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作成日時:2024.10.15
更新日時:2024.10.15

【インタビュー】2年間、公式戦出場なし→地元に復帰。「宇部が人生のすべて」と語るキャプテンが次世代に託したい想い(阿部なるみ/ミネルバ宇部)

PHOTO BY伊藤千梅

ミネルバ宇部のキャプテン・阿部なるみは、女子Fリーグレギュラーシーズンの最終節後、記者会見で涙を見せた。

第1ピリオドはアニージャ湘南の攻撃を体を張った守備で無失点に抑えたが、第2ピリオドに2失点を許してタイムアップ。宇部は、勝ち星を挙げることなくレギュラーシーズンの戦いを終えた。

今シーズンから宇部のキャプテンを任されている阿部には、どうしても勝ちたい理由があった。

「最後は地元で活躍したい」

昨シーズンまでの2年間は、SWHレディース西宮で一度も公式戦に出場できなかった。苦しい時期を経て、彼女が下した決断は“復帰”だった。「地元の子たちに、外の世界での経験を伝えていくことが役割」だと、悟った。

阿部にとって、「宇部は人生のすべて」だと言う。自分をつくったもの、生きる希望となってきた居場所。自分がそうやって、このクラブに力をもらってきたからこそ、次の世代に託したい想いがある。

一生懸命に戦う姿。ただし、勝ち負けを度外視していいワケがない。絶対に勝ちたい。そんな想いを背負って戦い続けてきたからこそ、今シーズン、10試合を戦って引き分けの勝ち点1しか挙げられない悔しさばかりが募った。

「全員で勝ちたいと思います」

記者会見の最後に、そう強く、彼女は話した。宇部は、阿部は、ファイナルシーズンでどんな姿を見せるのか。

インタビュー・文=伊藤千梅



“フットサル”でつながる輪

──レギュラーシーズンを振り返っていかがですか?

シーズンが始まった頃は攻める時間をまったく作れずに防戦一方でしたが、試合を重ねるにつれて、自分たちがボールを保持して攻撃する時間も増えてきました。少しずつやりたいことや練習してきたことを出せるようになり、進歩している印象です。ただ最後の決定力がまだまだ足りないと思っているので、そこがレギュラーシーズンを通しての課題だったと感じています。

──今のチームの雰囲気はどうですか?

7月、8月にブラジル人の2人が入ってきてくれてから、チームの雰囲気が明るくなりました。練習はポジティブな雰囲気で取り組めていますし、試合も2人が引っ張ってくれています。逆に自分たちも2人が頑張ってくれている分、責任をもってやらないといけないという自覚にもなっていると思いますし、いい流れができているんじゃないかなと思います。

──ブラジル人の2人とは普段どんな会話をしますか?

2人は今は日本語がわからない状態なので、言葉以外の部分でお互いに感じ取りながらコミュニケーションをとっています。人と人のつながりはすごく感じていますし、言葉の壁があっても通じ合えるのは、“フットサル”という共通のものがあるからだと思います。国を超えて一緒にプレーができていることは、中学生や高校生といった若い年代の選手にとってもいい経験です。今こうして2人とプレーしている時間は、これからの人生に残る一瞬になるんじゃないかなと思っています。

苦しかった2年間を経て再びミネルバへ

──阿部選手はミネルバ宇部でフットサル始めたのですか?

そうですね。小学生の頃はスポーツ少年団でサッカーをしていましたが、当時は中学生の女子チームがなかったので、小学校を卒業してからどうしようかと悩んでいました。その時に、宮嶋(良丞)監督が「女の子が小学校を卒業してもボールを蹴れる場所を作りたい」と、卒業後の受け皿としてミネルバを作ってくれました。私は当時のミネルバの監督に声をかけてもらったことがきっかけで、中学1年生からこのクラブでプレーしています。拾われましたね。

──今の中学生とかも似たような環境なのですか?

今の子たちは少しずつ選択肢が増えてきています。そのため、進路の選び方も自分が小学生だった頃とは少し違っていて、ミネルバのスクールに来てくれていた子たちがトップチームに上がってくれることが多いです。小学校5年生や6年生で自分たちがプレーする姿を見て「Fリーグでプレーしたい」という思いで入ってきてくれています。

──阿部選手は2022年にSWHレディース西宮に移籍しました。

2シーズン、ミネルバでトップリーグを経験して、上には上がいることや自分たちには足りないものがたくさんあることを感じました。

自分もミネルバというチームに長い期間所属していて、多少の慣れはありましたし、外の世界を体験して新たな価値観を得たいという思いがありました。再びミネルバに戻るかどうかはその時はわかりませんでしたが、まずは自分が強くなりたいという思いで、一度西宮に移籍することを決めました。

──西宮での2年間はいかがでしたか?

ベンチにもなかなか入れず、2年間で一度も公式戦に出られなかったので、西宮では苦しい時間が多くありました。でも、そういう経験をしたからこそ見えた景色もあったと思います。

また今までやってきたことが、本当の意味で「こういうことやったんや」と再認識できることもありました。西宮の監督は言語化することがすごく上手な方なので、感覚的にしかわかっていなかったことが、言葉として明確になり腹落ちしたことがいくつもあります。そういった学びが多くあったことは良かったと思っています。

──今シーズンからミネルバに復帰しましたが、どんな思いで戻ってきましたか?

ミネルバのスクールで自分が教えていた子たちが、トップリーグで頑張っている姿を見て、地元の子たちに外の世界で経験したことを伝えていくことが、次の自分の役割だと感じました。そして自分自身も、最後は地元で活躍したいという思いで戻ってきました。

フットサルを通して生きる希望に

──阿部さんにとって、ミネルバ宇部はどんな存在ですか?

人生のすべてです。ミネルバでの経験がなかったら、今の自分はいません。自分を作ってくれた場所であり、自分の居場所でもあると思っています。次の世代にもこの場所で培った経験を伝えていきたいと思っています。

──ミネルバ宇部がフットサルを通じて伝えていきたいことを教えてください。

フットサルという競技を通じて、一生懸命取り組むことやなにかにチャレンジすること、勇気をもって行動することを、プレーで伝えていきたいです。

若い世代にも、ミネルバ宇部のフットサルをみて、生きる希望が自分の周りにあると感じてほしいです。人それぞれ感じ方は違うと思いますが、見ている人たちにとってミネルバが「次は自分も頑張ってみよう」や「今日はこれにチャレンジしてみよう」と思ってもらえるような存在になれたらと思っていますし、そこを目指していきたいです。



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