更新日時:2025.02.13
「日本フットサルは走り過ぎ」Fリーグで最も結果を出す男、38歳のヴィニシウスからの“金言”【コメント記事】
PHOTO BY伊藤千梅
2月11日、Fリーグの“レジェンド”がまた一つ年齢を重ねた。クレパウジ・ヴィニシウス、通称バナナ。2011年にシュライカー大阪でデビュー以来、数々の記録を打ち立ててきた。
14シーズンで積み上げたゴール数は歴代最多の「339」。2015-16シーズンにマークした「48」ゴールは、1シーズンの最多ゴール記録として今もなお破られていない。
30代後半になってからはフィクソとしてもプレーするようになった。自分より一回り以上も年下の若手たちを支えつつ、2024-2025シーズンは3シーズンぶりに得点数を2桁に乗せた。
「なんでバナナさんは、ずっと結果を残し続けられるんですか?」
流暢な日本語で返ってきたのは、トップ選手だけではなく、すべてのフットボーラーにとって金言となるメッセージだった。
走る時はしっかり走らないといけない
2025年2月11日、ペスカドーラ町田のクレパウジ・ヴィニシウスは38歳になった。44歳の森岡薫が同じチームにいるから「若い」と錯覚しそうになるが、スポーツの世界では大ベテランの域に入っていると言っていい。
町田はルイス・ベルナット監督が就任した2019-20シーズンから若手を中心としたチームに生まれ変わった。2022-23シーズンより引き継いだ甲斐修侍監督もまた、育成組織のアスピランチから積極的に選手を引き上げている。
同年代の選手たちのプレータイムが徐々に短くなり、次々にユニフォームを脱いでいくなか、ヴィニシウスは結果を残し続け、ポジションを勝ち取ってきた。20代の若手+ヴィニシウスというセットで出ることもよくある。
「最近のフットサルは、カウンターで上がって、また戻ってと、往復が激しくなっているので大変です。もちろん経験もあるし、頭を使ってプレーしないといけないと思うけど、走る時はしっかり走らないといけない」
甲斐監督がチームに求めるのが「強度」だ。練習中からバチバチとやり合い、選手同士が喧嘩寸前になることも珍しくない。そんな日常が、試合での球際の激しさ、素早い切り替えにつながっている。
強度の高いプレースタイルにベテランがついていくのは簡単ではないだろう。それでも、ヴィニシウスは年齢を言い訳にせず、自分に矢印を向けて、チームが求めるものに適応してきた。
「このチームには僕がいるし、(森岡)薫さんもいます。その経験はチームに必要だと思いますが、最低限のフィジカルの部分は、みんながもってないといけない。若手だけが高い強度でやって、僕ができていなかったら良くないですし、しっかり走らないといけないと思います」
2024年11月4日に行われたバルドラール浦安との第13節で象徴的な場面があった。左サイドから毛利元亮と雲切啓太がカウンター攻撃を仕掛けた時、ヴィニシウスは逆サイドを猛然と駆け上がって、左足でゴールネットを揺らした。
「うちのチームは攻守の切り替えが早いです。あのゴールもカウンターからで、雲切(啓太)選手と(毛利)元亮選手が2人とも左サイドを上がっていたので、絶対にボールが来ると思って猛ダッシュしました。味方の走るモチベーションを保つためにも、あのような場面でもっとゴールを決めたいし、もっとゴール前でプレーしたい」
どのチームも走れるようになっているけど……
アスリートは年齢との戦いを強いられる。同じ量をこなしても、同じ効果が得られるとは限らない。フィジカルコンディションを保つために、常に仮説と検証を繰り返しているという。
「たとえば、昨シーズンと大きく変えたのは筋トレです。100kgや120kgの重りをたくさん上げることをしていましたが、いまは重さより、回数と動き方にこだわっています。あとは、ジャンプ系のメニューもたくさんやっています」
どうすれば、もっと良くなるのか──。そんなヴィニシウスの向上心は、個人だけでなく、チーム、そして日本フットサル全体にも向けられている。
「僕は、どちらかというと頭を使ってプレーするほうが大事だと思います。僕らだけでなく、日本のフットサル全体が走り過ぎです。いまのフィジカルをキープしたまま、よりフットサルを理解したら、日本のフットサルのレベルはもっと上がると思います」
今のフットサルにおいて「走る」ことがベースにあるのは間違いない。ただ、たくさん走ったほうが良いと、量で質をごまかすような状況になっていないか。ヴィニシウスは警鐘を慣らす。
「各チームは自分たちの特徴をもっと理解しないといけない。どのチームも走れるようになっていると思うので、そのなかでちゃんと自分のチームがやりたいことを理解していることや、状況判断などが大事になってくる」
いつ走るか、どこに走るか、なぜ走るか。ヴィニシウスが38歳になった今もゴールを決め続けられるのは左足の精度が高いからだけではない。「走る」ことの本質的な目的を理解しているからだろう。
「あと何年やれるかわからないので、心残りのないようにやって、結果を残したい」
誰よりもたくさんのゴールを決めてきたレフティは、これからも自らの記録に挑み続けていく
文=北健一郎
1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経て、フリーライターとしての活動を始める。2004年、学生時代に日本人初のセリエAプレーヤー、相根澄さんのインタビューに同行したことでフットサルの世界に興味をもつ。これまでに手がけたフットサル関連書籍は10冊以上。04年、08年、12年とフットサルW杯を現地取材。唯一のフットサル専門誌だったフットサルナビの休刊を受けて、見る人・蹴る人・着る人をつなぐ新たなフットサルメディア「SAL」を立ち上げる。
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