更新日時:2024.08.21
【バーモントカップ優勝インタビュー】フットサルで土台を築いたチームが今大会で証明したもの「勝ち負けよりも、自分たちの力を出すことにフォーカスできた」(戸塚FCジュニア アドバイザー・鳥丸太作)
PHOTO BY伊藤千梅
8月16日から18日に行われたJFA バーモントカップ第34回全日本フットサル選手権大会は、初出場の戸塚FCジュニア(埼玉県代表)が初優勝した。
戸塚FCはサッカーの強豪としても知られるチームだが、選手の成長を促し、チームを底上げしてきたものこそが「フットサル」である。今大会、戸塚FCのベンチで指揮を執ったアドバイザーの鳥丸大作氏は、選手が低学年、あるいは幼稚園生の頃から「フットサル=フットボールに必要な原理原則」を落とし込んできた。
鳥丸氏は、FリーグのY.S.C.C.横浜で監督を務めた後、現在はフウガドールすみだのコーチを担っている。それともう一つ、フットサルを通して世界で活躍できるフットボール選手の育成を目的とした「RAD FUTSAL PROJECT」の代表という顔をもつ。
現フットサル日本代表監督の高橋健介氏が立ち上げたプロジェクトを鳥丸氏が引き継ぎ、戸塚FCのようなサッカーチームやフットサルチーム、あるいはスクールなどを通して、育成年代の子どもに“フットボール選手としてのベース”を伝える指導を続けている。
▼なぜ非セレクションチームが全国優勝できたのか?
戸塚FCJはセレクションのあるチームではありません。
もちろんチーム内競争はあり、その過程でメンバーの出入りはありました。… pic.twitter.com/ABhHGfTe54
— RAD FC 🇯🇵 RAD Football Academy ⚽ (@RADFUTSAL) August 19, 2024
バーモントカップにおいて、「フットサルを学び続けるサッカーチーム」が頂点に立ち、戸塚FCの選手たちが今大会のプレーを通して証明したものの価値は大きい。
大会初戦、思わぬ敗戦から始まったものの、ワイルドカードでグループを突破し、初出場で優勝にたどり着く過程で、彼らはどう戦っていたのか。大会を終え、「プロジェクトの集大成だった」と安堵の表情を浮かべたアドバイザー・鳥丸氏に話を聞いた。
戸塚FCジュニア優勝インタビュー
★後日、鳥丸アドバイザー続編インタビューを掲載
「提言!育成年代のフットボール指導者が“フットサル”をすべき理由」
自分たちがいいプレーをした先に勝利がある
──優勝おめでとうございます!率直にどんなお気持ちですか?
まだ実感は湧いていないのですが、日本一を目指してやってきたので本当にうれしいです。選手たちとは、6年生になったらバーモントカップに出たいねと話していたなかで出場ができて、自分たちが今まで積み上げたものを発揮して最高の結果を残すことができました。今後は選手たちが小学生の間にもう少しやりたいことがあるので、いろいろと落とし込んでいこうと思います。彼らはまだまだうまくなると思います。
──決勝トーナメントの4試合はすべて逆転勝利でした。
トップ選手でも、試合の入りの部分の改善は難しいですからね。あとは運もあると思います。こぼれ球が相手にいってしまったり、セットプレーでやられてしまったりすることもあります。それでも失点しても取り返せたことは良かったと思います。選手たちにはそれを乗り越える力がありました。
選手たちも失点をすると少し不安そうにするんですけど、ベンチを見て僕らコーチ陣が「落ち着いて、大丈夫」と言ってあげると立ち直れる。根底には今までやってきたことへの自信があると思いますし、そういう部分が見られたところもすごく良かったです。決勝戦でも、厳しい試合を乗り越えてきた自信も少なからずあったと思います。先制されて突き放されなかった部分も選手の力ですね。メンタルと技術、どちらも素晴らしかったです。
──今大会の初戦で敗れてから変えたことはありますか?
楽しむことに立ち返ったような気がします。「このまま沈んでやっても面白くない。せっかく全国大会に来て、みんなが見に来てくれている。自分たちも楽しくプレーしないと、見に来てくれている人たちもうれしくないよ」と伝えました。
自分たちはこれまで、ボールを長くもって主導権を握り、優位性をつくっていくことを続けてきました。そのためにディフェンスやオフェンスをどう組み立てるかを常に考えながらやってきて、それをこの大会で発揮しようと。勝つ、負けるというよりも、自分たちの力を出すことにフォーカスしました。
──この大会を通して、どんなところに選手の成長を感じましたか?
いろいろとあります。まずメンタル面では、目の前の試合に勝つこと。それもただ勝つのではなくて、自分たちがいいプレーをした先に勝利があることを理解していました。だから失点しても慌てなかったのだと思います。
また、技術的なところは、状況判断を含め、相手の守備を観察してどう自分たちが行動するか。相手の守備によって自分たちのプレーを変えていくことは僕らがずっとやってきたことですけど、練習試合ではない公式戦でやるのはすごく難しいものです。この大舞台で積み重ねていけたことは、技術的にも戦術的にも成長できたと思います。
そして、優勝したことで自信がついたと思います。ただし、自信をもつのはいいですが、僕自身も選手たちも、うぬぼれて勘違いしないようにとは思っています。
──今後、子どもたちにフットサルを続けてもらうために必要なことはありますか?
名古屋オーシャンズのように、Fリーグの全チームが競技に集中できる環境のなかで生活ができて、自分の競技レベルを上げられることが理想だと思います。ただ、それは少しずつの積み重ねです。
僕らのチームのように、フットサルで育ってきた選手がサッカーの舞台でも活躍するようになれば、サッカーかフットサルかを選べるようになると思います。
例えば、彼らが高校生くらいになった時に、これまで積み重ねてきたベースにフットサルがあれば、「自分はフットサルが向いているからフットサルに進む」「自分はサッカーに進む」と、選べると思います。
そういう選手が多くなれば、純粋に競技レベルも上がります。競技レベルが上がれば、世界で勝てるようになる。競技レベルを上げることは、フットサル界の環境を良くするにも必要だと思うので、彼らがフットサルを通して成長し、サッカーやフットサルで活躍していくサイクルを繰り返していくしかないのかなと。
そこで企業の方やスポンサーさんが興味をもち、価値を見出し、支援してくれるようになるかもしれない。環境改善にはお金が非常に重要ですから、そういう意味でも彼らが日本一になったことは大きいと思います。フットサルだけでなくこれからのサッカーの活動も大事になってきますね。
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