ。対して日本は、2017年に出場した清水と石田、そして優勝した2019年大会ででいうと、山田のみ。一緒にピッチに立っていたメンバーを確認してみると、競技から離れてしまっている選手も何人もいる。若い選手たちは稼げなくても無茶ができる年齢でリミットを決めて、たとえ活躍していたとしても決めた線を越えたら引退してしまう選手も多い、というのが現状です。
北:今、Fリーグでも名古屋オーシャンズ、バサジィ大分、しながわシティは実質「プロクラブ」として活動をしていますが、スポーツ商業として成り立っているかと言われるとそうではなく、運営会社やスポンサーが先行投資をして、選手を集めているのが事実。ずっと言われてきていることではありますが、少なくともF1に所属しているクラブや選手たちは、ある程度フットサル1本で食べていけるように、環境のベースラインを上げていくべきです。
“W杯アジア予選敗退”というネガティブな注目のされ方にはなってしまいましたが、こうして賛否を集めているこのタイミングで、ビジネスや運営の構造を見つめ直し、どうやってこのフットサル界を盛り上げていくのか。ここからどう立ち上がっていくかを、この競技に関わるみんなでもう一度考えて、行動に移していかなければいけないと思います。
(動画内:57:45〜)
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